魔法学校編

第41話魔法学校

 五年の歳月が経った。

 原作の時系列に近づいている。


 俺の下に魔法学校の入学試験の案内が来ていた。

 もちろん受けなければならない。

 魔法学校が、原作である大罪英雄と運命の勇者の舞台だからだ。


 貴族は通常魔法学校に入学する。

 リア姉様が魔法学校に入学する前の時の話。

 気になることを父上に聞いていた。


『父上、私は魔法学校に入学します。後々レアとエリアスも入学するでしょう。そうすると、子供たち皆が家からいなくなります。それに世継ぎの問題も……』


 それは俺も気になっていた。

 通常貴族は長兄が継ぐが、俺は正妻の子でないから無理だろう。


 ディートリヒ家という王国一の公爵家の世継ぎ問題を長女として気になっていたのだろう。


『魔法学校は優秀な人間を育てる場所だろう。優秀な人間が育ってくれるのなら私にとってもディートリヒ家にとっても望むところだ。ディートリヒ家は優秀な人間に継いでもらおうと思っている。優秀ならリアでもレアでもエリアスでもいいと思っている』


『でも私は女ですし……』


『貴族家は男しか継げんか……下らんな。本当に下らん。体裁とか男尊女卑的考えなどクソくらえだ! 優秀な人間なら活躍できる社会でないと健全でないだろう』


 父上の考え方は貴族というよりも、俺が転生する前の現代人みたいな考え方だった。

 実力主義。


 厳しい様にも聞こえるが、生まれによる貧富とか性別関係なしに結果さえ出せば、認めるという考え方だった。


 俺も安心して入学出来そうだ。

 リア姉様、レア姉様、ルイーサ様、ルイス様、ヴィルヘルムは既に入学している。


 ヴィルヘルムは高等部三年、リア姉様とルイーサ様は高等部二年、ルイス様は高等部一年、レア姉様は中等部三年になっていた。


 ヴィルヘルムみたいな脳筋タイプには魔法が使えないかと思っていたが、意外にも土属性魔法の才能があり、己の体に岩を纏ったり、拳に岩を纏い戦うというスタイルを取っていた。





 入試は実技と筆記だ。

 実技は志願者同士が戦い、試験官が判断する。


 勝敗だけでなく魔法の才能を見るための試験なので、敗者も合格することがあるようだ。

 筆記は魔法だけでなく、魔道具学、魔法薬学、歴史学、地理学、戦術学、宗教学がある。

 歴史はこの国だけでなく、他国や魔法の歴史について出題される。


 魔法学の配点は半分あることから、この学校では魔法が感覚で使えるだけでなく、理屈を理解している者を求めていることが分かる。


 実技と筆記の成績で合否と入学時の序列が決まるようだ。

 試験はミラ様と一緒に受けた。


 実力主義の学校であり、入試の成績で序列が決まるので王族と言えど試験の免除はなかった。


 俺の実技の相手は貴族の女性だったが、終始圧倒していたので問題ないだろう。

 筆記も俺は本を読むのが好きだったので、こちらも問題ないだろう。


 合格通知は通常二、三ヵ月程度で届くと聞かされていたが、俺の場合翌日に届いた。

 落ちていなくて良かった。


 ミラ様も問題なく合格し、一緒に入学式に出席することになった。

 俺は別々の馬車で行こうと言ったのだが、ミラ様がどうしても一緒に行くと仰り、断れなかった。






 本邸で父上に出発の挨拶をする。


「父上、行って参ります」


「ああ、もう分かっていると思うがディートリヒ家の人間に負けは許されんぞ。ふん、お前には言う必要のない事だったかな」


「いえ、肝に銘じます」


 父上が前より認めてくれている気がする。

 その期待に応えたい。





 本邸を出るとソフィアが付いてきた。


「さあ、参りましょうかエリアス様」


「ああ、ソフィ」


 ソフィアは魔法学校には入学しない。


 俺とは年齢が違うし、根本的な話をすると魔法が得意でない。

 悔しかっただろう。


 この国では魔法を使える者が偉いという考え方が根付いている。

 ソフィアの分まで頑張りたいという気持ちがある。






 ディートリヒ領の入口まで来るとクリストフが出迎えに来ていた。


「エリアス様、とうとう入学の日ですね。おめでとうございます。エリアス様と同年代でエリアス様に敵う者などおりませんでしょうね」


「クリストフ、ありがとう。俺の魔法が上達したのはクリストフのおかげだ。油断せずに頑張ってくるよ」


「エリアス様……私になど勿体ない言葉です……」


 クリストフは目頭を押さえていた。

 この五年クリストフが魔法の訓練に付き合ってくれたから、俺の魔法が上達したというのは紛れもない事実だ。


「エリアス、久しぶりね、うふふ」


 ミラ様が迎えに来て下さった。

 入学試験ぶりだからそこまで久しぶりという感じもしないけど。


 元々美しかったが、五年経ち大人になられ、さらに美しさに磨きがかかっていた。


「お久しぶりでございます、ミラ様。お元気でしたか?」


「ええ、エリアスも相変わらずね。この日を迎えられて嬉しいわ」


「ミラ様」


「何? ソフィア?」


「私も学校の正門まで一緒に同行させていただいてもよろしいでしょうか? メイドの仕事の他にエリアス様の護衛も兼務しておりますので」


「ええ、もちろんよ」


 俺たちは一緒の馬車で魔法学校に向かうことになった。



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