大掃除

「おい、大掃除は終わったのか」


 水越は、弓波にそう声を掛ける。

しかし、弓波はダラダラとスマホを見ていた。


「何してるんだ、もうすぐ大晦日なんだぞ」


 水越はため息をつき、ダラダラスマホを見ている弓波のそばに立ち

そう言い放つ。


「え〜、どうせ大晦日には実家に帰るんだし、この家綺麗にしても意味ないじゃん。水越も一緒にダラダラしようぜ」


 弓波はスマホから目を離し、だらしない笑顔で言った。


「そんなこと言っても、実家から帰ってきてこの有様ありさまだったら、

ガッカリするだろう。大掃除をしたら、部屋も心もスッキリして、良い気分で

実家に帰省できるんじゃないのか?」


 水越は般若のような形相で弓波を叱りつける。


「えー……だって、掃除とかめんどくさいし……一人じゃやる気出ないし……」


 弓波はそうぶつぶつ言いながらも、立ち上がって、掃除をする体勢に

入った。般若のような形相で叱られては仕方がない。


「めんどくさいけど、やりますか。水越がうるさいし」


 弓波は小さく伸びをした。


「なんだその言い草は。大体、お前はいっつも––––」


 弓波の投げやりな態度に、水越は苛立ち、弓波への小言を始める。


「はいはい! 俺が悪かったから! どうか怒りを鎮めて水越様〜!」


 弓波は嫌な展開だと言わんばかりに水越の怒りを鎮めようとする。


「……はぁ。お前を見てたら、怒るのがバカバカしくなってきた。

二人で、掃除をしよう。それなら、文句ないだろ?」


 水越は呆れ、脱力しながら言った。


「やった! 二人ならやる気が出そう!」

「調子がいいな、全くお前は……」


 掃除を二人でやろうと水越が言った瞬間、弓波はたちまち元気になった。

そんな弓波を、呆れながらも苦笑しながら水越は見守った。


 その後、水越と弓波は協力して大掃除をしたのだった。

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