第39話 引っ越し前夜

で、新居に引っ越す前日の夜。 俺と朋美はこの部屋で過ごすのが最後という事で、いつもより少しだけ豪華な晩餐を楽しむ事にした。 メニューは朋美特製 若鳥の唐揚げ(大盛)とキャベツの千切りと白飯。そして酒はいつもならお安い発泡酒な奴なのだが、今日は奮発して七福神の鯛を持った神様がイラストの金色の缶の一級品ビールをチョイス。 


……今何処が豪華なんだって仰った? 


よく見なさいよ!! いつもなら唐揚げはスーパーで半額のシールが貼ってある唐揚げだよ!? それがほら!! 熱々の美味しそうな香り漂う朋美特製の唐揚げだよ!? 豪華でしょうが!! それに、ビールだって、いつもなら発泡酒もしくは第三のビールなのを、今日は一級品のビールだよ! 普段からこんな高級ビールなんか飲んでたら俺の家計は破産だよ破産!! 


……こほん。 まぁそんな感じで今日は豪華な夕食なのだよ。 異論は認めない! 


因みに朋美は缶のカクテル(モスコミュール)をチョイスしている。 あまり朋美にはビールを飲ませたくないのだよ。 いや、だって、ちょっと前の出来事があるし。 最近分かった事なんだけど、朋美はカクテルならOKでビールはNGみたいなんだよ。 ビールを飲むとちょっと前の出来事みたいになるみたいなんだよな。 本人は分かってないみたいだけどね。(少し前に検証済み……いやぁ、ビールを飲んだ後の朋美は大変……こほん。これは本人のプライバシーに関わるからこれ以上は言わないよ)


和室のちゃぶ台(このちゃぶ台を使っての食事はこれが最後だと思うと少しだけ寂しいな)の上に出来立ての唐揚げとご飯を並べた後、ちゃぶ台を囲んで座り


「「戴きます!!」」


2人で手を合わせる。そしてお待ちかねの夕食タイムだ。


俺は朋美特製の唐揚げを箸で掴み(ちゃんと取り箸はあるぜ。直箸なんて行儀の悪い事はしないのだ)取り皿の上に乗せ、自分の箸で掴み口の中に放り込んだ。


……物凄く旨い。唐揚げから肉汁がジュワっと溢れだし、口の中が幸せに包まれる。 何度か咀嚼をした後、ゴクリと飲み込む。 飲み込むのが実に勿体ない程の美味しさなのだが致し方ない。 そして七福神の鯛を持った神様がイラストの金色の缶の一級品ビールを手に持ち、缶のプルタブを開け、喉に一気に流し込んだ。


ゴクゴクゴクゴク……プファ!! 実に旨い! やっぱりビールは喉越しを楽しむ飲み物だぜ!


そんな俺の姿を朋美はニコニコ笑いながら眺めている。


「ん? どうかした? ニコニコしちゃって」


「いえ、雄二さんのご飯食べている姿を見ていたら何か幸せだなぁって思っちゃって」


こんな野郎の飯食べてる姿見ても幸せに感じる事は無いと思うんだけどな?


「そう? 朋美がそう思うなら嬉しい限りだよ」


「はい♡」


「朋美も冷めない内に唐揚げ食べなよ。滅茶苦茶旨いから…って、作った本人に俺が偉そうに勧めるのはおかしいか」


「そんな事は無いですよ。雄二さんが美味しいって誉めてくれたのが凄く嬉しいです♡ じゃあ遠慮なく戴きますね♡」


朋美はそう言った後に唐揚げを取り皿に取って、持っている箸を使い、可愛らしい口で唐揚げを一口食べ


「うん♪ 上出来です。自画自賛はおかしいですけどね♪」


と愛らしい笑顔を見せてくれた。


そうして俺と朋美は旨い夕飯を堪能した。


夕飯後


「いよいよ明日、新居にお引っ越しですね。 私、物凄く楽しみです♡」


「俺も楽しみだよ。注文していた家具等が明日届く予定だから、家具等のレイアウトは朋美に任せてもOK? 俺がレイアウトすると雑になりそうだから」


「任せて下さい! 2人が快適に過ごせる様にレイアウトしますから♡」


「じゃあ俺は、アパートから持っていく荷物の搬入を頑張るよ」


「私も手伝いますね」


「結構重たい物が多いから、搬入は俺が全部するよ」


「で、でもそれじゃあ、雄二さんに負担が…」


「重たい物を運ぶのは男の俺の仕事だよ。任せなさいって♪ 朋美は俺に指示をしてくれるだけで良いから。ねっ」


朋美にそう言うと、朋美は渋々だけど納得してくれて


「……分かりました。じゃあお願いします。もし大変だったら遠慮無く言って下さいね?」


「大丈夫だって。大船に乗った積もりで任せなさい♪」




そして次の日。 新居に張り切ってアパートから持ってきた荷物を搬入する俺。 そんな俺の姿を心配そうに見てくる朋美。 俺は朋美の指示に従いながら荷物を新居に運び込んだ。


次の日……筋肉痛で動けなくなった俺が居た。 心配してオロオロになっている朋美。


朋美に心配掛けている俺、とても無様だなぁ……。













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