第22話 どちらを選ぶか?
シシリア様の相手が嫌になって帰ってきてしまったので、怒られるかと思ったら、逆にニコニコして大神官長様は言った。
「王女が元気になり、感謝していると王家より連絡があった」
私とセスは顔を見合わせる。そんなはずはないと思うのだが?
「それで一時的にでいいからセスを貸して欲しいと言われたんじゃが、王家へ出向してみないかの?」
「はあ!?聖女の守護者の役目はどうすんだよ!?」
「ラウラは一人でも大丈夫じゃろ。どうせおまけのハズレの聖女候補じゃ」
ちょっと!失礼ねっ!と私は言いかけて、気づいた。
「まさか本気でシシリア様はセスが欲しいわけ!?」
「いたく気に入ったらしいのぅ」
パチパチと私は目を瞬かせた。そしてセスの顔をジロジロ見た。まぁ、たしかに良い顔はしてるけど、頭の寝癖はどうしたらいいですか?
「一人で大丈夫じゃないよな?」
「まあ。たしかに、他の聖女候補に比べて不利になっちゃうわね」
試練の時や日頃の護衛など、たしかにセスはやるべきことはしているのだ。それにエレナやミリーが仕掛けてこないわけがわない。
「うーむ……じゃあ、ラウラ、セスがいない間はボーナスを給料につけてやろう」
ボーナス!?なんて素敵な響きなの!?ちらりと横目でセスを見た。王女様に囲われるけど一時的に神殿からは自由になるセス……私はボーナス……。なんて良い申し出!!
「ラウラ」
私の名を低い声で呼ぶセス。私はハッと我に返った。
「オレを売ろうとしてねーよな?」
「もち……もちもちもちもちもちろんよ!」
「何回『もち』って言って動揺してんだよ!しようとしてたな!?」
「してない!してない!」
首をブンブン横に振る。
「断るのかのぅ?まあ、神殿的にはどちらでも良いのじゃが」
大神官長様にそう言われて、私は丁寧に一礼し、言葉を発した。
「申し訳ないのですが、私にとってセスは大切な守護者です。誰かに貸すことはできません。それが王女であろうともです」
「ほぅ……ラウラがお金よりセスをとるとはのぅ……愉快じゃな」
楽しそうに大神官長様は笑った。セスが大切な大切な……と小さな声で横でそう繰り返し呟く。
「なによ。神殿から出たいんじゃないの?」
私はヒソヒソと小声でセスに言うと彼は真面目な顔になった。
「おまえ、自分の身の危険をわかってんのか?オレがいないと丸腰になるんだぞ」
「わかってるけど、セス、あなたはあなたでやりたいことあるのかなって思ったもの。それなら私のことより自分のことを優先しなさいよ」
青い目が見開かれた。そして怒ったような顔をして寝癖がついた前髪をグシャっと握った。
「なんか調子狂う。やめろ……」
なんの調子!?なんで怒った顔をしてるのよ!?大神官長様と会った後、セスは私と口を利かなかった。
何か悪いこと言ったかしら……?
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