第11話 甘党召喚士は甘いものに目がない

 正式な神官になると休日も給料もそれなりに貰える。見習い期間を終えてうれしかったことはコレ!


 しかも今は聖女候補として働いていて、私の出した条件である『給料2倍』が叶っている。

 

 懐が温かくなり、欲しいもの買うわよー!とテンションも上がるってもの。


 さっそく給料日後は外出許可をもらって街に出かけている。この世界樹のある都市はかなり広く、世界の中心と言われるだけあって、賑わっている。


「なんでオレはここにいるんだろう?」


 セスが私に連れて来られて文句を言う。


「私の護衛なんでしょ?ほら、こないだ助けてくれたお礼に奢ってあげるわ」


 給料2倍中の私はとても優しい。今、流行りのカフェに来ている。メニューを渡すとセスがいつも眠そうな目をカッ!と見開いた。


「オレ!!オレは………これにする!すげー!!」


 セスが覚醒した!?指差したところは『デカパフェ。全部食べ切れたらタダ』と書いてある。巨大なボウルの中にアイスとクリーム、果物が大盛りに入っている。食べれない時はけっこう高い金額を払うことになりそうだ。


「えっ……これ!?食べれるの!?」


 フフンとセスは自信たっぷりに笑う。


「オレ、食いだめするタイプなんだ。自慢じゃないが、昨日の夜からなにも食ってない!めんどくさくて!そして超甘党なんだ!」


「確かに自慢することじゃないわ。まぁ……好きにしてちょうだい。私はこの生クリームたっぷりフルーツサンドとカフェラテにするわ」


 店員さんに注文して、しばらく待つ。


「金、大好きなくせに人に奢ろうなんて気になるんだな?」


「給料2倍の今限定で心が優しくなれるのよ」


「給料2倍!?おまっ、おまえ……そんなことを要求してたのかよ!?」


「当たり前じゃないの」


「はー………神殿相手になかなかすげーやつだなー」


 呆れたように私を見たが、ハハッと笑った。


「でもこんなやつ見たことなかった。面白いやつだな」


「珍獣のように言わないでよっ!」


 そう私が抗議すると同時に、おまたせしましたぁ〜とドドンと巨大パフェが目の前に置かれた。


「おおっ!美味そう!」


 セスは目をキラキラさせて、スイスイッと生クリーム、フルーツ、アイスを口に運んでいく。


「見てるだけで胸焼けするわ」

  

 私は吸い込まれるように無くなっていくパフェを見つめて言う。


 カランッとスプーンが音をたてて置かれた。見事食べきったセスは今まで見たことないくらい幸せそうにしている。


「美味かったー!」


「すごい……まさか本当に食べきるなんて……」

 

 水を飲みながら彼はサラッと言った。


「バケツプリン食べるのが夢だな」


 バケツプリンーーっ!?甘い物が、私の今日の夢に出てきそうよ?思わず口直しに苦いコーヒーを頼んだ私だった。食べてないのに食べたような気になってしまった。口の中が甘い気がする。


 恐るべし甘党召喚士。

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