第2話 あ、あのっ!

今日も元気に会社へ出勤だぁ! わぁい♪ 楽しいなぁ♪


ってそんな訳無いだろうが! 何が楽しくて禿げ課長の嫌みを聞きながら仕事をしないといけないんだよ!


ごほんごほん! ま、まぁそれはともかく。 今日も定時に帰ってアパートでネトフリ観ながらビールを飲むんだ♪ あっ、帰りに行きつけのスーパーに寄って唐揚げ(半額)を買って帰ろう。唐揚げビールに良く合うんだ♪


……と思った時間が俺にもありました。


今俺は絶賛残業中です。 オフィスには誰も居らず、節電の為オフィス内は電気が消えて、電気が点いているのは俺の座っているデスクのみ。


……あの禿げ! 定時間際になっていきなり


「神谷ぁ! 今日中にこの書類を仕上げて俺のデスクに提出しとけよ! 書類が終わるまで帰るなよ!」


とニヤニヤ笑いながら大量の書類を俺のデスクに置いていきやがった! しかも禿げはそのまま退社しやがった! 絶対あの禿げ俺の事嫌いだろ!? 俺が一体あの禿げに何をしたっていうんだよ!?


「手伝おうか?」


と同僚が言ってくれたけど、それは流石に悪いから


「大丈夫だよ。気持ちだけ受けとるよ。ありがとう。だからもう帰りなよ」


と笑顔で同僚のありがたい言葉を断り、申し訳無さそうに退社していく同僚を見送り現在に至る。


ふと時計を見ると、時計のデジタルは21:00を示していた。


……あの時格好付けて同僚の申し出を断ったけど、やっぱりお願いすれば良かった。 1人じゃ終わらねーよこの書類の束はよ!


結局全部終わり禿げのデスクに書類を提出し会社を出たのは終電間近の時間帯だった。


もうこの時間帯だと行きつけのスーパーは閉店している。 くそっ! 俺の唐揚げちゃんが! あの禿げ絶対に許さんぞ!


……はぁ。コンビニ寄ってカップラーメンでも買って帰ろう。 終電に乗るの久しぶりだよ……はぁ。



次の日出社すると、何だか禿げがイラついていた。 禿げがイラついている原因は何となく分かる。多分俺がちゃんと書類を提出していたからだろう。 多分だが、禿げの予想では俺が今日までに書類を提出出来ずに禿げに頭を下げる事を妄想していたに違いない。 ……ざまぁみろだ。


昨日手伝うと声を掛けてくれた同僚に缶コーヒーを驕り、お礼を言った後今日の業務に移った。


そして時間は定時に近づく。 流石に禿げは今日は何も言って来なかった。 俺は定時に退社し、何時もの様に最寄りの駅に行き電車を待っていた。 今日こそはスーパーで唐揚げ(半額)を買って、ビールを飲みながらネトフリを観るんだ!


そんな事を考えていると


「あ、あのっ!」


いきなり後から声を掛けられた。


「はい?」


振り向くとそこには超絶綺麗な美女が顔を赤く染めてモジモジしながら立っていた。


「いきなり声をお掛けして申し訳ありません!」


「は、はぁ」



……誰だこの超絶美女は? 俺にはこんな超絶綺麗な美女の知り合いは居ない筈なんだけど?


「先日は助けて頂いて本当にありがとうございました!」


「は、はぁ」


助けた? 俺が? 貴女を?


……全く記憶に無いんだけど? 何をしたんだ俺は?


いきなり言われた御礼の言葉に困惑していると


「も、もしかして憶えていらっしゃらない!?」


目の前の超絶綺麗な女性がショックを受けている。


「申し訳ありません。えっと……」


「私が此処のプラットホームから人に押されて線路に転落しそうになった時、貴方に助けて頂いたんです。憶えていませんか?」


……ホームから転落? 


顎に手を当てて暫し記憶を探っていると……あっ!思い出した!


「あっ、あの時の!」


「はい! 思い出して頂けましたか!」


「あれから大丈夫でしたか?」


「はい!お陰様で! あの時は本当にありがとうございました!」


女性は深々と俺に向かって頭を下げてきた。 ……頭を下げる仕草も超絶綺麗な女性だな。 って違うだろ!


「いやいや、頭を上げて下さい! 俺は大したことしていませんので! 当然の事をしただけですので!」


「謙虚なんですね。普通なら何かしら見返りを求める筈ですのに。物凄く好感が持てます。滅茶苦茶素敵です」


いやいや、見返りを求める方がおかしいと思うよ! ただホームから線路に落ちそうになった所を助けただけだよ!? 普通あの状況なら皆するでしょ!?


「貴方がそう言われても、それでは私の気が済みません。何か御礼をさせて下さいませ! 何がよろしいでしょうか!」


喰い気味に顔を俺に近付けてくる超絶綺麗な女性。


「本当に御礼は要りませんから! それより離れて下さい! 近い近い!」


止めて! それ以上その超絶綺麗な顔を近付けないで! 勘違いしちゃうから!


「あっ、す、すみません////// 私ったらはしたない////// つい興奮しちゃいました//////」


そう言って慌てて俺から《ほんの少しだけ距離を取る》超絶綺麗な女性。 ……心臓がはち切れんばかりにバクバクしている。 俺、女性に耐性が無いんだからいきなり近付くの止めて欲しい。 後、もう少し離れて下さい。 甘く良い香りが……って俺は変態か!


「お、御礼ならちゃんと今言葉を頂きましたから! もうそれで十分ですので!」


「駄目です! 絶対に御礼はさせて頂きます! さぁ、望みを仰って下さいませ!」


や、ヤバい。これは望みを言わないと離れてくれなさそうだ。 どうしたら…… !! これなら!!


「じゃあ……」


「何ですか!?」


「スーパーの唐揚げ(半額)を俺に買って下さい。それを俺への御礼にさせて下さい」


これでドン引いて俺から離れてくれる筈だ。





ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら★評価 🖤 コメント レビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m
























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