第11話 飛び込み営業

「はぁぁぁぁぁ~」


俺は歩きながら大きな溜め息を吐いていた。


今の状況を説明すると、俺は今絶賛営業中(外回り)である。 何故大きな溜め息を吐いているかというとそれには大きな理由があるのだ。 その理由とは何ぞや? と聞かれると少し答えづらい。 そんな事いいからはよくそデカ溜め息の理由を喋れや! ですか。 ……分かりましたよ。言いますよ。言えばいいんでしょ……たく。


大きな溜め息の理由は、只今飛び込みの営業を掛けた結果5連敗中なんですわ。 話を聞いてくれたが断られた会社が2件。話すら聞いて貰えなかった(受付での門前払い)会社が3件。 心がへし折れてます。


……あの禿げ課長! 何が " 新規契約取ってくる迄帰ってくるな! " だよ!


こちとら入社してまだ3年目なんだよ! 新規契約なんて取れる訳ねーだろが! ベテランの営業マンじゃ無いんだからさ!


でも……このまま会社に帰ったら間違いなくあの禿げにいびられるのが目に見えている。 それに、やっぱり営業に出ているからには新規契約は取ってみたい。


とりあえず後1件だけ飛び込み営業を掛けて、駄目だったら昼飯食べに行こう。 もう少しで昼飯の時間だし。


俺は丁度目の前にある会社のビルの受付に行く為、ビルの入り口の自動ドアまで向かった。


大きそうな会社だし、ワンチャン俺の会社が扱うOA器具を契約してくれるかも知れない。



俺は自動ドアをくぐり抜け、受付がある場所へと行き、名刺入れから名刺を1枚取り出して受付に居る受付嬢さんに手渡し


「すみません。私○○株式会社の営業をしております神谷雄二と申す物です。 我が社はコピー機等のOA器具を扱っている会社でして、もし宜しければ御担当の方がいらっしゃいましたらお取り次ぎをお願いしたいのですが」


と自分の中でも過去一丁寧な言葉を使って営業を掛けてみた。


すると受付嬢さんはニコリと微笑みながら


「少々お待ち下さいませ。確認してみますので」


と言って電話を掛けてくれた。


良かった。とりあえず担当の方に取り次いでくれるみたいだな。 前3件は " 事前のアポイントがなければお取り次ぎ出来ません " ってすげなく断られちゃったからな。 この受付嬢さんは良い人だな。 お名前は……麻生田さんか。憶えておこう。


すると麻生田さんが


「お待たせ致しました。もう直ぐ担当の職員が参りますので、其方のソファーにお座りになってお待ち下さいませ」


と眩しい位の営業スマイルと共にそう言ってくれた。


よし! 幸先良いぞ! 


俺は指定されたソファーに座って担当の方が来るのを待つ事にした。



すると受付内にもう一人受付嬢さんがやってきた。 どうやら用事で受付を離れていたみたいだ。麻生田さんと賑やかに何かを話している。


……しかしこの会社の受付嬢さんは綺麗な方ばかりなんだな。 麻生田さんは綺麗と言うより可愛い系の女性だ。 で、今帰ってきた受付嬢さんは超絶綺麗な……ってあれ? あの受付嬢さん俺知ってる。 あの超絶綺麗でスタイル抜群な女性は……朋美さん!?


朋美さん、此処の会社の受付嬢さんだったのか! 


朋美さんは麻生田さんに俺が渡した名刺を見せて貰ったみたいで、かなり驚いた様な感じのリアクションを取っている。 そして此方を見てまたビックリしていた。 あっ、朋美さんが受付を出て俺の方へ小走りでやって来るぞ。


「ゆ、雄二さん! 何故此処に!?」


「えっと、たまたま飛び込み営業を掛けにこの会社に入ったんですよ。朋美さんこの会社の受付嬢さんだったんですね。ビックリしました。こんな所で朋美さんに会えるだなんて」


「私もビックリしました。所用を終わらせて受付に帰ってきたら雄二さんの名刺があったんで。雄二さん、営業職とは聞いていましたが、何を扱っているんですか?」


「うちの会社は主にコピー機等のOA器具を扱っている会社なんですよ」


「OA器具ですか……確か総務課のコピー機の調子が悪いって総務課の男性職員さんが言っていましたね。 雄二さん、もしかしたらチャンスかも知れませんよ?」


朋美さんから有力な情報をGET出来たぞ! 有難い!


「ありがとうございます朋美さん! それじゃあその有力情報を使わせて頂いても宜しいですか? そこを攻めてみますので」


「はい! どうぞ有効活用して下さい! 何なら私から聞いたと仰ってもらっても構いませんので! 雄二さんファイト!ですよ!」


「ありがとうございます! 俺頑張ります!」


そう言って朋美さんは受付内に戻っていった。


そして間もなくして担当の方がやって来たので、俺は朋美さんから得た情報を元に営業を掛けた。


結果……見事契約して頂く事に成功した。


俺は契約書を交わした後、担当の方と握手をして朋美さんが居る会社を後にした。


よし! これであの禿げに嫌みを言われなくて済むぞ! 大手を振って会社に帰れる!


これも全部朋美さんのお陰だな。 後で御礼のLINEを入れておこう。


俺は意気揚々と会社に向かって歩き出した。 俺の足取りは軽い。


……あっ、昼飯まだだった。 会社に戻る前に何処かで食べてから帰ろっと。 契約取れたからお祝いに大盤振る舞いしちゃおうかな~♪




ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら★評価 🖤 コメント レビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m
























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