第33話準決勝

 準決勝が始まる。


「エリアス様、あの無礼な筋肉男を消してください」


「エリアス様、気を付けてね」


「あんたに勝ってほしいんじゃないからね。筋肉男をぶっ飛ばしてほしいんじゃないからね」


「王家を侮辱するあの男を倒してくれ、エリアス」


 皆から激励のメッセージをもらった。

 想像してない人物からも。


「エリアス……頑張って……」


 レア姉様が喋った―――。


「エリアス……集中して……」


 確かに。

 集中を切らして負けるわけにはいかない。





 俺が会場入りするとヴィルヘルムも反対側から入場してきた。


「逃げずに来たか。俺に恐れをなして逃げたかと思ったぜ」


「まさか。それはこっちのセリフだけど」


「てめえ! まあいい。てめえはぶっ飛ばす。舐めた貴族の坊ちゃんはぶっ飛ばすって決めてるんだ。あの王子様をぶっ飛ばしたのは気持ちよかったぜ。あんな快感がもう一度味わえるなんて最高だぜ!」


「君、口を慎みたまえ! 失格にするよ」


「ちっ……」


「ルールの説明だ。アイテムと魔法の使用は禁止。ギブアップと私が戦闘不能と判断したら試合終了。双方よろしいか?」


「分かりました」


「ああ」


「始め!」


 試合が始まった。

 さてどう攻めてくるのか。


「先手必勝ー--!!!」


 ヴィルヘルムは開始早々俺に殴りかかってきた。


『システムメッセージ:ヴィルヘルムに3000のダメージを与えました。攻撃力が2000上がりました。器用さが200上がりました。パワースラッシュのレベルが20上がりました。カウンターのレベルが20上がりました』


 俺は一回戦の試合を見ていたので、ヴィルヘルムが開始早々殴りかかってくるのを予測していた。

 これが奴の戦闘スタイルなのだろう。


 俺は奴の攻撃に合せて全力の攻撃をカウンターで叩き込んだ。

 原作でヴィルヘルムはタフさで有名なキャラだからだ。


「いてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!! くっ……俺の動きを読んでやがったのか……小僧……それにしてもどういうことだ……? 俺はモンスターの攻撃や、町の喧嘩自慢の攻撃を食らっても痛いとは感じたことはねえ。何が起こってやがる……」


「答えはシンプルだ。俺の攻撃がそいつらより遥かに強いだけだ。見た目で判断していると痛い目に遭うぞ」


「ふざけんな! 何かの間違いだ。来い。今度は効かねえ!」


「じゃあ、遠慮なく」


 罠の可能性は……なさそうだな。

 俺は全力の攻撃を叩き込む。


『システムメッセージ:ヴィルヘルムに3000のダメージを与えました。攻撃力が1500上がりました。パワースラッシュのレベルが15上がりました』


「いてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!! クソ!!! どうなってやがる……? 本当に小僧の攻撃が強いって言うのか……?」


「さっきからそう言っている。それより大丈夫か? 膝が笑っているが」


「くっ―――舐めんじゃねえ! まだやれる……クソ! 何で足が動かねえ……」


 俺は決着をつけるために全力の攻撃を叩き込む。


『システムメッセージ:ヴィルヘルムに3000のダメージを与えました。攻撃力が1000上がりました。パワースラッシュのレベルが10上がりました』


「ぐはっ!」


「勝負あり!」





 ヴィルヘルムは意識を失い医務室に運ばれた。


「くっ……てぇな……俺は……負けたのか?」


「ああ。俺が勝ったよ」


「そうか。小僧、強いんだな」


「エリアスだよ」


「エリアス……様。世の中にはまだまだ強い方がいるんですね。完敗です」


「エリアスでいいって。それに今まで通り敬語じゃなくていい」


「ああ。俺もヴィルヘルムでいい」


「ヴィルヘルム、またやろう」


「ああ、今度は負けないぜ」


「俺も負けない。それじゃあ行くよ」





 嫌な予感がする。

 早く会場に戻らないといけない。


 早く戻らないと取り返しのつかない事態になる。

 俺は悲劇を避けるために会場に走った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る