第35話シナリオブレイク(傲慢)
俺はミラ様の医務室に来ていた。
ミラ様とルイーサ様は別の医務室に運ばれていた。
ソフィアと姉様たちがついてくれていたが、俺が来たタイミングでソフィアたちは廊下に出ていった。
「ミラ様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。それよりルイーサ様お姉様は?」
「意識を取り戻されています」
俺はミラ様の医務室に来る前に、ルイーサ様の医務室の前の衛兵にルイーサ様の容態を聞いた。
直ぐに意識を取り戻されたようだ。
俺は安心してミラ様の医務室に来た。
「そう。良かった。エリアス、ルイーサ姉様の下に行ってあげて」
ミラ様、自分のことより他人の心配が先なんだな。
そこが良いところだけど。
「良いのですか?」
「ええ、私にはメイドがついてくれている。ソフィアやリアさん達もいるから。それにお姉様が心配なの」
俺はソフィアと姉様たちにミラ様を任せ、ルイーサ様の医務室に向かった。
衛兵に事情を説明し、入室許可をもらった。
ノックしたら返事が返ってきた。
「どうぞ」
「ルイーサ様、大丈夫ですか? 申し訳ありません」
「この通りピンピンしている。何を謝っている、エリアス。正々堂々と勝負した結果がこれだ。何の遺恨もない。ははは」
ルイーサ様の表情は晴れ晴れとしていた。
試合中の表情とは正反対だった。
「良かったです」
「ミラはどうだ? 少しやりすぎだったと反省している。ミラに強くなってほしいと思うばかりに行き過ぎてしまう。私の悪い癖だ……」
「そうだったのですね。ルイーサ様はミラ様を憎んでいるわけではないことは分かっていましたが、愛情の裏返しだったのですね……」
「お前は相変わらず恥ずかしいことを言うのだな。はっはっは。でもお前のそういう性格嫌いじゃないぞ」
これで無事全てが解決したようだ。
でも、俺はどうしてもルイーサ様に言いたいことがあった。
「ルイーサ様」
「何だ、エリアス?」
「私の願いを一つ聞いてくれませんか?」
「何だろう? 難しい事でないと良いのだが。試合に負けたのだ。一つだけなら聞いてやろう。はっはっは」
「ミラ様と末永く仲睦まじくいて下さい。私の願いはそれだけです」
「エリアス、私にとっては難しい願いだ……でも、その願い叶えよう。必ず」
「差し出がましいことを言って申し訳ありませんでした。では、失礼します」
俺が医務室の扉のところで振り返ると、ルイーサ様は俯き、肩が震えていた。
「うっ……うっ……うっ、エリアス、ありがとう、ありがとう」
俺はミラ様がいる医務室に戻った。
そこにはミラ様を心配する人物がいた。
「ミラ、大丈夫?」
「ええ、ナディアお姉様」
そこにいたのは原作ヒロインの第一王女、ナディア・フォン・アスルーン様だった。
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