第37話 思い切りが肝心

とうとう朋美は俺のアパートの部屋に居着いてしまった。 週に1回自分のマンションに数時間だけ戻る(金曜日の夜の18時~21時頃)生活をしている。 なんでも自分のマンションの部屋の掃除に帰っているみたいだ。その時にポストの中に入っているDMや請求書を確認して処理しているとの事だった。


今朋美は部屋着に着替えて畳の部屋で雪見だいふくを食べながらNetflixを観ている最中だ。 めちゃめちゃ寛いでいるなぁ。


俺はと言うと、台所でビールのつまみを作成中。今日のビールのつまみは冷凍のフライドポテトだ。絶賛電子レンジが頑張っている。


電子レンジの中で回っている冷凍フライドポテトを眺めながらビールを呑むのも良いものだ。 えっ、それはおかしいだって? ほっとけ。


……しかし、最近朋美が部屋に居着いてから思う事が増えたんだけど……この部屋、2人で住むには狭い様な気がするなぁ。部屋数も2つしか無いし。 一人暮らし用の部屋だから当たり前なんだけど。


「……この部屋って2人で住むには狭いよなぁ……」


ついそう呟いてしまった。


「!!」


俺の呟きに朋美がすぐさま反応する。 雪見だいふくを口に咥えたままで俺を凝視してきた。 そして口から雪見だいふくを外し、Netflixを付けたままで俺の元へ駆け寄ってきた。自分のスマホを操作しながら。 スマホを操作する指のスピードが滅茶苦茶早いのに驚いた。


そして


「雄二さん!! 今この部屋が狭いと言いましたよね!? だったらほら!! 此処なんてどうでしょうか!? 部屋数も4つ(キッチン含まず)ありますし、クローゼットもウォークインクローゼットですよ!! お風呂もこの部屋のお風呂より断然広いです! どうですか!!」


と勢い良く言ってきた。 俺、まだ引っ越すなんて言ってないよ? ただ部屋が狭いって言っただけなんだけど?


「うん。部屋数が4つで広いな。此処なら2人で快適に過ごせそうだな」


朋美からスマホを受け取り朋美が勧める部屋が載っているページをスライドしていく。 この部屋なら朋美の荷物を置いても十分なスペースは確保出来そうだ。 ページをスライドしていった先に月々の家賃が掲載されていた。 それを見てかなりビックリした。 なんと月々の家賃 ¥120000也


とてもじゃ無いが俺の安月給では無理!! 家賃支払ったら生活がカツカツになってしまうよ!! これに光熱費や食費等を出したら、朋美と遊びに行く費用や洋服等を購入する金が無くなってしまう。本当に生活するだけの為に仕事をする事になってしまう。


「と、朋美? 確かにこの部屋は魅力的だけど、いかんせんお値段が……。俺の安月給じゃ無理…」


もう少し安い部屋を探してみよう? と提案しようとすると朋美はキョトンとした顔で


「? 雄二さん、2人で折半すれば大丈夫じゃ無いですか? 2人で割ったら1人 ¥60000でいけますよね? 雄二さん、このお部屋のお家賃はお幾らですか?」


「¥55000かな」


「じゃあいつものお支払いと余り変わりませんよね?」


それはそうなんだけど、朋美と折半なんて心苦しい。普通はメインで住む奴が家賃を支払うものじゃ?


「で、でも」


「私も一緒に住むんですから、お家賃の折半は当たり前だと思います。それに、この物件は雄二さんの会社と私の会社のちょうど真ん中辺りにあるマンションみたいですので、立地的には申し分ない物件ですよ。 雄二さん、この物件に決めませんか?」


「お、おう。そうだね」


朋美の物凄く勢いがあるプレゼンに負けた俺は、ついつい頷いてしまった。


「やった♪ じゃあ早速明日は2人とも会社がお休みですので、このサイトの不動産屋さんに行って内見させて貰いましょうね♡」


「は、はい。了解です」


「ふふっ♡ 明日が滅茶苦茶楽しみになりました♡ 早く明日にならないかなぁ♡」


朋美のテンションが爆上がりしている今の状況では、やっぱり家賃が高いから考え直しませんか?とは言えなくなってしまった。 ちなみに朋美が食べていた雪見だいふくは溶けてフニャフニャになっていた。


そして次の日。 朋美は朝からソワソワして落ち着きがなかった。 本当に内見をしに行くのが楽しみなんだな。 だって朝4時から起きてメイクをしたり、不動産屋に着ていく衣装を選んだりしていたもんな。 まるで遠足に行く時の小学生みたいだ。 そんな朋美の姿を見て可愛いと思うのは俺だけじゃ無い筈。


どうにかソワソワする朋美を落ち着かせ、不動産屋が開店する時間に合わせてアパートを出た。


不動産屋に着くと、朋美は直ぐに昨夜検索した物件をスマホに出して店員さんに


「この物件を内見したいんです!今すぐ連れて行って下さい!!」


と詰め寄っていた。 店員さんは朋美の勢いに苦笑いを浮かべている。 でも、そんな朋美の要望に迅速に対応してくれた。 本当にすみませんウチの彼女が。


早速部屋の内見をした朋美は物凄くこの部屋を気に入り、俺を急かして契約する様に言ってきた。


俺は朋美に言われるまま部屋の契約を交わした。 朋美がこんなに喜んでいるんだ。 朋美の笑顔をこれからも見ていく為にも思い切ったぜ。


という事で、1ヶ月後この部屋に俺と朋美は引っ越す事になった。




ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


今回のお話はどうでしたか?


面白かったらコメントやレビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m
















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