第20話 憂鬱な王女様①
私とセスは噂の王女様に会いに行った。部屋から出なくなり、食事もろくにとらず、顔色も悪くなる一方という噂の王女様らしい。
「あー、かったるいなー」
怠け者の召喚士は通常運転で、気だるそうに欠伸をした。
「ちょっと!王宮内でそんな態度したら、やる気ないって思われるでしょ」
「オレは本気でやる気がない」
……あ、そう。じゃなくて!
「このままだと、聖女候補から降ろされ、聖女になれないわ!私は名誉挽回したいの!」
「なんのために、そんなものになりたいんだよ?崇められたいのか?それとも……」
「確固たる強い地位を手に入れたら、真面目でめんどくさい神殿の規律をまず変えるのよ!そしてお金を手に入れて、自分の大好きなものをなんでも買っちゃう!王都に自分の家を建てても良いわねぇ」
ウッフッフッと黒く笑う私。
「わかりやすい欲望だな……まあ、人々のためにとか世界平和のためにとか嘘くさいやつより正直でオレは良いと思うけどな」
馬鹿にされるかと思ったら、褒められた!?今ので納得するの?と私が口を開こうとした時にドアが開いた。
「ようこそお越しくださいました。第三王女シシリア様のお付きの者です」
深々と頭を下げられる。私はキラキラッとした神聖さと純真さを兼ね備えた聖女らしい雰囲気に切り替える。
「王女様の体調が優れないとお聞きし、心配しておりました」
切り替えすげーと横でセスが小さく呟いているが、聞こえないふりをした。
「癒やしの力を持つ神官は多忙だと聞いてます。ご足労ありがとうございます」
な、なんて……丁寧な方!良い人!私は気分を良くした。なかなか多忙なことに労ってくれる人は少ないものなのだ。
「こちらへ……」
通された場所は王女の私室だった。入っても良いの?そこには金髪巻き毛のぽっちゃり王女が不貞腐れた顔でドンッと窓辺に肘をのせ、椅子にやや狭そうにしつつ、座っていたのだった。
体調が悪い?どう見ても元気そうで食欲旺盛で私より力がありそうな王女様に見えるのは気のせいだろうか?
私とセスの無言の間にお世話係の人が慌てたように補足する。
「普段よりお食事を召し上がらず、おやつもいらないと……」
「むしろ健康的で良いんじゃね?……いてっ!」
私に足を踏まれるセス。
「どこが苦しいのか、教えて頂けますか?」
私は慈愛に満ちた優しい笑顔を作る。ちらりと私の顔を見て、ため息をつきながら王女様は言った。
「はぁ……良いですわねぇ。なんて能天気そうな方ですの」
…………仕事じゃなかったら、帰ってた!
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