第26話嫉妬英雄ミラ

「ミラ様!」


 バルナバスは対戦場から出て、ミラ様の下に行ってしまった。


「おい、何してんだ爺さん! 場外で失格にするぞ」


 ヴォルフはバルナバスに注意した。

 俺も第三王女が来ているのに失礼かと思い、対戦場から出ることにした。


「ったく、二人とも何してんだよ……」


「悪い、ヴォルフ。引き分けでいい」


 あのまま試合を続けてもどう決着をつけていいか分からなかったので、ミラ様の登場は都合が良かったのかもしれない。


「あら、邪魔しちゃったかしら。試合を止めなくても良かったのに」


「いえ、ミラ様がいらっしゃっているのにご挨拶しないわけにはまいりませぬ」


「バルナバスの言う通りです。王女様がいらっしゃっているのに無視するわけにはいきません」


「ふ~ん、なるほどね~」


 ミラ様は俺の周りをぐるぐると回りながら、品定めするように俺を観察している。


「な、何でしょうか?」


「何でもない」


「は、はぁ。ところで本日はどのような用向きで?」


「最近、バルナバスに剣を教えてもらっているの。それで今日も、ね」


「左様でございます。王宮騎士団には猛者たちがおりますので、その者たちから教示を仰いでいただければと常日頃申し上げておりますが……王女様が王都を離れるのはあまり望ましいことではございませんので」


「堅苦しいことを言うのね、バルナバス。それに王国一と呼び声高いバルナバスから教えてもらいたいのよ。王宮騎士団の間でもバルナバスが王国一の騎士と噂よ。堅苦しいお城から出たいっていうのもあるしね」


 ミラ様には厳重な警護がついている。

 それでも王様やバルナバスは心配だろう。


「今日は試合後だから稽古をつけてもらうのは無理そうね。それと、エリアス様、貴方にも用事があったのよ」


「私にですか?」


「そうよ。武闘祭よ。王国中から猛者が集まるわ。魔族に対抗できる戦士を見つけるために毎年開かれてるわ。優勝者には金貨1000枚と騎士団に入る権利が与えられるわ。どうかしら?」


「恐れながら私は騎士団に入れる立場にありません。お金にも困っておりません」


「まあ、貪欲さが足りないのね。平民たちはこの機会に待ってましたと言わんばかりに参加してくるのに。これだから貴族のお坊ちゃんは……自分の実力を試したいという気持ちはないの?」


「それは……確かにないとは言えません。私の一存では決められませんので、父上に相談してもよろしいですか?」


「分かったわ。良い返事を期待してるわ」






 俺は夕食の時間に父上に武闘祭参加の話をすることにした。

 その前にステータスの確認をする。


 名前:エリアス・フォン・ディートリヒ

 種族:半魔(人間とサキュバスのハーフ)

 年齢:7歳

 HP:2500/2500

 攻撃力:2500(+10)

 防御力:1500(+10)

 敏捷性:1000

 器用さ:400

 魔力:900(+30)

 魔法防御:800

 スキル:シングルスラッシュLV90、サイドアヴォイダンスLV100、バックアヴォイダンスLV70、ガードLV60、パリィLV70、カウンターLV50、キック、パワースラッシュLV70、パンチ、スラスト60、スピードスラストLV100、スピードスラッシュ60、クロススラッシュLV50

 魔法:ブリザードLV80(930/930)、サンダーLV80(930/930)、ヒールLV30(930/930)

 装備:アイアンソード、貴族の服、フェニックスリング、サキュバスリング

()内は装備補正値、フェニックスリングの効果でHPが0の状態になっても1度だけ自動復活できる。

 魔法の()内は現在使用可能回数/最大使用可能回数

 剣熟練度:95

 体術熟練度:4

 斧熟練度:50

 槍熟練度:50

 弓熟練度:1


 人間度50:魔族度50





「父上、ご相談があるのですが?」


「何だ?」


「ミラ様から武闘祭の招待を受けました。参加してもよろしいでしょうか?」


「ほう、今年もそんな時期か。エリアス、何度も言っているから分かっていると思うが、ディートリヒ家の人間は敗北は許されぬぞ。只の優勝でなく圧倒的な力を見せつけての優勝を勝ち取れるのなら許可しよう」


「必ずや」


 ここで父上と約束したからには負けは許されない。

 ここで俺以外の人物から父上に声が掛けられた。


「父上、私も王都に行きたいです」


 リア姉さまだ。


「リア、どういう風の吹き回しだ? お前が王都に行きたいなど」


「久しぶりに王都の空気を吸いに行きたいのです。勘違いしないでよね、エリアス! あんたのために行くって言ってるわけじゃないんだからね! レアも行きたいでしょ?」


 レア姉様は黙って頷いた。


「リアもレアもしょうがないな。まさかお前たちも参加するとは言わんよな?」


「まさか。私はエリアスに付いていくだけ……って、ふざけないでよね! 誰があんたと一緒にいたいから付いて行くって言ったのよ!」


 俺は何も言ってないが……。


「良くわからんが、試合に出る気はなさそうだな。レアも試合には出ないのだな?」


 レア姉様は頷く。


「ならば良いだろう。武闘祭が終わったら早く帰ってくるのだぞ」


「レア、あんた何でエリアスがいる時だけ静かになるのよ? いつもはお喋りなのに」


「確かにそうだな。家族でお前が一番お喋りなのに」


 そうだったのか。

 俺、嫌われてる……。


 レア姉様は父上とリア姉様に抗議の目線を送っている。

 こうして俺は王都での武闘祭に参加することになった。





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