第6話 お屋敷とお出迎え




 フリード家のお屋敷は、それはそれは立派なものだった。


 門番の人に敬礼されながら門扉を潜ると、まず広大な庭が目に入る。


 敷かれた芝生も青々として立派。

 中央には噴水もあった。


 働いてる庭師の人がこちらに気づいて頭を下げたので、私も思わずぺこりとする。


「素敵なお庭ね」

「気に入ったならよかった」


 やがて馬車はお屋敷の玄関で停まる。


 御者の人がドアを開け、先にシェンが降りる。


 私も降りなきゃ。


「手を」

「……あ、ありがとう!」


 降りる時に彼の手を借り、白手袋越しの感触にいちいちドキドキしてしまう。


 そうして降りた玄関先では、出迎えのために大勢の人たちが待っていた。


「お帰りなさいませ」


 先頭にいる執事の人がお辞儀すると、後ろのメイドの人たちも同様にお辞儀する。


「こっこんにちは!」


 反射的に私も挨拶する。


 頭を下げた私を見て、何人かがギョッとしていた。

 それは純粋に驚いた顔で。


 あ……やっちゃった。

 私は自分が変な行動を取ってしまったことに気づく。


 と、執事の人がチラッとこっちを見て。


「シェン様、そちらの方がもしや?」

「ああ、部屋に案内してやってくれ」

「かしこまりました。ソニア」


 ソニアと呼ばれ、眼鏡をかけたメイドの人が前に出てまたお辞儀する。


 これも凄い美人さんだ。

 歳は同じか少し下くらいかな?


「メイド長のソニアと申します。エリィ様のお部屋へご案内いたします」

「あ、はい!」


 緊張もあって声が上擦った。


「あとで様子を見に行く。それまでに身支度を整えておいてくれ」


 シェンはそう言って、執事の人と先にお屋敷へ入っていっていく。


 あ、シェン……!


 心細さからつい引き留めそうになるが、辛うじて声は呑み込んだ。


「どうぞこちらへ」

「あ、荷物を……」


 数少ない私物は馬車の後ろに積んである。


 私はそれを取ろうとして、メイドの人に押し止められた。


「お荷物は私どもにお任せください」

「あ、はい……お願いします」


 メイドの人ってそんなことまでやってくれるんだ。


「どうぞ」


 私は改めてソニアに従い、お屋敷の中に入る。


 その先はまた別世界だった。


 まずエントランスがすでに広い。

 追いかけっこだってできそうだ。


 廊下に敷かれた絨毯もふわふわ。

 いろんなところに剣や槍や鎧、絵画や肖像画、花とか壺とかが飾られている。


 等間隔に配置された壁ランプもアンティークっていうのかな、とても高級感がある。


 夜に灯りがついた廊下をもう一度歩いてみたい。

 きっと綺麗なんだろうなぁ。


 綺麗といえば、この壁や床。

 それに窓!

 こんなに広いお屋敷なのに、どこも掃除が行き届いてる。

 窓ガラスなんて透明でピッカピカだ。


 これも全部メイドの人たちがやってるのかな?

 だとしたらなんて丁寧な仕事だろう。

 あとでコツとか教えてもらいたい。


 その時、先導していたソニアがとある扉の前で立ち止まる。


「こちらがエリィ様のお部屋になります」


 そう言って彼女は私のために扉を開けてくれた。



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