十話 ゴールデンドリ

 批判的なコメントが多い……あとブラック林道を探したすぎて他アカの名前とか聞いても全然聞き取れない……とにかく落ち着け! とりあえず今ここに姫様がいることは言わないよう心掛けよう! 


「タンしおです! 早速進みまーす!」


 §⁉§÷¢‥¢€√

 進みまーすじゃない! 


「んえ?」


 ……‡÷⁉£[❵

 とぼけるな! 


 ℉€℉°»¢·……

 何をそんなに生き急ぐ! 


「行き急ぐか」


 姫様はダンジョン調査隊の男達に囲まれている……姫様が取られる前に早く仕掛けるしかないんだ! 


「生き急いでて悪いかよ! ちなみに相方は裁ちバサミカッター! 撮影はイスのローラー!」


 ωΕΕμςνςΞ

 なんて? 



 数十分後、僕達はただの洞窟の様な道を歩いていた所に一体の小さめで人型のモンスターと出くわした。


「他の配信者で見たがこいつの弱点は股間だ!」


「股間弱点とかみんなそうだろ!」


 僕が初めてボケたら裁ちバサミカッターがツッコんだ。


 ⁈℃¥§⁈”’‾¶

 他の配信者で見たが、そいつの弱点は背中だ


 Ⅾ≧≧∈≪±∏√∌∞

 背中の赤い部分! 


 やっぱ配信しといて良かったな。リアルタイムで攻略法が分かることがあるからな! 


「まるでゲームだな! も……タンしお」


 おい……名前……! 


「弱点っつっても武器欲しいな……無いからここは一旦スルー……」


 いや……逃げたら姫様が危ない! とか一瞬思ったが姫様なら大丈夫か。


「武器見つけるまでモンスターはスルーするぞ!」


「分かった! タンしお!」


 僕と裁ちバサミカッターはモンスターをスルーした。スルーした瞬間に後ろを見ると、撮影しているイスのローラーと姫様も同じくスルーした。


 ℃』Σ”℃∧❵

 逃げんのかよ


 ‾‾%∈※∈⁉∏‾

 余計な戦いはしない方がいいな


 §#∌

 それで良い


 一回アレについて聞いてみるか。


「みんな、喋れるモンスターっている?」


 €……Ⅾ’“=“=℉

 いるわけねぇだろ


 ^∞¢2Σ∞[*‥

 見たことないし聞いたこともない


 喋れる奴がいたら姫様のこと言ってくる危険があるからな……



 数分後、僕は一体の人の顔だけのモンスターに出くわした。


「お前等!! 四人パーティーか!!」


 そのモンスターはおっさん声で急に話しかけてきた。しかもすぐに四人パーティーとかバラされたーー! 


 ❵√』※※1

 さっき喋らないモンスターの話をしたばかりなのに


「うおいおい……パーティーに美しい女性を連れて来やがって!」


「え」


「だから美しい女性を連れて来やがってーー!!」


 んああ! こんな時に普通に美しい女性とか言ってくるやつと出くわしてしまったー!! あああああーー!! 


 %’&∶℃・

 美しい女性!? 


 ⊕∏∇∏∧∶∝

 クソが


 ≯ΝΘΑσΝΑ

 お前ーー! 


「うるさい黙れ!」


 くそ……正体がバレることだけは避けねば……! 


「逃げるなら美しい女性を置いて行け! 食ってやる!」


「顔だけしかねぇのに食ってやるは意味分からないー!」


「うるせー! これでどうだ!」


 顔だけのやつが大きくなって通る道の隙間を埋めて壁となった……


「行き止まりにブチ当たるまで迫る!」


「どうするもみ……タンしお!!」


「お前はもう黙ってろ!」


 顔だけのやつは僕達に向かって迫り始めた。


 μνΦξμΨςμ

 オワタ


 ⊕⊕∆∏∏≮%∇

 せめて武器あれば


 ∅∏⊗⊗√∑

 無抵抗のまま終わるなよ


 もしかしたら武器がなくてもいける……? 


「裁ちバサミカッター! 同時に両目を殴るぞ! 僕は右目を殴る!」


「分かった!」


 僕と裁ちバサミカッターは同時に飛んで顔だけのやつの両目をそれぞれ一回パンチした。


「喰らえ眼精疲労パンチ!」


「……効かんな」


「なんだと!?」


「クソが! 目を潰せば良いんじゃねぇのかよ!」


 どうする……後ろに逃げたら姫様がこのモンスターを倒して不合格認定される可能性はある……! 


「タンしお! 魔法は使えねぇのかよ!」


「ま……魔法か……」


 ΗΖμΟυΙυΟ

 魔法使えるのか!? 


 僕が光の魔法を使ったことがあるって話は二人から聞いた……だが記憶を失ったから魔法の出し方が……


「魔法はまだ無理だ」


「まじか」


 ΕΝΑςχΑΠ

 もし本当に魔法を使えるならかなり凄いが


 1±νν❵Φ1

 魔法を伝授する人に会ったってことか!? 


 と……とにかく光の魔法を使えたとしても意味ないだろう。目にパンチしても効かないなら光はもっと効かないだろうし……


「逃げるぞ! 裁ちバサミカッター!」


「後ろにか!?」


 後ろに逃げるだけで不合格にならないと思う……! 


「ちっ、覚えとけよ! 顔だけ野郎!」


 僕と裁ちバサミカッターは振り向いて走り始めた。



 僕らは顔だけの奴からまくまで逃げた。その間に姫様は顔だけの奴に一切手を出さなかった。


「ハァ……ハァ……とにかく武器だ……」


「なぁタンしお……そもそも武器はあんのか……?」


 ∝∆^⊗⊕=∆

 光ってる部屋によく武器があるって情報はある


「へぇ〜……」


「光る部屋を見つけないとな!」


 裁ちバサミカッターはそう言って立ち上がると、驚きの表情になって何かを指差した。


「扉!! 扉があった! あそこに」


 確かにシンプルな洞窟感には似合わない金色の扉だ! 


「金色ってことはまさか!? 武器がある部屋か!? 行くぞタンしお!!」


 僕と裁ちバサミカッターは金色の扉を開けた。扉の向こうには何もなく、壁や床がただ金色だった。


「何もない!?」


「誰かに取られたのか……?」


 ∵∧≯‰∣∞

 上!! 


「上……?」


 僕と裁ちバサミカッターは連発し始めたリスナーの『上』を聞いて上を見ると、大人一人乗れそうな大きさで全身金色の鳥が飛んでいた。


「ここは武器がある部屋じゃない……ボス部屋だ!!」


「なんだと!?」


「戻るぞ!」


 僕は裁ちバサミカッターに向かってそう言ったが、扉は重さで勝手に閉まっていた。


「もう一度開けるぞ!」


 僕と裁ちバサミカッターは扉を開けようとしたが、金色の鳥は大きく息を吸い始めた。


「扉から離れるぞ! イスのローラーもだ!」


 金色の鳥は僕と裁ちバサミカッターに向かって金色の炎を勢い良く吐いた。


「危ねえ!」


「ハァ……大丈夫かイスのローラー……!」


 僕と裁ちバサミカッターは吐かれた炎をよけた。イスのローラーと姫様が無事なことも確認した。


 ∏∌∈⊃ⁿ∝∶

 武器がある部屋は金色なパターンな筈だが


「ゴールデンドリしかいないが……」


「さっきから武器なんて一つも無いぞ!」


「タンしお上!!」


 イスのローラーが上を指差してそう叫んだその瞬間、金色の鳥が僕の目の前に降り立った。


「顔近っ!」


 め……めっちゃ目合ってるし……なんか知らないけどこういう時何故か下手に動けない……


「顔が迫っ――」


 金色の鳥が顔を僕の顔近付けてスリスリして来た……


 ΜωΑΑΞψΑ

 スリスリしてる


「クェーー!!」


 どうしたんだ……


「お前! タンしおから離れろ!!」


 裁ちバサミカッターが金色の鳥を殴りかかろうと右拳を振り上げた。


「待て裁ちバサミカッター……」


 裁ちバサミカッターは足を止めた。


「大丈夫かよタンしお!」


 ・√Θ2√ξ

 検索してたらモンスターが武器になるって情報があった! 


「モンスターが武器だとぉ!?」


「……なるほどそういうことか。よしよし」


 僕は金色の鳥の頭を右手でなでなでと撫でた。


「こいつ良いやつだ」


 ξηκΙςφ

 まじか


 ⊗=χ⊕ρ

 じゃあつまりこいつはボスじゃなくて武器か


「モンスターに変化出来る武器ってことかな?」


 モンスターになれる武器なのか……それともこいつが良いやつを演じているボスか……


「クエー!」


 金色の鳥は再び僕の顔の頬に頭でスリスリした……さすがに金色の鳥が芝居してるのは考えすぎか。


「懐いてくれた所で金色の鳥よ! ついて来い!」


 僕は部屋の出口に向かって歩くと、金色の鳥が後を追うように歩き始めた。

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