第13話 名付けのセンスは召喚術の才能に比例しない
世界樹へ力を定期的に注ぎに来ている。私とセスの間にぴょこぴょこ浮いてる目玉が1つの毛玉がいる。セスの召喚獣の一匹。
根っこに躓かないようにヒョイッと私はジャンプする。
「今日、なんで同行させてるの?可愛いけど」
その白いふかふかした体に触れたくて、触ろうとするがスイーッと避けられた。
「こないだは撫でさせてくれたのにー!」
「今日はオレがいるからな。オレに懐いてるからしかたないだろ。こないだおまえがモジャコに会わせてほしいって言ったから出してやったんだ」
「あっ!こないだのこと、覚えててくれたの!?…………ちょっと待って?今、この召喚獣の名前を呼んだ?」
ん?とセスが首を傾げる。
「そうだ。モジャコって言った」
……えっ!?もう一回聞き返すべきかしら?
「召喚獣、名前があるのね。ちなみに竜は?」
「ドラドラ」
…………。
………………。
「なんだ?この間と空気感?」
ハッ!と私は我にかえる。あまりのひどいネーミングセンスに衝撃的だったわ。
「えーと、と、鳥は?まさかパタパタとかトリコとかじゃないわよね?」
「おまえ、センスないなぁ〜」
「はぁ!?あんたに言われたくないわよっ!」
つい、ムキになってしまう私。
「あの鳥の名前はトリリンだ」
「私の例えとどう違うのよっ!?」
「スマートかつ鳥の特徴を捉えてる良い名前だろ!?」
「どこがよ!壊滅的なセンスよ!」
なんだとー!とセスが声を上げると、私たちの前からの歩いてきたミリーと遭遇した。また……マテオが抱えている。
「マテオ、またか?」
セスが眉をひそめる。
「ミリー様は力の限り頑張っておられる。お前達も頑張ってくれ。セス、おまえの気持ちはわからなくもない。だが、心が曲がると何もかも素直に受け止めれなくなる。それはこの先生きていくにはしんどいことではないか?」
あまり喋らないマテオがスラスラとそう言った。私はそのことに驚く。無言になるセス。
「何度も言うけど、セスはサボってるように見えてサボってるけど……」
おいっ!と私の言い方に非難の声をあげるセス。私は言葉を続ける。
「普段の仕事の護衛も山登りも祠でのピンチもちゃんと助けてくれたわ。まあ、他の聖女候補たちに比べたらハズレの聖女の守護者だけど……」
「なっ!ハズレ聖女のおまえが……」
口を挟もうとしたセス、静かにミリーを抱えたまま私を見るマテオに私はニッコリ微笑んだ。
「なんだけど、私はけっこうハズレの召喚士、気に入ってるのよ」
ピタッとセスが止まった。マテオが目を見開く。私はフフッと笑って、ミリーの額に手を当てて、私の力を分けてあげる。
「ミリーに無理しないでって伝えておいて」
ありがとうございますとマテオはお辞儀し、去っていく。
ポンッの召喚獣の白い毛玉が私の手の中にいきなり飛び込んできて、おさまった。
「あら?どうしたの?モジャコ?」
パチパチと瞬きしている。そして腕の中で眠った。ふわふわしてる毛並みの手触りは癒やされる。可愛すぎる!スリスリ頬ずりしたくなる!
私とセスは無言で歩いていった。世界樹の葉から溢れる光がチラチラと照らす地面を。
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