第17話フィオナside
フィオナside
私はフィオナ。
人間とエルフのハーフ、ハーフエルフよ。
ハーフエルフによくある境遇として、定住しにくいということがあるけど、私もその例に漏れずそうだった。
父は人間世界に戻り、母は私を連れ元いたエルフの集落に戻った。
私から漂う人間の空気感から、直ぐに私がハーフエルフだとばれてしまった。
ハーフエルフは人間だけでなく、エルフからも嫌われているために私たちは集落での居場所をなくした。
そして、母は私を守るために人里離れた場所で私を育てた。
貧しい生活だったけど、親子二人の生活は幸せだった。
そんな幸せも長く続かなかった。
母が病気で亡くなってしまった。
私はなんとか生きていくために各地を転々とした。
ハーフエルフへの風当たりはきついけど、力強く生きていこうと思っていた。
だけど、そんな過酷な日々を送っていると私の中に嫌な感情が湧いてきた。
私や母を迫害した人間を滅ぼしたい。
魔族が人間に危害を加えるために、何もしていないハーフエルフの印象が悪くなり迫害の対象になってしまう。
そんな魔族も滅ぼしたい。
私の中にそんな感情が生まれるなんて信じたくなかった。
母の教えである『人と魔族は手を取り合える』って、呟きながら嫌な感情を精一杯振り払っていた。
ある時、半魔の庭の噂を聞いた。
半魔や穏やかな魔族が暮らす場所があると。
私は一縷の望みを信じ、半魔の庭に向かった。
半魔の庭に行くには、立ち入り禁止の迷いの森を抜けなければならない。
立ち入り禁止なんて気にしている場合じゃない、先に進まなくては。
もう何日も食べていない。
疲労感と空腹感で倒れそうだった。
迷いの森は迷路の様に道が複雑になっていて、どうすれば先に進めるか分からなかった。
もう終わりなの? 力が入らない。 私は草むらに倒れこんだ。
人の気配がする。
気を失っている場合ではない。
「誰だ!」
声の主は可愛い少年だった。
何故少年が迷いの森に? でも、今はそんなこと気にしている場合じゃない。
少年は可愛らしい見た目と裏腹に大人びた雰囲気をしていた。
そして隠しきれない優しそうな雰囲気を醸し出していた。
私は彼の前に姿を現し、半魔の庭に向かっていること、そこで保護してもらいたいことを正直に話した。
驚いたことに少年は半魔の庭の主の息子とのことだった。
名前はエリアス君。
完全に人間だと思った。
いえ、見た目はそうだけど、とてつもない魔力を秘めている。
空腹感と疲労感で私の危機感知能力が鈍っていた。
普段ならこれほどの魔力を感知したら、真っ先に逃げていた。
エリアス君は私を見て泣き出してしまった。
どういうこと? エリアス君は感情を持ち直したようで、私を半魔の庭に連れて行ってくれた。
半魔の庭は本当に半魔と魔族が暮らしていた。
穏やかな空気が流れていた。
ここに暮らす人達は私に優しく話しかけてくれた。
ここで私も暮らしたい。
でも、主の方に許可を取らないと。
エリアス君のお母様か、どんな人なんだろ? 優しい人だと良いけど。
エリアス君のお母様であるレイラ様は想像を絶する美人だった。
それなのに、とても気さくだった。
素性もよく分からない私をすんなりと受け入れて下さった。
そして、エリアス君ととても仲が良かった。
私もお母さんを思い出して、涙がでそうだったけどここは我慢した。
エリアス君とレイラ様のおかげで無事全てが上手くいきそうで安心していたが、新たな事実が発覚した。
エリアス君はここに住んでいるのではなく、人間界で暮らしているとのことだった。
エリアス君とレイラ様が再会の挨拶をしていた気がするが、その時は受けて入れていただけるか、緊張感と疲労感で一杯一杯でそれどころではなかった。
ここで受け入れてくれることになって、全てが上手くいくことになって、何も問題ないはずなのに私の心の中に欲が生まれた。
エリアス君と暮らしたい。
信じられなかった。
生きることを諦めそうになっていた状況から救ってもらっただけで問題ないのにそれ以上を望んでしまった。
エリアス君に付いて行く? いいえ、それは出来ない。
たった今半魔の庭で受け入れてくれる事が決まったばかりだから。
今の私に出来るのは再会を約束することだけ。
エリアス君を見送る私の心の中には、人間や魔族を滅ぼしたいという気持ちは完全に消えているのでした。
世界に私を受け入れてくれる人がいる。
私の心の中は温かい気持ちで満たされていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます