第38話廃ゲーマー

 俺たちが王都を出発してディートリヒ家に帰る日になった。

 ミラ様、ルイーサ様、ナディア様が見送りに来てくれた。

 王女三人が揃って王都の入口まで来るなんて、衛兵たちは冷や冷やものだろう。


「エリアス、必ず遊びに行くからね」


「エリアス、ありがとう」


「エリアス、またね。今度はもっとお話ししましょうね」


「ありがとうございました。では、失礼します。またお会いしましょう」


 色々あったが楽しくもあり、成長を実感できた日々を過ごした。

 俺は三人に手を振り別れを告げた。





 王都の外に出て馬車に乗り込もうとしていると、ヴィルヘルムが魔狼に食べ物をあげていた。


「どうだ、ウル? 美味いだろ? 優勝はできなかったが、これだけあれば暫くは食うに困らねえ」


「ああ、もぐもぐ」


「ヴィルヘルム。俺たちは今からディートリヒ家に帰るところなんだ」


「ああ、エリアス。色々世話になったな。俺も若かった。迷惑かけたな」


「いいんだ。それよりこれからこれからどうする? ウルだったか? そんなに大きい魔狼を連れていると入れる場所が限られるだろう。ウルが安心して暮らせる場所を知っているが? それにヴィルヘルム、お前も強い人間と戦いたいだろう? ディートリヒ家騎士団に入らないか? 父上には俺から話を通すが?」


「本当かよ? 何から何まで悪いな。確かに今回の大会で俺は実力不足を実感したしな。強い奴がいる環境で自分を鍛えなおしてえ」


「分かった。馬車に乗って」


 ウルは馬車に乗れないので、並走してくることになった。

 遅れることなく付いてきたので、凄いスピードとスタミナの持ち主なのだろう。





 ディートリヒ家に到着した。

 家族以外は本邸に入れないので、ヴィルヘルムを別邸で待たせた。

 俺は父上の言葉を思い出していた。


 ディートリヒ家の人間は敗北は許されない。

 離縁も覚悟している。

 だが、最後にヴィルヘルムを騎士団に入れてもらわねばならない。





 本邸に到着した。


「お父様。ただいま帰りました」


「リア、レア、それにエリアス。帰ったか」


「父上、申し訳ございません」


「何を謝っている、エリアス?」


「父上との約束を守れませんでした。ディートリヒ家の人間に敗北は許されないと。離縁も致し方ありません」


「何を言っている。ディートリヒ家でも武闘祭の話で持ち切りだ。真の勝者はルイーサ様でなく、エリアス、お前だとな。離縁などとふざけたことは二度と申すな」


「そうよ、お父様の言う通りよ。エリアス、あんたが真の勝者よ。あたしはあんた以外が勝者なんて認めないんだからね!」


「エリアスが真の勝者。間違いない」


「父上、リア姉様、レア姉様……」


 俺は涙を堪えた。


「父上、それとお願いがあるのですが」


「何だ?」


 俺は父上にヴィルヘルムのことを話した。

 父上的には問題ないようだが、バルナバスたちが認めれば良いという返事だった。





 俺はヴィルヘルムを連れて騎士団に来ていた。


「ほっほっほ、エリアス様。武闘祭の噂は聞いておりますぞ。爺は誇らしいですぞ」


「坊ちゃん、やるじゃねえか。がっはっは!」


「私はエリアス様ならやってくれると思っていました。当然ですね」


 皆何で俺が泣きそうになること言うんだよ……。


「ああ、皆ありがとう。それとこいつはヴィルヘルム。騎士団に入れてやってほしい。父上の許可は取ってきている。バルナバスたちがいいなら入れて構わないと」


「うっす。ヴィルヘルムです。よろしくお願いします」


「ほっほっほ、元気な若者じゃの」


「俺は歓迎だぜ。お前みたいな根性がありそうな奴は。がっはっは!」


「歓迎するぞ。ヴィルヘルム」


 良かった。

 騎士団の皆に受け入れてもらえて。

 特にヴォルフはヴィルヘルムのことを気に入ったみたいだ。





 ヴィルヘルムには別邸で一緒に暮らしてもらおうと思っている。

 一緒に別邸に向かうため騎士団を出ると、クリストフがいた。


「おお、エリアス様、お帰りなさい。お待ちしていました。ご活躍は聞いています」


「何だ~、この優男は? 細い体して飯食ってんのか?」


「貴様こそ何だ? 暑苦しいな。燃やしてやろうか」


 クリストフはヴィルヘルムに火炎魔法を放った。


「あ、あちいぃぃぃぃ!!!!! 何しやがる!」


「暑苦しいので、火炎魔法で燃え上がるのかと思ってな。ふふ」


「ヴィルヘルム」


「ん? 何だエリアス?」


 俺はヴィルヘルムに氷魔法と雷魔法を放った。


「冷てぇぇぇぇぇ!!!!! 痺れるぅぅぅぅぅ!!!!! エリアス、てめえも何してやがる……ってそうか、お前には剣だけじゃなくて魔法もあるのか。俺に実力不足を気付かせるために……」


「いや、面白そうだったから」


「面白そうだからかい!」


「ははははは!」





 ウルは半魔の庭で過ごすことになった。

 俺たちは厳しくも楽しい日々を送った。


 五年の月日が流れた。

 武闘祭は三連覇したので、俺はもう出場できなくなった。


 これが今の俺のステータスだ。


 名前:エリアス・フォン・ディートリヒ

 種族:半魔(人間とサキュバスのハーフ)

 年齢:12歳

 HP:9999/9999

 攻撃力:9999(+999)

 防御力:9999(+999)

 敏捷性:9999

 器用さ:9999

 魔力:9999(+999)

 魔法防御:9999(999)

 スキル:シングルスラッシュLV999、サイドアヴォイダンスLV999、バックアヴォイダンスLV999、ガードLV999、パリィLV999、カウンターLV999、キックLV999、パワースラッシュLV999、パンチLV999、スラストLV999、スピードスラストLV999、スピードスラッシュ999、クロススラッシュLV999

 魔法:ブリザードLV999(9999/9999)、サンダーLV999(9999/9999)、ヒールLV999(9999/9999)

 装備:アルティメットソード、アルティメットスーツ、真フェニックスリング、真サキュバスリング

()内は装備補正値、フェニックスリングの効果でHPが0の状態になっても3度だけ自動復活できる。

 魔法の()内は現在使用可能回数/最大使用可能回数

 剣熟練度:999

 体術熟練度:999

 斧熟練度:999

 槍熟練度:999

 弓熟練度:999


 人間度50:魔族度50





 かなり強くなったと思う。

 破滅の運命も逃れようとしている。


 ここまで努力してきて良かった。

 でも、もっと強くなりたい。


 何故かって?

 俺は廃ゲーマーだから。






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