第26話 居酒屋 その3

……じ~っ…。


「……何ですか人の事をじっと見て…気持ち悪いですね。雄二さんのお連れの方じゃなかったら顔をひっぱたいている所ですよ?」


朋美の事を凝視している天馬に朋美が物凄く嫌そうな顔で注意を促している。 確かに無言で人の事をじっと見る行為は失礼に値するぞ? ひっぱたかれても仕方ないから人の彼女を凝視するのは止めろ。


「いやね、こんなに綺麗で素敵な女性があの学生時代にモテる気配0の陰キャ雄二の彼女なんて何か信じられなくてつい。失礼しました」


天馬は朋美に深々と頭を下げて謝罪した。


「おい天馬、事実ではあるけど言い過ぎじゃね? しばくぞコラ?」


俺は苦笑いを浮かべながら天馬にツッコミを入れる。 こいつは昔から俺をそう言って弄ってくる。 まぁ本気で言っている訳じゃない事は知っているので気にはしていないんだけど。


すると天馬の言葉を聞いた朋美が物凄く不機嫌そうな顔をし


「本当に失礼ですよ。私と雄二さんがお付き合いしている事は事実ですよ。見て分かりませんか? 貴方目が悪いのですか? 良かったら良い眼科紹介しますけど? あっ、でも紹介するだけですので、眼科の予約や通院は自分1人で行って下さい。頼られると迷惑極まりないので」


朋美は俺に抱き付いた状態で、天馬の目を見ずにそう言い放った。


……朋美? 君、そんなに毒舌だった? 普段はもっと温厚で優しい筈じゃ無かった? もしかして来る前に酒でも呑んできた?


「……なぁ雄二、お前の彼女、滅茶苦茶言葉キツくないか? 俺、心折れそうなんだけど?」


安心しろ天馬。俺もそう思う。


「……えっと、そう言えば自己紹介がまだでしたね。俺の名前は下野天馬と言います。雄二とは高校生の時からのダチで、今も同じ会社の同じ課に勤めています。どうぞ宜しくお願いします」


「…………」


「あ、あれ?」


「…………」


「朋美? 天馬が自己紹介したんだから朋美も自己紹介しないと。 ね?」


「雄二さんがそう言うなら……。 水無月朋美です。余り宜しくされたくありませんが……宜しくお願いします」


「……なぁ雄二、何故俺はここまで敵対されているんだろうな?」


……初対面の相手をじっと凝視したからじゃないか? 普段の朋美なら社交辞令だとしても、もっと愛想が良い筈なんだが。 気になった俺は朋美に聞いてみる事にした。


「なぁ朋美。何でそんなに天馬の事を毛嫌いするんだ?」


すると朋美はむくれた顔をして


「だって……雄二さんの事をこの人が馬鹿にしたんですもん。 雄二さんは陰キャじゃないもん。超絶格好良くて素敵な男性だもん。私、雄二さんを馬鹿にする人は例え雄二さんの友達でも大嫌いだもん! それに人の事をじろじろ気持ち悪い目線で見てくるし……」


……成る程。朋美の機嫌が悪かったのは、天馬に俺が馬鹿にされたと受け取ったから。 それとやっぱり自分をじろじろと見られたからか。


「朋美、こいつとは昔からこんな感じだから気にしないで。 俺も気にしてないから。 それと、朋美の事をじろじろ見てきた事に関してはさっき天馬も謝ったんだから許してあげてよ」


「……雄二さんがそう言うなら…。許します。でも、次 雄二さんの悪口を言ったら……許しませんからね?」


「……はい。肝に銘じます」


朋美が笑顔(ただし目は笑っていない)で天馬にそう言うと、天馬は若干だが身体を震わせながらそう言って頷いた。 超絶可愛くて綺麗な女性に圧を掛けられながらそう言われたら誰だってこんな反応になると思う。 俺が天馬の立場だったら確実になっているだろうな。


「朋美、腹減ったろ? 何食べる? 好きな物頼みな。俺が奢るから」


俺は場の空気を変える為に朋美にそう話し掛けた。


「えっと、それじゃあ……雄二さんは何を食べられているんですか?」


「ん? 俺? 俺は若鶏の唐揚げと生ビールかな」


「俺はタコわさと生ビール」


「……貴方には聞いていませんので」


「……あっ、はい」


「雄二さんは本当に唐揚げが好きですね♡ じゃあ私も若鶏の唐揚げにします♡ そして生ビールを」


おっと、朋美には酒は厳禁だな。またあの状態になったら堪らない。今回は居酒屋内だし、天馬も一緒だから。


「と、朋美はソフトドリンクにしような!」


「え? 何でですか? 私もビール呑みたいです」


「い、いや、朋美が酔っぱらっている所を他の奴には見せたくないんだよ。 朋美のそんな姿は俺だけが知っていたいっていう感じで……」


「ゆ、雄二さんてば////// 私の酔った姿を他の人に見せたくないなんて////// 独占欲ですね////// 私、物凄く嬉しいです♡ 雄二さんの言葉に従います。 じゃあ私、コーラで」


よし。朋美の酔っ払いモードは回避出来た。


「別に水無月さんがビール呑んでも良くね?」


「天馬、お前は黙れ。口を閉じてろ」


「……酷くね? 口を閉じてろなんて親友に言う言葉か?」


「煩い。黙れ」


「……あっ、はい。黙ります」


天馬は俺の言葉を聞いた後、本当に黙って寂しそうに生ビールを呑んでいた。


それから約2時間程、3人で談笑(朋美は天馬とは余り話はしなかったが)し、居酒屋を出た。


「じゃあ天馬、俺は朋美を送っていくから此処で解散な」


「お~。お疲れ~。次もまた一緒に呑みに行こうぜ」


「ああ。またな」


天馬は千鳥足で駅の方に歩いて帰って行った。


「じゃあ俺達も帰りますか」


「はい♡ 帰りましょう♡ 今日は雄二さんと居酒屋に行けて楽しかったです♡ お邪魔虫が居なかったらもっと楽しかったと思いますけどね」


……天馬、とことん朋美に嫌われたな…。 人間、第一印象って本当に大切なんだなと思ってしまった夜だった。





ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


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