十一話 姫様の助けは必要か

 僕・裁ちバサミ・イスのローラー・姫様……そして金の鳥。このメンバーでダンジョン内の道をポテポテと歩いていた。


 ∀∞∂∷∑∪

 その鳥本当に大丈夫なのか? 


「確かに確かめる必要がある……よしお手!」


 僕は金色の鳥に向かって右手を差し出した。


 ‾‾"↙≡

 犬じゃなないんだから


「ワン!!」


 ”№¿“∧“·

 え


 ↴∀:⊇{Ω

 えぇ!? 


 ‥({{‥

 犬だった!? 


「いや違う……今のワンは顔だけおじさんのワンだ!」


 僕はそう言って右手の人差し指で前を差した。前には壁になっている顔だけおっさんがいた。


「また会ったなぁ! 美女!」


 また姫のことを……!! 


 ΡΨ!! Ο≈χ⁉

 いい加減女のメンバーを見せろ


「うるさい! 見せねーよ!」


「今度こそ壁にブチ迫る!」


「……おい! 金色の鳥! 何とかしろ!!」


 裁ちバサミカッターが金の鳥にそう指示したが、金の鳥は何も反応もしなかった……嫌われてる? 


 $ΩΩ:↴∈

 タンしおの指示なら聞くんじゃね!? 


「行くぞおらぁ!」


 顔だけおじさんはそう意気込んで僕達に迫って来た……


 ⊇⊇⊄⑸

 炎吐け! 


 ⊄∠∋√

 とにかく炎! 


「炎頼む!」


 僕がそう頼むと、金の鳥は顔だけのおじさんに向かって金色の炎を吐いた。


「ぎゃぁぁぁ!!」


 顔だけの奴は断末魔を上げて消滅し、一瞬で決着が着いた。


「強えぇ……」


「やるなゴールデンドリ!」


 僕が褒めると金の鳥は僕の頬に顔をスリスリして来た。顔をスリスリとか姫様にやってもらいたいのにぃ……


 "∷№Ο

 すっかり懐かれてるな


 ∃∞⁇≥

 こうなったらもう無敵じゃね? 


 ≮%∫≫

 名前決めようぜ


「あぁ……名前か」


「命名権はお前だなタンしお」


「いや早い。名前はお前が完全に味方だと分かってからだ」


「いやもう味方だろ!」


「ボスを倒すまでな」


 そう……今の顔だけの奴はボスじゃない……ダンジョンのボスを倒せばダンジョン内が揺れて機能を全て停止するらしいんだが……


「タンしお……何を考え込んでいるんだ?」


「別に……」


 ダンジョンに合った武器は持ち帰れるって見たことがあるから……この金の鳥も持ち帰れるはず。


 ≧∈∏-≡∥∞

 早く進めよ


「分かったよ……」


 とにかくこの金の鳥がボスじゃないことを祈る! 


 その後一時間、色んな敵に遭遇しては金の鳥の金のファイア一発で倒して終了を二十回くらい繰り返した。


 ∞≈(⑸%∠∫↙∑∂

 もうその金の鳥ボスだろ


 ⊗∧%∃%%∣

 だが敵に回すと厄介だ


 みんな色んな意味でこの金の鳥と戦いたくないって考えてる……このままじゃあ歩きまくってただ時間が過ぎて体力が危ない……やるなら早めに決めないと。


「お前ら! もしこの金の鳥が敵だったらなぁ! 不意打ちとかしてくるだろ!」


 いや……その不意打ちが防がれたらその後、人間側が警戒心マックスになってただ敵判定されるだけだし……こいつは気付かれるギリギリまで粘る奴なんだ多分……


「おい! あれ!!」


 裁ちバサミカッターが何かに気付いてと前を指差した。指差した先には金色の扉があった。


「あれは……」


「今度こそ武器がある部屋か?」


「よし、扉を開けて中を確認しよう」


 僕と裁ちバサミカッターは金色の扉を開けた。部屋の中には様々な武器が壁にかけられていた。


「やっと武器がある部屋か……」


「でも金の鳥がいるから要らなくね」


 僕は金の鳥の方を見ると、金色の鳥は大きく息を吸い始めていた。


「おい! 炎を吐く気だぞ!!」


 僕がそう言った瞬間、金色の鳥は高く飛んで四人に向かって金色の炎を吐いた。


「危ねえ!」


 四人全員金色の炎をかわした……! 


「おい! 何しやがる!」


 かわせたから良いが武器がある部屋だったから安心しまくって気を抜いていた……危なかった……! 


「ここも広いな……縦にも……」


 この部屋なら高さもあるし金の鳥も動きやすい……


「イスのローラー! 離れた位置で俺等を撮ってろ!」


 裁ちバサミカッターはイスのローラーにそう指示した。


「分かった!!」


「それがいいな……リスナーの声が聞こえなくなるけど」


「ってかタンしおが睨んだ通り金の鳥は味方じゃなかったな」


「やっぱ油断させて倒そうとしたんだろうね」


「油断させるってか逆じゃね? こいつは武器がある部屋に案内したから正々堂々な奴だろ」


「……正々堂々な奴って思うのも油断だ。お前ちゃんと攻撃しろよ」


「出来るが……お前こそ大丈夫なのかよ。結構懐かれてたし」


「分かってるよ。これはただ恨みが無い戦いなだけだ」


 金色の鳥に情が乗って攻撃出来なくなる奴が姫様に認められる筈がない! 


「絶対倒す!!」


 僕がそう意気込んだ瞬間、金の鳥が僕目掛けて金色の炎を吐いた。


「あんぶねぇ!」


 僕は迫りくる炎をかわした。


「どうするタンしお!」


「恐らくずっと高い位置に飛び続けるだろう……軽い武器を拾って投げるしかない!」


「じゃあ遠投作戦だな!」


「投げる時イスのローラーに当たらない様に気を付けろよ!」


 その後、十分くらい僕と裁ちバサミカッターは上にいる金の鳥に向かって物を投げたり金色の炎からよけたりを繰り返した。


「ゼェゼェ……」


 僕と裁ちバサミカッターは息切れていた。


「タンしお……武器を投げないで本来の使い方でやらないか……」


 裁ちバサミカッターの言う通り……武器を投げまくるのは脳筋すぎたな……


「ダンジョンには特殊な効果を持つ武器があるから、手間はかかるが高い所に攻撃出来る武器を探そう!」


 その後、十五分くらい僕と裁ちバサミカッターは高い所に攻撃出来そうな武器を探し、金色の炎からよけるを繰り返した。


「ハァ……ハァ……まじでねぇ……!! 高い敵に攻撃出来る武器が……!!」


 もう体力が……早くみつけないと……


「おい! 如意棒みたいなのあったぞ!」


「如意棒だって!?」


「伸びろ如意棒ーー!!」


 裁ちバサミカッターの掛け声で手にしている如意棒っぽい武器が金の鳥に向かって伸びた。


「グェェェ!!」


 棒に突かれた金の鳥は壁に激突し、落下し始めた。


「急にナイスーー!!」


「タンしおチャンスだ!」


 僕は近くにあった剣を手にした。


「行くぞ! ゴールデンドリ!!」


 僕は跳び、落下していく金色の鳥に向かって剣を振るって攻撃した。


「やったか!?」


 金色の鳥は地面に倒れた。


「この剣に刃が無かったから血は出ないか……ならば突き刺す!」


 倒れている金の鳥を突き刺そうと僕は跳んだが、金の鳥は勢い良く飛び上がり、再び高い位置に飛んでいった。


「もう一回頼む!」


「分かった! 頼む如意棒!」


 裁ちバサミカッターは再び金の鳥に棒をぶつけた。


「ナイス!」


 再び金の鳥は落下し始めた。


「……次で決める!」


 僕は金色の鳥に向かって走ってる途中、金色の鳥が大きく息を吸っていることに気が付いた。


「炎を吐く気か……!!」


 息を吐いた瞬間に横にずれてよける……! 


「コォォォォ!!」


 金色の鳥は大きく息を吐いたが、炎は吐かなかった……まさかフェイント!? 


「げっ……そう言えばこいつ賢い奴だった……」


「クェェェェ!!」


 金色の鳥は僕に向かって金色の炎を吐いた……


「やば……」


 え……? 死ぬの……? 


「あ……」


 僕は一瞬の間に死を感じた。何の走馬灯も見ることなく金色の炎に焼かれて命を落とすんだ……あぁぁぁ……


「……え?」


 突然、僕から見て右横から消防車のホースから放たれた様に噴射された水が、僕目掛けて放たれている金色の炎と激突した。


「水!!?」


 金色の鳥は炎を吐くのを止めた。横から放たれた水によって僕は金色の炎が当たらずに済んだが……


「下がれ椛!!」


 え……


「この声は姫様!?」


「お前もだ!!」


 姫様はそう叫んで裁ちバサミカッターを指差した……って姫様僕の名前っ……! イスのローラーも撮影続けているしなにより……姫様に助けられてしまったーー……!!

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