第12話信頼の力

「小僧、まだ諦めぬか」


「まさか。俺はもっと強くなれる。おじさんをもっとワクワクさせてあげるよ」


「ふん。自惚れるな小僧。まだまだ実力差があることを教えてやろう」


 突きが来た。俺はそれを横に避ける。

 そこから横薙ぎの攻撃が来る。

 今度はそれを剣で受け止める。


『システムメッセージ:HPが10減りました。最大HPが5上がりました。防御力が2上がりました。敏捷性が50上がりました。サイドアヴォイダンスのレベルが20上がりました。ガードのレベルが25上がりました』


 出来た。完全には防ぎきれなかったが、全く痛くない。


「なんだと……我の連続攻撃を防ぎきるとは……」


「こんどはこちらの番だよ。おじさん」


 突きでは決定打に欠ける。斬りつけないと骸骨であるおじさんを倒せない。

 最速の突きからの最速の斬りつけだ。


『システムメッセージ:???に180のダメージを与えました。攻撃力が130上がりました。器用さが30上がりました。スピードスラッシュを覚えました。スピードスラッシュのレベルが25上がりました。スピードスラストのレベルが15上がりました。剣熟練度が15上がりました』


「くっ……またしてもだと、小僧」


「おじさん。俺の事認めてくれた?」


「よかろう。もう小僧と見くびるのは止めて我の全てを見せてやろう」


「望むところだよ」


 来る。今までとは空気が違う。

 でも、俺は強くなった。耐久力、力、速さどれも桁違いに上がっている。

 必ずやれる。


 そこからお互いに攻撃を当てる、かわすといった攻防があった。

 おじさんの攻撃が直撃することもあったが、HPや防御力といった耐久力が上がっていたので、致命傷にはならなかった。


 攻撃力も上がっているので、与えるダメージが増えている。

 あああぁぁぁ、ステータス確認したい。そんな暇ないけど。

 めっちゃ上がってるだろうな。


 俺はソフィアから貰った残り二つのポーションを使い切った。

 HPも残り少ない。

 お互いに疲労感や痛みで動きが鈍かった。


 と言っても、おじさんは骸骨なので痛みや疲労があるのかは分からなかったが。

 次攻撃を食らったら負け。

 俺にはフェニックスリングがある。


 だが、何としても使いたくない。

 俺には他の勝算があった。

 来た! そこで俺に向かって何かの物体が飛んできた。


「エリアス様!」


 ソフィアかがポーションを投げてくれた。

 俺はそれを飲む。


『システムメッセージ:HPが900回復しました』


 ソフィアが俺を尾行していたのは気付いていた。

 必ず俺がピンチになったらポーションを投げ入れてくれると信じていた。


「ありがとう、ソフィ!」


 俺はソフィアに手を振った。


「残念だったね、おじさん。おじさんは俺に勝てないよ」


「なんだと? 聞き捨てならんな」


「実力差の話をしてるんじゃないよ。信頼の力だよ。俺はソフィがポーションを投げ入れてくれると信じていた。だから安心して戦えた。」


「信頼か……久しく聞かぬ言葉だ。よかろう、今回は退くとしよう」


「分かった。また戦ってくれる?」


「我はさらに深い層で待つとしよう。さらなる研鑽を積んでこい小僧。そこで再戦としようではないか」


「分かった。楽しみにしてるよ」


 俺は階段を下りていくおじさんを見送った。





「エリアス様!」


 ソフィアが駆け寄ってきた。


「ソフィ……」


「エリアス様、心配しました……ソフィは……ソフィは……」


「ごめんって、ソフィ。帰ろう」


「もう良いのですか? てっきり先に進むのかと」


「自分自身の実力不足が露呈したからね。何度か死にかけた。戻って仕切り直すよ」


「良かったです。帰ってゆっくりしてくださいね」


「その前に半間の庭に行くよ。折角近くまで来たのだから母上に顔を見せたい。ソフィは先に帰ってていいよ」


「ソフィも付いていってはダメですか? 何れレイラ様は私のお義母様になるのですから、一度ご挨拶に行きたいなと。い、いえ、今のは聞かなかったことに……」


「?」


 何で母上がソフィアの母になるのだろう? 変なソフィア。


「迷いの森に人間が立ち入ってはいけないというルールがあるだろ? それに迷いの森の奥と半魔の庭を繋ぐゲートは魔族と半魔しか通れないだろ? 付いてくるにしても迷いの森の入口までだ。そこで待っててくれるか? 直ぐに戻ってくるから」


「かしこまりました……」


 ソフィアは残念そうだった。

 そんなに母上に会いたいのか。


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