第3話 連絡先GET! です♡

「え、えっと……唐揚げですか?」


「はい。唐揚げです。俺は近所のスーパーの唐揚げが大好物なんです。 その唐揚げをつまみに缶ビールを飲みながらネトフリを観るのを1日の〆にしているんです。 だから俺への御礼はそのスーパーの唐揚げを奢って貰う事で良いですか?」


俺はそう言いながら彼女の顔を見た。


くっくっくっ。 俺の狙い通り彼女は可愛らしく顎に指を添えて何かを考える様な表情を見せている。 これは俺に対してドン引きしている証拠だ。


俺の予想では


" 分かりました。唐揚げですね。じゃあこれで唐揚げを買って下さい "


と言ってお金を渡してくるに違いない。 だって御礼にお願いしたのがスーパーの唐揚げだぜ? そりゃ誰でもドン引きするだろ? 間違いない。


そもそも俺は彼女に特別な事はしていない。 ただ、彼女があの時危険だったから助けただけの事。 それに対して御礼をして貰おう等と鼻毛程も考えていないのだ。 だから誰でもドン引きする様な事をお願いして手っ取り早く叶えて貰い、早く俺との繋がりを無くして俺の事を忘れて欲しいのだ。 それで良いじゃないか。


「分かりました。唐揚げですね」


ほら予想通りだ。 俺は唐揚げの代金を貰おうと彼女に向けて手を伸ばそうとした。 しかし、そこで俺の予想とは違う事が起こった。


「じゃあ一緒にそのスーパーに唐揚げを買いに行きましょう♪ 缶ビールも要りますね♪ いくつ必要ですか? あっ、そうだ! 唐揚げだけじゃ無くて、他のおかずも食べたいですよね♪ お台所貸して頂けたら私作りますよ♪ 良いですね♪ そうしましょう♪ じゃ早速スーパーに食材を買いに行きましょうね♪ あっ、ご心配無く。食材の代金は私が出しますから♪ あの、私もお夕飯ご一緒させて頂いてもよろしいでしょうか?」


彼女は目をキラキラさせながら俺に早口でそう言ってきた。 彼女の勢いに俺は思わず


「あっ、はい。構いませんよ」


と言ってしまった。


俺の言葉を聞いた彼女は本当に嬉しそうな顔をして


「やった♡ じゃあ早く行きましょう♡ よしっ、腕に寄りを掛けて作っちゃいますよ♡ 私、お料理には少しですが自信があるんです。期待して下さいね♪」


「あっ、はい。宜しくお願いします?」


「はい♪ さぁて、何作ろっかな~♪ 唐揚げとビールに合うおかずは何があるかなぁ~♪ 青椒肉絲なんてどうかなぁ~♪ あっ、お金有ったかな? 確かお財布に5万円入っていた筈だから足りるよね? あっ、スーパーって何処にあるんですか?」


「えっ? えっと、スーパーは此処から3駅先の所にありますが」


「分かりました♪ 丁度電車来ました♪ さぁ早く電車に乗りましょう♪ いざスーパーへLet's Goです♪」


彼女は鼻歌を歌いながら電車に乗り込んでいった。


そんな彼女の姿を見ながら呆然とする俺。 すると


「何しているんですか? 早く電車に乗らないと発車しちゃいますよ?」


彼女の俺を呼ぶ声を聞いてハッとした俺は、彼女を追って慌てて電車に乗り込んだ。


電車内で彼女が


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私の名前は水無月朋美みなつきともみと言います。24歳独身で彼氏募集中です」


「俺は神谷雄二と言います。25歳独身です」


「えっと、雄二さんは彼女は募集……してないんですか? あっ、すみません変な事聞いて」


「構いませんよ。 今は彼女は募集していませんよ。第一、俺みたいなモブに彼女なんて出来ませんよ」


「そんな事はありませんよ! 雄二さんがモブだなんてあり得ません!」


「ははっ。ありがとうございます。水無月さんにそう言って貰えたらお世辞でも嬉しいですよ」


「……朋美です」


「え?」


「私の事は朋美って呼んで下さい。私も雄二さんと呼ばせて頂きますから」


「じ、じゃあ……朋美さん」


「はい♪ 雄二さん♪」


俺達はそれからお互いの話で盛り上がった。 お互いの趣味の話や仕事の話や色々。


朋美さんは大手の会社で仕事をしているみたいで驚いてしまった。 俺みたいな中小企業勤務とは大違いだ。 趣味は映画鑑賞と料理だとの事。 俺も映画鑑賞(主にネトフリ)だから趣味は合いそうだな。


……いやいや、多分この関係は今回限りだろうから趣味が合うなんて思うのはおかしい話だ。何を期待しているんだろうな俺は……。 もしこれからも付き合いがあって友達になったとしても、それから先に発展する事は無いだろう。良くて良い人止まりで終わるんだろうな。


すると朋美さんが


「あ、あのっ! も、もし宜しければ、わ、わ、私と! れ、連絡先を、こ、交換してい、いた、頂けませんか!!」


と自分のスマホを俺に差し出してきた。 ……この展開にはびっくりだ。 まさかこんな超絶綺麗な女性とモブな俺が連絡先を交換する日が来ようとは思っていなかった。


「お、俺の連絡先なんかで良ければ是非」


「あ、ありがとうございます! 物凄く嬉しいです!」


俺と朋美さんはお互いの連絡先とSNSのIDを交換した。


「やりました! 雄二さんの連絡先GET! です! これからもっともっと雄二さんとの仲を深めて…いずれ…こ、恋人に……エヘヘ」


朋美さんが何かを呟いた気がしたが、俺の耳には聞こえていなかった。





ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら★評価 🖤 コメント レビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m


何だか積極的ですよね……彼女。










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