第12話 朋美さんの忘れ物と……

仕事が終わり、俺は電車に揺られてアパートへ帰宅した。


「ただいま~っと。て言ってはみたが当然の如く返答は無しっと。 此処で " おかえり " なんて言われたら軽くホラーだわ」


アパートの玄関を開けながらそんな独り言を呟く。 周りからみたら相当変な奴だろうな。


……ん? 何だか何時もと違う様な……。


部屋の中に入って、手に持っていたビジネスバッグを降ろした俺は、自分の部屋の中の微妙な違和感に気付いた。 そう。部屋の中の匂いが何時もと違う。 若干だけど甘く良い香りがフワッと漂っていたのだ。


……そうか。 朝までこの部屋に朋美さんが居たからだ。 この甘く良い香りは朋美さんの残り香なんだ。香りって結構長く残るもんなんだな。


……クンクン。 甘く何とも落ち着く香りだ……って! 朋美さんの残り香を嗅いでどうするんだ! 変態か!


そうだ。今日は仕事で疲れているからこんな思考回路になるんだ。 夕飯の前に風呂でも入って頭をさっぱりさせよう。 朝、朋美さんの存在に緊張してシャワーをさっとしか浴びれなかったからな。


俺は首元のネクタイを緩めながら脱衣場へ向かう。


そして脱衣場に入ってから俺は暫くの間フリーズする事になってしまった。 何故フリーズ? それは……


脱いだ服を入れる籠の中に絶対に俺の家にあってはいけない物があったからだ。


その絶対にあってはいけない物とは……1枚の布。白くて小さくて、可愛らしいデザインとフリルが施してある布。 その布が丸まって籠の中に入っていた。


そ、そう。それはあの…伝説の…女性物の…ショーツである。


な、何故に俺の家の洗濯籠の中に女性物のショーツが!? 多分だが、今朝急いで出勤の準備をしたからバッグに入れ忘れたんだろう。 ……OK。落ち着け、落ち着くんだ雄二。 お前はやれば出来る子だ。 落ち着け。落ち着いて目の前にある第1級特殊危険物を速やかにかつ的確に処理するんだ。


震える手で朋美さんのショーツを掴み、洗濯籠からサルベージする。 そして脱衣場から離脱。


……今俺の手の中には朋美さんのショーツがある。 これは紛れもない現実だ。


この時の俺はどうかしていたんだ。 つい魔が差してしまったんだ。 ついつい俺は手の中で丸まっている朋美さんのショーツを開けて見てしまった。


…めっちゃ小さいな。俺の履いているトランクスとは大違いだ。 こんなに小さくて大丈夫なの? ちゃんとお尻を隠せるのか? それにこの小さな輪っか。股の所で擦れて痛くならないのかな? デザインは可愛いな。フリルが流石付いていてお洒落な女性物の下着だ。 俺のトランクスなんて縞柄だけだぞ。 まぁ誰に見せる訳じゃ無いんだけどな。


その時 " ピンポーン! " と玄関のインターフォンが鳴った。 来客みたいだ。


そこで俺は重大なミスを犯してしまった。 つい


「は~い!」


と声を挙げてしまったんだ。


すると、俺の声に反応した来客者は玄関のドアを開けて部屋の中を覗き込み


「雄二さん? 朋美です。 無用心ですよ玄関の鍵開けたままは。 部屋の中に居たとしてもちゃんと鍵を閉めないと。泥棒さんが来ちゃいますよ? えっと、私、今朝脱衣場に忘れ物をしちゃいまして、それを取りに…………って雄二さん!?」


来客者は朋美さんだった。朋美さんは俺が自分のショーツをまじまじと見ている姿を見て、凄い勢いで部屋の中に入ってきて、俺の手の中からショーツを奪い取った。 そして滅茶苦茶顔を赤くして、涙目で


「~~~っ! 雄二さんのエッチ!////// あ~ん! 雄二さんに見られちゃったよぅ////// 余り可愛い下着じゃ無かったのにぃ//////」


「ご、ごめんなさい!! つい魔が差してしまったんです!!」


その場に勢い良く土下座する俺。 朋美さんは腰に手を当て(下着は握ったまま)前傾姿勢で


「幾ら魔が差したとはいえ、女性の下着をそんなまじまじと見ては駄目なんですよ! それは変態さんがする事です! メッ!です!」


とお説教されてしまった。 本当に申し訳ありませんでした!!


「次からはしないで下さいね! 女性の下着に興味があるのなら、ちゃんと言ってくれたら私が見せてあげますから!」


「すみませんでした!!」


ん? 朋美さん? 今何か変な発言しませんでしたか?




ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら★評価 🖤 コメント レビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m








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