人間関係

 俺の人間関係はかなり希薄だ。親族との付き合いはもうない。兄弟がいたけど全く連絡を取っていない。両親はもう亡くなっているのだが、親戚付き合いがないから冠婚葬祭もなくなった。誰がどうなっても俺に連絡が来ることはない。そもそも親戚自体がもろくでもない人ばかりで、二度と関わりたくない感じだ。いい人だと思うのは母方の親戚の数人のみだが、その人たちももう故人だ。生まれた時から身近に親しい人が誰もいなかった。俺が人を拒絶しているわけではなく、父方の親族が客観的に見てもろくでなしなのは間違いないのだが、こういう風に親族と疎遠ないのは珍しいかもしれない。


 学生時代は友達もいたけど、卒業してからはほぼ連絡を取っておらず音信不通になっている。女性と付き合ったことはあるけど、本当に続かない。そもそも、俺自身にその人との付き合いを長く続けたいというモチベーションがない。誰かと一緒にいると違和感を感じてしまって、すぐに人を嫌いになる。いい人だとわかっていても耐えられない。家庭を持ちたい、子どもが欲しいというのもない。女性といても全然楽しくない。正直言って一度も楽しいと思ったことがない。女性には申し訳ないけど、大体話が合わない。若い頃からずっとそうだった。相手からも「何のために一緒にいるかわからない」と、何度も言われたことがある。


 自分の場合で特徴的なのは年上の人と相性がいいことだろう。相手が年上だと気を遣って話すから、失礼なことを言わないで済む。だから、あまり失敗しないし、一緒にいて楽だ。これが同世代だとついつい思ったことを口にしてしまい、相手に嫌われる。


 年上に気を遣うというのは生まれつきで、気を付けようと思ったことはない。学生時代、先輩に嫌われたことはあまりない。長いものには巻かれるタイプで年長の人には自然と合わせられるから、今まで上司にも嫌われたことがない。だから流行りのパワハラに遭ったことはほぼない。一方で同年代から見ると、鼻につく目障りなやつに見えるようで、かなりの嫌がらせや陰口があった。そのせいで何回も転職したりしたのだが、何とかサラリーマン生活を長く続けて来られた。


 周囲に嫌われ過ぎて、あんな風に言われてよく怒らないね、と言われたこともあるし、同僚たちから無視されることもあったが、三十くらいになると人の批判や中傷なんてどうでもいいと思うようになった。


 言われたら言い返すし、やられたらやり返す。苦手な人とは関わらない。しかし、こういう強烈な性格だから、人に謝るということができない。仕事で表面的に謝ることはできても、プライベートでは謝ることも、許すこともできないから人とは喧嘩別れして終わるか、疎遠になってしまう。それで友達ゼロになってしまったのだが、全然寂しくはない。俺は俺で忙しい。やりたいことがたくさんある。


 小説や映画などで孤独な少年がひと夏の出会いで(いい方向に)大きく変わる、成長するなんていう話があるけど、ああいうのは俺の人生にはなかった。仕事の面で出会ってよかったと思う人はもちろんいるけど、精神的な面では一人もいないと言っていい。俺みたいな人間は長く生きていても、何千人と出会っても何も変わらない。他人から影響されることがほぼない。


 しかし、それだけだとこのエッセイを読んでいてつまらないだろうと思うから、ちょっとだけ本当のことを書くことにする。俺の場合、ネットで知り合った人と今も一緒にいる。


 相手はかなり年下で親子くらいに離れている。年下だから気を遣うし、ようやく相手を思いやれるようになったと思う。その人に出会ったお陰で、俺もやっと成長できたみたいだ。ただし、人が変わったら、また元に戻ってしまうだろうけど。


 その人は俺にとってのソウルメイトみたいな感じだ。相手がぐいぐい来るタイプで、喧嘩してもあっちから仲直りしようとしてくれるお陰で何とか続いている。その人は、小説「自〇サークル」に書いてる男子中学生ではないし、当然未成年ではない。


 こんなことを書くと、読んでいてがっかりする人がいるかもしれない。しかし、発達障害の人は孤独でなくてはいけないということはない。世の中、自分には合う人がいないと思っている人もいるだろうけど、世界には五十億人もネットユーザーがいるのだから、どこかには必ずいるはずだ。ソーシャルメディアや友達作りアプリ、トークアプリなんかを毎日やっていれば、そのうち誰かにたどり着けると思う。


 失敗しても、恥をかいても、めげずに繰り返して行く。

 そしたら、たぶんその先に何かが待っているに違いない。



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