第15話 初デートと出発




「デ、デート!?」


 朝、シェンからの言伝をソニアに聞かされ、私は椅子から転げ落ちそうになる。


「はい。なので3日後はエリィ様のご予定をあけておいて欲しいそうです」


 いやいや、それはもちろんあけるけど。


「シェンは今忙しいんじゃ?」

「死ぬ気で時間を捻出するそうです」


 そこまでして私とデートを!?


 え? でもデートって……男の人と女の人が楽しくお出かけするあれだよね?


「どどどうしよう!? 私デートなんて……何をしたらいいか」


 自慢ではないが、デートなんてイベント、生まれてこの方まるで縁がなかったのだ。


「ご安心くださいエリィ様」


 その時、ソニアが眼鏡をクイッと持ち上げる。


「おふたりのデート成功のために、我々が万全のサポートを致します」

「ソ、ソニア~」


 なんて頼りになるメイドなの!


「服と靴と宝石類の商人を明日屋敷に呼んであります。そこでデートに着ていくものを選びましょう」

「えっ? 服に、靴? 別にこの家にあるものでいいんじゃ……」

「いいえ、記念すべきおふたりの初デートには、やはり最高のものを揃えるべきです」


 そ、そこまでするの?


「それにエリィ様はご自分のものをあまりお持ちでありません。この機会によいものをお選びなさいませ」

「は、はぁ……」

「あとはエステに化粧品も必要ですね。そちらもすぐ手配しますので」


 贅沢な話すぎて目がチカチカしてきた。


 始まる前からこんな調子で、デート本番は大丈夫なのかなぁ……?


▽ ▽ ▽ ▽


 期待と不安に胸を膨らませ、3日後のデート当日。


 その日は朝から私はメイドたちの手で、目一杯のおめかしをしてもらっていた。


 まずは朝風呂にエステ。


 朝食も控えめに体の準備を整え、いざ卸し立ての服に袖を通す。


 お化粧は名人級のソニアに任せ、髪の先から指の先までメイドたちに入念にお手入れしてもらう。


「どうぞお足を」


 何十足も比べて選んだ靴を履かせてもらい、準備は完了。


 部屋を出て玄関へ向かうと、シェンが先に待っていた。


 彼は今日のために物凄い量の仕事を片づけてきたと聞いている。


「エリィ」


 けれど彼はそんなこと顔には微塵も出さず、私に微笑みかける。


「今日は一段と綺麗だ」

「~~~」


 シェンって言葉数が少ない分、言うことがストレートすぎて心臓に悪い。


 こんな女泣かせ(?)に育てた覚えはないんだけどなぁ。


 早速頬の火照りを覚える私に対して、シェンはそっと手を差し伸べる。


「じゃあ行こうか」

「は、はい……!」


 こうして私とシェンとのデートの一日が始まった。



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