「そういや、あいつ結局なんだったんだ? まじで意味わからねぇんだけど」


 弓波が歩きながら、思い出したようにそう言った。


「俺も、いまいち意味がよく分かっていない。一体なんだったんだ、あいつは。

いきなり現れたよな」


 水越も、弓波に同意しながらそう言った。


「幻覚じゃなかったよな? 一応聞くけど。水越、お前の目にも見えてただろ?」


 弓波が不安げに、水越にそう尋ねた。


「あぁ……多分、幻覚じゃなかったと思う。俺の目にもはっきり見えてたし」


 水越も、弓波の目を見ながらしっかりとそう言っていた。


「なんか変な服着てたし……あれって、一般の人が着る服じゃないよな?」


 弓波は立ち止まり、道路を見つめながらそう言った。


「少なくとも、一般の人が着る服ではないだろうな。一般の人があんな服を着ている

ところを、俺は見たことがない」


 水越は、地面を見つめている弓波を訝しげに見ながらそう言った。


「……どうしたんだよ弓波」

「……寒い」

「は? 寒いってどういうことだ」


 水越は、全く意味がわからなかった。なんで寒いんだろう。


「突然の寒暖差で、やられたのか?」


 水越には、それしか思いつかなかった。そういえば、少し寒気を感じる気もする。


「とりあえず、帰ろう。……俺も少し、寒気を感じてるんだ」

「えっ、水越もそうなのか? おそろいだな、はは……」


 水越は、弓波に帰ろうと促し、自分も体調に異変があることを告白した。

 弓波は、元気のない声で水越の異変に同意し、踵をかえして家に直行した。


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