第3話

【魔法の用紙⠀】


私は高校3年生のA子、顔がかなり良い方で芸能の仕事をさせて貰ってる。


「あー、今日も仕事疲れた〜、何か甘い物でも買って帰ろ〜」


「あれ、こんな所にお店あったっけ?」


自宅に帰る途中、見知らぬお店を見つけ、立ち止まった。


(スイーツランド)


名前からして甘い物が売ってあるだろうが、店の見た目は映えそうにない感じだ。


「確か空き地だったような?まぁいいや、とりあえず入ってみよ」


店に入ると店内は綺麗で数種類のケーキが目の前に並べられている。


1つ違和感があるのは店内にかなり歳の見た目をしたおばあちゃんがいる。


「いらっしゃい」


おばあちゃんはにっこりとした笑顔でそう言った。


「いちごのショートケーキを1つ下さい」


はいはいっとショートケーキを取り出すおばあちゃん。


「お嬢ちゃん美人だね〜、芸能の人?」


「ありがとうございます!一応そんな感じですね」


「そうかいそうかい、若くていいね〜、そうだ! お嬢ちゃんにいい物を上げる」


「何ですか?」


おばあちゃんが取り出したのは1枚の真っ白な用紙


「この紙はね、魔法の紙でね、自分が描いたものをそのまんま、現物で取り出すことができるんだ」


何を言ってるだと思いつつ、ハハっと作り笑いをした。


「私が試してやろう」


そう言いおばあちゃんは飴玉を描いた、その飴玉はまるで本物のような上手さで描き、ボンッとスケッチブックから煙が経つと飴玉が実際に現れた。


私は驚いた


「凄いじゃろ、これをお嬢ちゃんに上げよう、もちろんタダで」


「こんなに凄い物、ほんとに貰っていいんですか?」


「えぇ、いいとも、欲しい物を好きなだけ描くといい」


「ありがとうございます!でも何で私なんかに?」


「お嬢ちゃんが美人だからじゃ」


よく分からないがタダで貰えるし、特別な物なので有難く受け取る事にした。


「ありがとうございます!」


私はお店を立ち去った


「ククク、馬鹿な小娘、あの魔法の紙は10回以上物を具現化すると、使用した者の姿をそのままあたしが奪えるような呪いをかけている、あたしも今の姿じゃ後も長くない、美人に生まれ変わるまで楽しみに待たせてもらう」


おばあちゃんは魔女のような笑い声を店内に響かせ店ごと姿を消して行った。


そんな事知る由もなく私は帰っていたのだが、途中で雨が降ってきた。


「最悪、雨降るなんて聞いてない」


私は傘を持っておらず、早く帰りたい一心で手に持った魔法の紙の事は気にせず全力疾走で家に帰った。


家に着いてから気付いた、魔法の紙はびしょびしょだった。


「あー、せっかく貰ったのにびしょびしょになっちゃった、まぁ私、美術の成績1だし欲しい物を描く技術なんて無いからいいや」


そう言って彼女は魔法の紙をクシャクシャに丸め、ゴミ箱に捨てた。


「あのおばあちゃん親切だったな〜、またいつかお礼を伝えに行こ」


私はショートケーキを頬張り至福を感じた。


もう魔法の紙なんて頭の隅にもない程に。

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