第45話 ごめんなさい
急いでエントランスに入り、守衛さんに挨拶した後、鍵を差し込んでドアのロックを解除する。 そしてドアの中に入りエレベーターに乗り込んで、部屋のある
階のボタンを押した。
エレベーターがゆっくりと動き出す。 このエレベーターが動く時間がもどかしい。
エレベーターはゆっくりと部屋のある階に到着した。 俺はエレベーターの扉が開いた瞬間、エレベーターを飛び出してダッシュで部屋まで移動した。
部屋の鍵を解錠し、部屋の中に入り
「朋美!!」
と割と大きめの声で叫んだ。
すると部屋の奥で人影が動いた。 そして
「……ゆ、雄二……さん? ゆ、雄二さん!! 雄二さん雄二さん雄二さん!!」
部屋の奥から朋美が走ってやって来て俺に抱き付いて泣きじゃくった。 もう二度と離さないと言わんばかりの強い力で。
俺はそんな朋美の背中に手を回して
「朋美ごめんなさい。俺は…俺は……」
「雄二さん…私が悪かったです…私が全部いけなかったんです……だから…私を捨てないで下さい……私、雄二さんが居ないと生きていけないの……だからお願い。ずっとずっと私の傍に居て下さい……私を見捨てないで……」
朋美の小さな肩が震えている。 元々小さかった朋美の姿が今は一段と小さく見えた。
「朋美は悪くないよ。謝らないといけないのは俺の方なんだ。俺が全て悪いんだ。俺が勝手に勘違いして、勝手に朋美の前から居なくなったのがいけないんだ。だから、朋美は全然悪くないんだ」
「……勘違い? 何を勘違いしたのですか?」
俺の胸に顔から抱き付いて泣いていた朋美は、胸から顔を離して涙を貯めた目で俺を見つめてそう聞いてくる。
俺は朋美の姿を見た。
……朋美の目の下には凄い隈が出来ている。 卵みたいなすべすべの肌は張りが無くなっていた。 そしてあんなに綺麗だった髪から艶が無くなり髪はボサボサになっていた。 そして若干だが頬がこけている様に見える。
あんなに皆を魅了する位綺麗だった朋美がこんな姿になったのは全て俺の責任だ。 本当にごめんな……。
俺は朋美の質問に対して詳しく説明をした。 あの日朋美を見かけ、声を掛けようとしたが出来なかった事。 朋美の親戚を朋美の新しい彼氏だと勘違いした事。 俺が勝手に朋美に見限られたと思って、朋美の幸せを願い姿を消した事。 後もろもろ全部。
「……やっぱり私が元々の原因ですね。 私が雄二さんに親戚と中古車を見に行く事をきちんと伝えてさえおけばこんな事にはならなかったんです。雄二さん、今回の一件の事黙っていてごめんなさい。 今度からはどんな事も必ず雄二さんに報告して、ちゃんと雄二さんの許可を得てから動く様にします。約束します」
「や、そこまでしなくても」
「それと雄二さん。私は雄二さん一筋です。今までも。そしてこれからも。他の男性になんて靡いたりしません。決して。 私には雄二さんしか見えていません。雄二さん以外の男性には1ミクロンも興味はありません。貴方の隣に居る事が私の幸せなのです。 この事だけはどうか信じて下さい。お願いします」
「うん。分かった。朋美の事疑ったりしてごめん」
俺は朋美を静かに、かつ強く抱き締めた。
「はい。許します。私の事もう二度と離さないで下さいね。離れたら…泣いちゃいますからね」
「ああ。約束するよ。必ず朋美を幸せにするから」
暫くの間朋美の身体を抱き締めていると、朋美のお腹から " キューッ " と小さく可愛らしい音が聞こえてきた。 朋美は頬を赤く染めて
「エヘヘ。安心したらお腹空いちゃいました♪」
「じゃあ俺が朋美の為にお粥でも作ろうかな。もう何日もご飯食べてないんだろ? いきなり普通のご飯はお腹に悪いから」
「じゃあお願いしちゃおっかな♡」
「任せなさい♪ って、あっ、午後の仕事が……は良いか。電話して有給使おう」
「あっ、私も会社1週間行っていません。どうしましょう……。皆に物凄く迷惑掛けちゃった。出社したら謝らないと」
朋美と俺は顔を見合せ笑った。
後でカプセルホテルにスーツケースを取りに行ってチェックアウトしなくちゃな。
「あっ、今の私、物凄く酷い格好してる!! お肌はカサカサだし、髪の毛もボサボサ!! 目の下の隈が!! こんな姿雄二さんに見られた!! ふぇぇぇぇん。今すぐ此処から消えたいよぅ……」
ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m
面白いと思われたら ♡ ☆評価 コメント レビュー等を頂けたら嬉しいです(* ̄∇ ̄*)
今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m
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