第18話 バツをつけられる聖女候補

 試練はもう2回終わってしまった。すべて他の聖女候補達に手柄をとられてしまった。私はもう崖っぷち!これではエレナとミリーのどちらかが正式な聖女になるだろう。


 大神官長様や他の神官たちが私とセスを呼び出した。


「おまえたちはやる気があるのか?」


 開口一番に言われたのがソレだった。私は思わず空気を吸い込んで吐く。冷静になるのよ。ここでキレたら、ますます立場は悪くなっちゃう。そうなれば聖女候補すら降ろされて、地位とかお金とか言ってらんなくなっちゃう!


 私は脳をフル回転させ、どう答えようか考える。


「嘘と真実を大神官長のくせに見分けられないのか?」


 ……セスううううう!?!?


 隣で不機嫌かつ腕を組み、偉そうな態度で低い声でそう言い放つセス。彼は目を細めて、睨んでいた。怒ってるの?あのセスが?いつも眠そうな雰囲気の彼が?


「やるべきことはやっている。文句あるなら、オレを聖女の守護者にしなければいい。それだけだ」


 大伸官長様とセスの間の空気が険悪なものになる。お互いに目を合わせて、逸らそうとしない。喧嘩になる!?焦る私。


「セスはいつも通り半分寝てなさいよっ!」


 私は思わず小声でセスの服をグイッとひっぱって引き寄せる。グラッと私の方に傾きかけて、なにすんだ!とセスは非難の声をあげる。


「おまえは平気なのか?むしろオレ達が助けてる方なのに、他のやつらに手柄はとられるわ、懲罰室にいれられるわ……なんだよ!?怒れよ!」


「今、怒ったところで、私たちの不利になるだけよ!信用してもらえてないんだから。ここは、演技でも良いから、エヘッ。すいませーんって言っておくとこよ。処世術よ!」


「まあ、ラウラが良いならば良い。オレはもともと評判は悪いし、やる気もないし、さっさと自分の部屋に帰って寝たい」


「……どこの部屋でも寝てるじゃない」


 懲罰室でもスヤーと気持ち良さげに寝ていたセスを思い出す。あの部屋で、あんなくつろげるのは彼くらいだと思うの。


「さすがに自分の部屋のほうが落ち着く」


 肩をすくめるセス。


「ハズレコンビ、話は済んだかの?」 


「その呼び方止めてくださいっ!」


「やめてほしければ、仕事をするんじや。今日のところは帰って良い。しかし明日、頼みたいことがある。また明朝来るように」


 大神官長様はそう言うと、手をパタパタさせ、帰るように指示した。


 セスはおつかれーと言ってアッサリ出ていく。頼みたいことって?と聞き返す間もなく、私もついていく。


「あの……ありがとうね!」


「なにが?」


「モジャコを貸してくれたんでしょう?」


「モジャコが行きたがっただけだ。じゃーな」


 召喚獣が自ら行くわけない。だけどセスはそれ以上何も語らず、私はスタスタ早足で帰って行ってしまう背中を見送った。 

 

 私とセスは周囲からこう言われるようになってしまった。


「ハズレ同士の二人は本当に何もしてないな」


「アハハ!大神官長様にハズレだと認定されたんだって?」

  

 ……不本意すぎる!聖女候補の中で落ちこぼれ、ハズレの聖女認定を得てしまった私だった。

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