第25話技のバルナバス

 バルナバス・クルーク

 ディートリヒ家騎士団長。

 王国最強と呼び声が高い。


 技のバルナバスと称されている。

 好戦的な性格でなく、俺には敬意を払って接してくれるが、どういうことなのだろう?


「バルナバスが俺と戦いたいなんてな。まさかお前も騎士団の威信とか言う気か?」


「ほっほっほ、いまさらそんなこと言ってもしょうがないでしょう。エリアス様、貴方はお強い。ですが、一度負けを知ってほしいのです。このまま勝ち続けると危うい気がしましてな。年長者の戯言に付き合ってはいただけないでしょうか?」


「ふざけるな、バルナバス! エリアス様は疲れてるのよ! 帰らせてあげてよ!」


 確かにヴォルフ、カールと二戦した。

 だが、ダメージをは食らってないし、疲労感はあるが戦えないことはない。


「小娘、いつからそんな口を聞いていいと言った? エリアス様は構わぬが、貴様にそんな口を聞かれる覚えはないぞ」


「バ~カ! 凄んだって怖くないんだからね……」


 ソフィアは震えている。


「バルナバス、俺からも言わせてもらうが」


「何でしょう?」


「ソフィアは俺直属のメイドだ。非礼はあったとは言え、畏怖させることは許さんぞ」


「なるほど……流石はレオン様のご子息、この威圧感……いえ、これでは戦う前から負けを認めているようなもの」


「いいだろう、バルナバス。どちらが強いか白黒つけよう」


「エリアス様!」


「大丈夫だ、ソフィ。心配してくれてありがとう」


 今までの相手と明らかに違う。

 勝てるか分からない。

 それでも俺は退くわけにはいかない。





 対戦場。

 お互い武器は決まっている。


「バルナバス、武器はどうする?」


「もちろん、剣です」


「俺もだ」


 ヴォルフが復帰したので、審判を務めてもらうことになった。


「まさか、爺さんが坊ちゃんと戦うとはねえ。まあいい。始めるぞ。魔法とアイテムの使用は禁止。双方いいか?」


「分かった」


「では、始め!」


 圧倒的な強者の空気だ。

 ダンジョンを思い出す。

 骸骨のおじさんだ。


 あの時も実力差が凄かった。

 死ななかったのが不思議なほどの実力差だった。


 あの時はポーションが使えたのでなんとかなった。

 今回は魔法も使えない。


 お互いに動かない。

 どう攻めたらいいか分からない。


「ふふ、来ないのですか?」


「実力差は分かっている。正直怖い。でも、このまま待ってるだけじゃ終わらない!」


 俺は突きからの横薙ぎの一撃を放った。

 だが、その攻撃は……


「ほっほっほ、若いですな」


 突きは躱され、横薙ぎの攻撃は受け流された。

 パリィだ。

 俺の覚えたてのパリィとは全く違う。


 熟練の技だ。

 俺は色んなコンボを試してみるが、当たる気配がない。


「ほっほっほ、中々の腕前ですな」


「どこがだ。全部余裕で捌いてるじゃないか」


「これでも必死なのですよ」


 バルナバスの表情には焦りは全くない。

 まずい。思っていたよりも実力差の開きが凄い。

 バルナバスの攻撃が来たら終わる。


 攻め続けなくては。

 俺は色んな攻撃のパターンを試してみるが、全て避けられるか受け流されている。


「はぁはぁ……当たらない」


 俺が疲労で集中力が欠けているところに攻撃が来た。


「危ない!」


『システムメッセージ:敏捷性が200上がりました。サイドアヴォイダンスのレベルが20上がりました』


「ほう、今のを避けますか」


 奇跡的に躱せた。

 それにしてもなにが技のバルナバスだ。

 カールより遥かに早い。


 恐らく力もヴォルフより上だ。


 俺はバルナバスの太刀を受け流そうとしたが無理だった。

 技量が足りていない。


『システムメッセージ:HPが200減りました。最大HPが100上がりました。防御力が50上がりました』


 さらにガードも貫通される


『システムメッセージ:HPが100減りました。最大が80上がりました。防御力が50上がりました』


 致命的なダメージではないが、これが続くと俺は負ける。


「ほっほっほ、ここまで持つとは素晴らしい」


「お世辞はいいって」


「お世辞ではございません」


 確かに良く観察してみるとバルナバスは試合開始時より余裕がないように見える。

 ここで大きい一撃を狙うより、素早い攻撃に切り替える。


『システムメッセージ:バルナバスに300のダメージを与えました。攻撃力が200上がりました。スピードスラストのレベルが10上がりました。スピードスラッシュのレベルが10上がりました。剣熟練度が10上がりました』


 何とか当てられた。

 試合を決定づけるダメージではないけれど。


「まさかこれほどとは……ヴォルフとカールが敗れたのも納得です」


 それから俺は己の力を全て出し切り攻撃した。

 当たることもあれば躱されたり受け流されたりしている。


 同じ様に俺はバルナバスの攻撃を食らったり避けたりしている。

 受け流せてはいないが。


 それから一進一退の攻防が続いた。

 攻撃力が2500まで上がり、敏捷性が1000まで上がった。

 最大HPが2500まで上がり、防御力が1500まで上がった。


「はぁはぁ、強いな、バルナバス」


「エリアス様こそ、これほどの強さとは……さらに戦闘の中で急激に強くなられておられる。こんなお方は初めてです」


 お互い疲労感や痛みで動きが鈍い。

 力が拮抗していて決着がつく様子がない。


 どうすべきだ? 試合を決定づける手がない。

 俺がそんなことを考えていると、気の抜けた声が対戦場の外からかけられた。


「ふ~ん、エリアスやるじゃない。バルナバスが手加減しているとはいえ」


 その声の主は第三王女、原作で嫉妬英雄のミラ・アスルーン様だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る