第10話 報告は速やかに行うもの
しばらくエレナは私の傍に近寄らなかった。顔を見る度にビクッと体を震わせている。
「私が意識無い間、何があったの?」
その反応が気になりすぎて、つい聞いてしまった。取り巻き達が何のことだろうと聞き耳をたてるのが嫌だったらしく、エレナは二人きりにしてちょうだいと私と二人になるために、神殿の中庭へと歩いていった。
「あんな力があるのなら、最初から言っておいてくださらない!?隠していましたの!?」
「セスのこと?」
「そうですわ!本物の召喚士でしたのね……巨大な竜を呼びだし、うねる水流を静めて、水の中からあなたを救い出してましたわ」
そしてと苦々しく続ける。
「『オレの聖女候補に手を出すな』と言って竜に乗って去っていきましたの」
…………。
……………………。
「なんですの?この間は?」
ハッと我に返る私。不信な顔をしているエレナ。
「ごめんなさい。普段とのギャップに耐えれなくて固まっただけなの。気にしないで」
なに?そのカッコイイセリフ?
「どうでもよろしいですけど、今回の報告、わたくしが先にさせてもらいましたわよ?」
つまり、エレナの勝ちってことなのね。くっ……聖女の地位と権力が遠ざかったじゃないの。そもそもセスがちゃんと祠までついて来てくれていればこんなことにならなかったんじゃないの!?
「伝説級の召喚士。まさかラウラが……なんてことありませんわよね」
ブツブツ言いながら、エレナは行ってしまう。
今回、ミリーは?というと、なんでも途中でお腹が空いて、マテオとお弁当を食べていて、遅れたらしい。ほのぼのコンビである。
エレナと話した数時間後、大神官長様に呼び出される。セスは昼寝していたらしく、ダークブラウンの髪にピョコンと髪が立っている、おかしな寝ぐせがついている。
「水脈の調査、ご苦労だったな。どうであった?」
「エレナから報告を受けたのではないんですか?」
私が尋ねると目をスッと細めてニヤリと笑う。年老いているといえど、どこか威圧感を感じる。
「ラウラからも聞いてみようかと思っておる。御神体に触れたというのは本当か?」
「はい。とりあえず破損していないかの確認をした方が良いと思ったんです」
エレナに唆されたとは言いにくい。私もうかつに『どうせ何の効力もないんでしょ』と思って触れたのだから。怒られる?これ?
「オレは遠くから見ていたが、先にラウラが触れていた時は何も起こらなかった。エレナが触れた瞬間に御神体は水柱を出現させ、水流となって襲った」
セスが私をかばってる!?
「それで、セスは何をしたんじゃ?」
「オレ?……しかたないから召喚魔法を使った」
ほほうと大神官長様が楽しそうに言葉を発した。セスがそんな大神官長様を睨みつけた。
「なかなかハズレコンビは良いコンビかもしれぬのぅ。報告ご苦労じゃった。次回の試練に備えよ」
はいと私は答えたが、返事もせず、大神官長様を睨むセスが気になってしまったのだった。
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