第24話 枯れない方法

 私は一人で世界樹の下に立っていた。いや、モジャコもいた。その存在感をアピールするかのように、いますよ!とばかりに時々、ポンポンと弾んだりポンッと私の頭にのったりしてくる。


「緑の葉のままに……?」


 そんなこと可能なのだろうか?ヒラヒラと落ちてくる葉。それを私の手に触れさせる。あっという間に茶色に変色し粉々になって消えた。地に落ちている葉も時間が経つと消えてゆく。


 今までにいろんな人が研究を重ねてきたが不可能だった。聖女候補とはいえ、ただの神官である私達には無理な話よね。大神官長様はいったい何をさせたいのかしら?


「大神官長様の嫌がらせじゃないわよねぇ?」


 神官たちの力はこの世界樹が源となっていると言われている。だから、私達が使う癒やしの力で世界樹は辛うじて枯れることを防げているのだろう……と私は単純にそう推測した。


「もしかして、癒やしの力ならば、緑の葉のまま保てるかも!?」


 我ながら名案だわ!私は葉を拾う。手に癒やしの力を込めて触れてみる。変色しない!消えない!


「フフフ。私、天才じゃない?」


 ニヤリとしかけた瞬間だった。パラパラと手のひらから葉は落ちていった。保てたのは一瞬だった。


「あああ!ダメだわ!」


 がっくりと膝をつく。そんな簡単なことじゃないわよね。私が思いつく程度のことなんて、たかが知れてるわよね。悔しい……。


 夕暮れ時になってきた。もう帰ろうと私は立ち上がる。


 え………?


「モジャコーーー!?そ、それっ!」


 モジャコは口に葉を咥えていた。私の真似をして葉を拾ってみたのだろうか。その葉は枯れることも消えることなく落ちた時と同じように緑色の葉のままだった。


「どういうことなの!?でも、モジャコ!!お手柄よーっ!」


 よしよしよーしと撫でるとモジャコは嬉しそうにクルクル回ってる。


「このまま大神官長のところへ殴り込み……じゃなくて、緑の葉を献上するわよ!」


 今回こそは私の勝ちね。他の聖女候補と並んだわ。ヨシッとガッツポーズをキメたのだった。


 大神官長様の元へ行き、モジャコがペッと緑の葉を引き出すと、笑うかと思っていたのに、大神官長様は逆に目を細めて怖い顔をしていた。それは一瞬の顔で、後はいつも通り穏やかな顔をしていたので見まちがいかと思ったが………なぜかその表情が私の頭から離れなかった。


 モジャコと私は神官の居住区域へと帰っていく。


「どうやってしましたの!?」


「すごいのですぅ!」


 驚き、称賛される様子に他の神官たちが何事かと見ている。私はフッと笑って言った。


「これで聖女は誰がなるのか、わからないわね!私にもチャンスはあるってことよ!」


 でも似合わないよね?とか欲望に真っ黒な聖女だとか周囲から聞こえるけど気にしない!


「あなたのその最後まで食いつく根性は恐れ入りますわ」


 エレナは少し呆れてるように言った。ミリーはアハハッと可笑しそうに笑ったのだった。


 

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