第47話「衝撃の事実!幹部ベイクの媒体」

「そして、今日の最下位は…ごめんなさい、おとめ座のあなたです!予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうかも!特に落としものには要注意!!!」


 勇者一家のリビングにあるテレビから、12星座占いの結果が流れる。その占いをBGM代わりに勇者シュトーレンは朝食の盛り付けを行いつつ、丁度リビングに入って来た父親に朝食を並べるように促す。テレビは占いのコーナーが終わり、今度はニュースが始まった。


「おはようございます。「めざめのテレビ」本日朝7時台の第一報です。8月に埼玉さいたま瀬戌せいぬ市で発生した弁護士変死事件、7月に山口やまぐち下関しものせき市で発生したブリーダー変死事件などの事件に関与したとして、警視庁は昨夜、5月より行方が分からなくなっている今川武雄いまがわたけお氏の長男を全国に指名手配しました。指名手配となったのは…」


「ピッ…」


 長女が作った朝食のエッグトーストを並べながら、テレビに目を向けた大勇者は、「今川武夫の長男」という言葉を聞くや否や、テレビのリモコンの電源ボタンを押してしまった。

「実の息子に手ェ出した奴のツラなんて見たら、食欲落ちるわ!!!」

 雪斗の父親は一晩の間で「殺人事件の指名手配犯」と全国に知れ渡ってしまい、ガレットの心に雪斗の父親及び今川家に対する不快感が募る。

「どーせ、今川武夫は報道陣の前で「私には関係のない事です」とか罵るんだろ!!!さわやかな朝が台無しだぜ…ったく…」


「ドタドタドタ…」


 今度は大勇者のため息をかき消すかのように、階段を騒がしく下りる音が響く。


「ガチャッ…」


 階段を下りる音が止むと、今度はリビングのドアが開き、そこから次女のマリアがサン・ジェルマン学園の制服姿で入って来た。

「占い…おとめ座、何位だった?」

「えっと、確かおとめ座は…」

「めざめのテレビ」の占いコーナー「今日の12星座カウントダウン」はマリアのお気に入りで、姉のシュトーレンもそれを知っている。結果の善し悪しはどうあれ、占い結果を伝えようとするが…


「堂々の第1位!思わぬ拾い物をするでしょう…ってさ。」


 長女のセリフを遮るかの如く、父親がウソの結果を述べる。

「2日連続で1位って…ちょっと違和感あるけど、ラッキー♪」

 何の疑いもなく鵜呑みにしてしまうのが、いかにも彼女らしい。

「それで、トルテお兄ちゃんは?」

「この間作ったクリームチーズの様子を見に、カフェの厨房に行ったわよ。アランは?」

「昨日の卒検で、自分だけ通らなかったショックで…」

「暫く立ち直れそうになさそうね…」

 妹の説明を聞いたシュトーレンは、「はぁ」とため息をつく。


 昨日、アランは瀬戌教習所にて、普通自動車運転免許(オートマチック車限定)の卒業検定があり、序盤は順調な出だしだったのだが、信号のない横断歩道の前で歩行者の横断を済ませ、「さぁ、発進!」と言ったところで、横断者の1人がUターンしてしまったのである。助手席に座っていた教官が補助ブレーキを踏み、横断者は再び横断したが、アランはこれが原因で卒業検定を通過できなかったのだった。不合格の原因が自身の運転ミスではなく、歩行者の都合という事もあり、そのショックははるかに大きいのだった。


 子供達と朝食をとり、長女と娘婿に見送られながら、バイクに乗って次女と学校へ向かう…端から見れば何の変哲もない日常の一コマだが、大勇者の表情はどことなく険しい。いつ、どこで現れるかもしれないカオスイーツに、媒体ばいたいが指名手配犯の疑いがある幹部の1人に、未だに行方の分からない一悟いちごの姉の一華いちかと、明日香あすかの父…年の瀬迫る師走の空の下、大勇者ガレットは後ろに次女を乗せながら高等部へ続く坂道を、バイクで上る。




 ブラックビターの方はというと、双子の幹部・ピサンとゴレンの媒体であった2匹の子ぎつねは、瀬戌市の保健所からの報告によると、埋め込まれていたマイクロチップから蔵王ざおうのキツネ村で行方不明になった2匹の子ぎつねであることが判明し、近いうちに2匹は蔵王へ帰ることが決まった。


 8月の瀬戌市が沈黙に包まれた事件以降、ブラックビターの幹部たちの目立った動きは少ない。まだ誰も近寄らない廃デパートをアジトにしてはいるようだが、ニョニャはあの事件以降、アジトどころか瀬戌市から離れており、ブラックビターが絡む事件に関与しているかどうかも分かっていない。

 ヒタムは焼け落ちた廃デパート向かいの廃屋から灰になった状態で発見され、警察や消防からは廃屋に残された物の一部としか判断されなかった。「混沌こんとんの魔女」としては実に哀れな最期である。ベイクは混沌の依り代よりしろと一緒にいる事が多いのだが、カオスイーツが現れる事件の時は混沌の依り代が1人だけ現れるようで、ベイクの単独行動は増えているのか、減っているのかよくわからない。

「ここも静かになったものだ…けだもの臭さも、いざいなくなると寂しいものだな…」

 混沌の依り代が完全体のカオスとなるには、もう少し時間が必要で、勇者のいる場所へカオスイーツを送り込む以外は、殆ど廃デパートの地下で負の感情を蓄えている。


 ベイクが最初に混沌の依り代と出会ったときは、もの凄い量の負の感情を察していたものの、わざわざ自分がカオスイーツにするまでもないと判断していた。しかし、ヒタムの失態の際に再開した時には完全に「この男こそ混沌の依り代だ」と思う程の負の感情を携えており、ベイクはその圧倒的な負の感情に感銘を受けると、そのまま彼に忠誠を誓う事にした。なぜ彼があれほどの負の感情を手にしたのかは、ベイクもよくはわかっていない。媒体の記憶の片隅に似たような経緯があったような気もするが、それを思い出そうとする事も、ベイクは考える気にならなかった。「自分さえよければそれでいい」…媒体の頃から変わらぬその気持ちが、今のベイクを保ち続けているからなのである。


「混沌の依り代殿のお陰で、あの忌々しい勇者の情報が容易く手に入る…勇者のせいで家を追われ、家族を失い、仕事も失った…そうか…この「勇者に対する恨み」こそが…」


 混沌の依り代から送り込まれる勇者の情報を得たベイクは、まるで勝ち誇ったような表情を浮かべ、廃デパートの地下から地上階へ顔を出し、フッと音を立てながらどこかへ瞬間移動した。




 ベイクが瞬間移動した先は、カフェ「ルーヴル」の厨房だった。今日はカフェが休みのようで、店には誰もいないようだが、忌々しい勇者の残り香にベイクは不快感を示す。しかし、用事を済ませるためには、ここでのこのことアジトに戻るわけにはいかない。ベイクは業務用冷蔵庫の扉を開け、そこに1ホールのレアチーズケーキに注目する。

「これが勇者が作った洋菓子か…」

 そう呟くと、彼は鎧の中から1本の小瓶を取り出した。小瓶の中には紫色の液体が入っている。ベイクはその小瓶の蓋を開けると、小瓶の中の液体をレアチーズケーキに振りかけた。液体は白いチーズの上にかかると、そのままチーズに溶け込み、異物が混入した形跡すら目視でもニオイでも確認できない、いたって普通のレアチーズケーキの姿のままを保っている。


「今日が貴様の最後の日だ!!!カルマン・ガレット・ブラーヴ・シュヴァリエ…」


 小瓶の中身を全てふりかけた黒い鎧の男は、急いで液体をかけたレアチーズケーキを冷蔵庫へ戻すと、再びフッと音を立て、ブラックビターのアジトへと戻った。




 ………




 やがて夕方となり、僧侶の住むマンションに出かけていたアラン、1週間分の買い物にでかけていた勇者シュトーレンとトルテ、学校から戻って来た大勇者ガレットとマリアの順に、一家は帰宅した。暫くしてみるく、瑞希みずき、ユキ、玉菜たまな、明日香、勇者クラフティが勇者一家の家に入る。入ってきた女性たちはそれぞれ毛糸が入った紙袋を持っている。

「それで、ここをこうやって…」

 2本の毛糸用の編針で毛糸を編んでいく女勇者の手先を、みるく達はじっと見つめる。クリスマスが近いからか、みるく達はそれぞれプレゼント用に手編みのものを贈ろうとしているようだ。

「ひゃぁー…みるくも手際いいよねぇ…僕よりも早い…」

「そ、そりゃあ…いっくんへ贈るプレゼントですから…」

 みるくのマフラーを編むスピードに、ユキは驚くしかなかった。ユキもみるくと同時期に雪斗ゆきとのためにマフラーを編み始めたのだが、上級者向けの編み方に挑戦しているようで、あっという間にみるくと差がついてしまった。編み目を見落とすこともしょっちゅうで、そのたびにユキはシュトーレンからお小言を受けたり、明日香に強制的に補助されたりもしている。明日香はここなからレース編み、祖母からかぎ針編みをそれぞれ教わっているのだが、今回はセーターを編むらしく、カフェでの仕事と学校の課題の合間に袖の部分だけは、編み終えたようだ。玉菜と瑞希は共に手袋を編んでいるのだが、同じ紫色の毛糸を使っているせいか、周囲はお互い用のプレゼントだと察しているようだ。


「はーい!トルテお兄ちゃんの手作りチーズを使った、お姉ちゃんの力作レアチーズケーキ、さっそく切り分けたよー♪」

 編み物で盛り上がる中、マリアが厨房で冷やしてあったレアチーズケーキを、8等分に切り分けて持ってきた。ケーキはガレットとマリアが学校へ行ってすぐに作り始めたようで、作った女勇者の表情は誇らしげだ。

「おっ…美味そう!!!」

「おにぃ達の分なんだから、親父は食べちゃダメよ!」

 大勇者は次女が持っているトレーにある8つのレアチーズケーキを見るや否や、思わず手を伸ばそうとするが、それを長女が窘めた。

「えぇー、私も食べられないの?」

「夜用のがキッチンの冷蔵庫に冷やしてあるから、安心なさい。」

 女勇者はそう言いながら、みるく達にチーズケーキを配ると、リビングを出て、インターホンが鳴り響く玄関へと向かった。


「あ…あの…大勇者様…よければ、私の分食べますか?」

「いいのか!?」

 シュトーレンがリビングを出てすぐ、瑞希とみるくが、ガレットにチーズケーキをお皿ごと差し出した。

「このあと、私とみるくは歯医者の予約が入ってますので…」

「瑞希さん、親知らずが見つかって…あたしは検査だけなんですけど。」

 それを見たユキは何を思い出したのか、咄嗟に手付かずのチーズケーキを載せたお皿をマリアに差し出した。

「雪斗、この間口内炎できちゃったから、よかったらマリーも食べなよ。」

「いいの?ユキなら影響ないんじゃ…」

「僕が食べたもの、雪斗にも影響でちゃうんだ…だから、食べたくても食べられなくって…」

 少しばかり悲しい表情を浮かべるユキに、マリアは少し困った顔をしながらも、ケーキを受け取った。


 インターホンを押したのはブランシュ卿夫人だったようで、女勇者は玄関先で大賢者と世間話に花を開かせている。しばらくしてブランシュ卿夫人と一緒にリビングへ向かうと…


「ガチャッ…」


 そこにいたのはみるく、ユキ、瑞希、明日香、ガレットがテーブルを囲んでたたずんでいるが、突然の出来事に戸惑っている様子だ。玉菜、マリア、クラフティの3人は身体が縮んでおり、玉菜とマリアは7歳ほど、クラフティは14歳ほどの年齢にそれぞれ若返っていた。特に玉菜とマリアは着ていた制服と部屋着がぶかぶかになるほど縮んでしまっている。その様子を見たブランシュ卿夫人は、幼馴染の姿を見るや否や、彼の左頬をつねり上げる。

「よぉ見たら、カルマンも若返っとるやないのっ!!!こんな肌がピチピチの41歳、おらへん!!!!!」

「でも…どうして…アタシがトルテと味見したときは何ともなかったのに…」

 戸惑う妹分に、14歳の姿のクラフティは重い口を開く。

「カオスだ…俺が食べたケーキの中に、こんなのが入ってた…」

 クラフティは「ぺっ」という音を立てながら、金属状の輪っかを吐き出した。

「セーラも、トルテも…厨房に入る時は指輪をはめないよな?」

「当り前よ!!!衛生上、食品が絡む仕事場で指輪なんて言語道断!」

 シュトーレンの言葉に、クラフティは「そうだよな」と言わんばかりに頷いた。


 その指輪は誰かの結婚指輪で、女勇者やその夫の指輪でも、大勇者が既婚者であることを示すために付けている指輪でもなかった。


「それに、よく見りゃ…動かぬ証拠が彫られてるぜ…「BAKU.I」…」


 若返ってしまった青年勇者が指輪に彫られているアルファベットを読み上げた刹那、リビングが凍り付く。


「BAKU.I」…


 それは…


「ブラックビターの幹部は、まるで霧のように、どんなセキュリティーで固められた場所でも、容易く瞬間移動ができてしまう…あまり口走りたくはありませんが、幹部のベイクの媒体は…」


 瑞希の言葉に、ユキは雪斗が怒りを露わにする感覚を感じ取った。

「「今川麦いまがわばく…」」

 名を出すだけでも、震えが止まらない。自分の息子であった雪斗を…ユキの好きな人を…自分のはけ口として傍に置いていた男の名前…それは、ユキにとっては最も許せない相手なのだから。


 話し合いの末、若返ってしまった玉菜はブランシュ卿夫人があずかることになり、クラフティは翌日が運よく休みであるのか、明日香と元に戻るまでの間どうするか家で話し合うことにした。因みに瑞希は、玉菜が7歳ほどの姿に若返った事で、別の意味で頭がお花畑の状態になってしまったものの、みるくによって歯医者に連れていかれたのだった。勇者シュトーレンはブランシュ卿夫人の提案で、勇者モンブランが遺したレシピノートの類を父親の部屋から探し出し、体内に入り込んだカオスを浄化するスイーツを研究することにした。




 そして、翌日…

「瑞希さん…やっぱり…」

「腫れた…」

 瑞希は親知らずの場所が悪かったようで、抜歯後は親知らずが見つかった右頬は痛々しく腫れてしまったのだった。一悟とみるくは昨日の話をしながら、いつもの通学路を歩く。

「たまちゃんもマリーも休みだし…父ちゃんも黒いミルフィーユの事件で帰って来られなかったし…」


「黒いミルフィーユ」…それは、明日香がカオスに操られていたダークミルフィーユとは違い、一悟が変身したミルフィーユと同じポニーテールの黒いマジパティで、一悟の姉の一華が失踪してから3日後に現れるようになった少女だ。目撃者によると素手で通行人に襲い掛かって来るという。襲われた通行人は男女2人組のカップルが多く、昨晩は襲われた拍子にカップルが石段から転倒し、男性が意識不明の重体となってしまった。一悟とみるくも例外ではなく、一昨日の学校からの帰りに黒いミルフィーユに飛び掛かられたのである。この時は一悟が咄嗟にミルフィーユに変身して事なきを得たが、明らかにあの動きは一華とよく似ていた。


「だから…こうして…僕とトロールは、いちごんとみるくの…護衛に…」

 背後から雪斗の声がして、一悟とみるくが振り向くと、そこにはいかにもあまり寝ていない雪斗と、そんな彼を呆れながら見ているトロールが立っている。

「どうしたの?ユキくん…」

「ユキの奴、夜中まで編み物やってて…まったく、誰に渡すんだか…」

 そう言いながら雪斗は大きな欠伸をする。周囲は思わず「お前だよ」って言いそうになるが、一悟達はユキの気持ちを汲み取って、敢えて雪斗には黙っているのだった。

「ユキちゃんが話したい時まで、待った方がいいと思いますけどね?」


 大勇者は元々年相応の態度をとる事が少ないせいか、一悟達は彼が本当に若返っているとは思えなかった。しかし、ベイクが細工したレアチーズケーキを2切れ分プラスα食べたため、瑞希の計算では大体10代後半から20代前半くらいに若返っているようだ。それを一目見ただけで見抜いた大賢者は「流石だ」…と、一悟達は思った。

「でも、嬢ちゃんはベイクが細工したケーキは食べねっかったんだっぺ?なのに、どうして雪斗のブレイブスプーンが石に…」

 トロールの言葉にハッとしたいちごとみるくは、お互いのブレイブスプーンに目を向けると…


「ど、どういう事なんですかっ!!!???」



 ………




「ブレイブスプーンが石ににゃったのは…こーゆー事よ!!!」


 放課後になり、一悟達はマルチメディア部の活動を休みという扱いにし、僧侶と共にカフェ「ルーヴル」に向かうと、そこには頭には黒い猫耳、お尻の辺りから伸びる黒く細長い尻尾…恰好からして「猫耳メイド」の姿ではあるが…

「つまり、「体内に入り込んだカオスを浄化するスイーツ」の研究に失敗した…それで、そのスイーツを食べたら猫耳が生えたという事だな?」

 幼馴染の推測に、女勇者は首を縦に振った。どうやらその通りのようである。

「しかし、どうしてセーラがスイーツ作りに失敗なんて…」

「これにゃのよ…ひいおばあちゃんのレシピ…」

 どうにも「な行」が上手く発音できなくなったようで、一悟達は笑いをこらえるのに必死だ。猫耳を生やした女勇者は、勇者モンブランのレシピノートのとあるページを僧侶に見せる。そのページには日本語でラングドシャのレシピが記載されているのだが…

「終盤の文章がにじんでいるな…勇者モンブランがこんなにインクをにじませるとは思えん…」

「だから、試しにチョコクリーム作って挟んでみたんだけど…外れだったみたいで…」

 落胆する姉に、7歳ぐらいの姿になったマリアは姉の猫耳をいじろうとする。彼女も頭に黒い猫耳が生えており、明らかにスイーツ作りに失敗したことが伺える。

「マリーっ!!大事な話をしている時に、ちょっかい出すな!」

 僧侶の厳しい口調に、マリアは咄嗟に一悟達の背後に隠れてしまった。

「それで、このレシピをセーラ以外で読んだ事があるのは…」

「おにぃとおねぇ…でも、2人はにじんだ部分がにゃにか分からにゃくって…あとは…」


「ガチャッ…」


「ちょっ…セーラ…その耳…ぷぷっ…」

 リビングのドアが開いたと同時に、大勇者が長女の姿を見て爆笑する声が準備中のカフェに響き渡った。




 ………




 一悟の家の一悟の部屋のテーブルの上で、マグカップに身体を入れた2人の精霊がため息をついた。

「つまり…勇者様がスイーツ作りに失敗した原因が…」

「13歳の時の大勇者様が、寝ながら垂らしたよだれってワケかよ!」

 レシピの文章がにじんでいた原因が、大勇者ガレットであった事が判明し、女勇者と僧侶の怒りが爆発。仕方なく一悟達は帰宅せざるを得ず、結局、玉菜達が元に戻る方法を知ることができなかった。

「それと、肝心のスイーツがラングドシャだってことが、あたし達の今日の収穫…チョコクリームでは効果なしってなると…やっぱり、ホワイトチョコなのかな?」

「「浄化」の意味を込めて「白」とか安直すぎるぜ…」


「鋭いな、みるく!流石はパティシエのタマゴだ…」


 背後から突然僧侶の声がして、振り向くと、そこには一悟の部屋にいないはずの僧侶がドアの近くに立っていた。今日は涼也りょうやは母と姉の住むアパートに行っており、一悟の母はスポーツクラブの社員旅行、一悟の父に至っては、刑事の仕事で、現在家に居るのは、一悟、みるく、ココア、ラテ、そして千葉ちば家の飼い犬のマレンゴしかいない。

「何度もインターホンを鳴らしても出てこないから、移動魔法で入らせてもらったぞ!バカもんども!!!」

 呆れながらそう話す僧侶に、一悟達はバツが悪そうな顔をする。


「勇者モンブランのラングドシャのレシピに必要なものは、普通のチョコレートで作ったクリームではなく、精霊が生成したホワイトチョコ…つまり、ココア!勇者クラフティ達を元に戻すには、お前の力が必要なんだ!!!」


「えぇーーーーーーーーーーっ!!!チョコの生成はガトーやフォンダンの方が良質の奴できんのに?俺、いびつな奴しかできねーんですよ?」

 僧侶の発言に、突然指名されたココアは、思わず困惑してしまう。僧侶アンニンは、トルテの膝枕で女勇者が落ち着いている間に、今回の戦犯である大勇者から、にじんだ部分に書かれていた文章の中に「精霊が生成したホワイトチョコ」が必要である事を聞き出したのだった。

「お前…チョコレートの生成ができる一族にしては、勉強不足だな?お前はラテというガトーとフォンダンにはない、かけがえのない存在がいるだろ?」

 そんなココアの真横で、今度はラテも困惑してしまった。そんな2人の精霊を尻目に、僧侶は一悟とみるくにホワイトチョコを精霊が生成する条件が、「精霊同士で夫婦めおとちぎりを交わす事」である事を、淡々とした表情で説明する。その説明を聞いている2人も、聞いているうちにだんだんと顔全体が真っ赤に染まった。

「「夫婦の契り」はそう簡単に決断できることではない…だが、ラテがいたからこそお前は「愛すること」を知った。そうだろう?勇者モンブランと共に戦った精霊全員の血を引く者…ココアバター・ホット=チョコレート…」

 僧侶の言葉にココアが黙って頷く中、一悟、みるく、ラテの3人は動揺する。


 元々ココアは両親を早くに亡くしており、両親の死後、ココアはガトーとフォンダンの両親に引き取られて育った。元々優秀であるガトーと比較される毎日の中、ココアにとってラテは、ありのままの自分を受け入れてくれる存在だった。だからこそ、この存在を大切にしたい…


 そう思ったココアは、ラテの右手を両手でぎゅっと握り、そのままマグカップから飛び上がった。

「ま…マジかよ…?」

 マグカップから飛び上がったココアは一悟よりも背が高い、チョコレート色の髪の少年の姿に変化し、着ている服もミルクチョコレートのような色のノースリーブのハイネックシャツと、黒のスラックス姿に代わり、同じく人間の姿になったラテを優しくお姫様抱っこしている。いきなり人間の姿になった恋人を見るや否や、ラテは緊張のあまり硬直してしまった。


「俺がこの姿になれんのも…ラテ、お前が俺を愛してくれたおかげなんだ。ぶっちゃけ、今はお前や一悟がいねぇと何もできねぇ俺だけど…もう俺は1人じゃねぇ!!!これからは、俺がラテの事を守る!!!!!」


 そんな恋人のプロポーズともとれる告白に、ラテは両頬をぷーっと膨らませる。

「ココアってば…そんな事言われたら、私…他の子にココアを譲りたくなくなるじゃないっ!バカっ…」

「どうやら、2人の意見は同じなようだな?」

 人間の姿になった2人の精霊の姿に、僧侶はアンニンは「やれやれ」と言わんばかりの表情をする。

「一悟、みるく…これから2人が行う「契り」に立ち会う以上、覚悟しなければいけない事がある!!!」

 僧侶は一悟とみるくにそう告げると、一悟の手のひらに1つの箱を手渡し、部屋のカーテンを閉めると、そのまま移動魔法で去ってしまったのだった。


 精霊の姿に戻ったココアとラテはお互いを見つめ合う。一悟はココアの茶色いマグカップの中にスチームミルクを注ぎ、みるくはラテの白いマグカップにホットチョコレートを注ぐ。お互い初めて注がれる飲み物に慣れない刺激を覚えるが、ココアはラテの手を離そうとせず、そのままラテに覆いかぶさるようにキスをした。


 ココアとラテがマグカップごと白い光を放った刹那、一悟とみるくは僧侶が去り際に言った時の言葉をやっと理解する事ができた。


 ―それは、契りを交わした精霊の光には媚薬の効果があり、その精霊の光を見た者は視線を交わした者同士と惹かれ合ってしまうのだった。




 ………




「ピーンポーーーーーーーーーーーン」


 翌朝、早朝ランニング中のネロは、氷見ひみ家の玄関に小型犬用のクレートを携えた少女が、氷見家の玄関のインターホンを鳴らしているのを発見した。黒のストレートロングヘアーの両サイドをみつあみでまとめ、後頭部には赤く細長いリボンを結んだ少女…ネロは彼女を見るなり、「大和撫子」という言葉がよく似合うなぁ…と、この時はそう思った。



「あなたのライバル、綾部柚麻あやべゆまが来てやったわよ!氷見雪斗、出てきなさいっ!!!」


「大和撫子」だと思った彼女の第一声を聞いた刹那、ネロは咄嗟に彼女の所へ駆けつけ、今度はネロがインターホンを押した。

「当主様、「根室ねむろたつき」です!雪斗に用がある客人を連れてまいりました!!!」

 ネロの事を知っている使用人が門を開けると、ネロは少女を連れて氷見家の敷地内へ入る。怪訝そうな顔をする少女だが、ネロが纏っているマフラーが女性用である事に気づくや否や、少女の表情が和らいだ。


「なんだ?ネロ…僕に客人なんて…ひょっとして、いちごん?」


 玄関にやって来た雪斗はまさに寝起きと言わんばかりの表情で、藍色の浴衣姿だ。

「まあっ!!!なんてだらしがないの、氷見雪斗!たつき様の前で寝間着姿なんて…失礼極まりないわっ!!!」

「べ、別に私は…雪斗があの姿でも構わんが…」

 ネロの隣でギャンギャン喚く少女が誰であるのか察した雪斗は、45秒でいつもの姿に戻った。


「それで、何の要件だ?狸野神社たぬきのじんじゃの跡取り娘…」

 弓道仲間から「自分のライバル」扱いしている綾部柚麻の姿を見る雪斗は、どことなくふてぶてしい。

「あーら…ウチのご神体への侮辱かしら?」

「2人共…大事な話があるのだろう、無意味なケンカはよせ!!!それで、どうして雪斗の所へ…」

 ネロの問いかけに、柚麻は持ってきたクレートを開ける。


「やつはしちゃん、マジパティの所へ来たわよ?出ておいで。」


 柚麻の言葉に反応したのか、クレートの中から1匹のタヌキが顔を出す。

「…?やつはし?」

「えぇ、3か月前にウチの神社に迷い込んできたの。今は書類上は「保護」扱いだけどね。最近、やつはしちゃんがうわごとのように「マジパティ助けて」って繰り返すものだから…」

「それで、ソルベである僕の所へ来た…と?って、何で僕がマジパティだって知ってるんだ!!!」

 コミュ障にしては、見事なノリツッコミだ。おまけに、苦手な綾部柚麻に知られた事で、雪斗の表情は更に曇る。

「弓の構え方で、薄々気づいてたわ…それに、交換留学の時、リカにマジパティが腰につけてるスプーンを見せてたわよね?それで、「あ、氷見雪斗ってマジパティだったんだ」って確信したってワケ!」

 そう言いながら、柚麻は「やつはし」と名付けたタヌキの背中をなでる。

「そのやつはしが、どうしてマジパティって呟いたんだ?」

 ネロの言葉に、やつはしは起き上がる。


「俺、今は「やつはし」って名前だけど…以前は「ニョニャ」と名付けられた…ブラックビターの幹部だった狸だ。」


 突然のタヌキの発言に、雪斗達は目を皿のように丸くする。

「やつはし…ちゃん?」

 ブラックビターの幹部であったタヌキは、今の飼い主と2人のマジパティに混沌の魔女の末路、混沌の依り代が人間界の住人である事、そして、ブラックビターのアジトについて離した。

「しかし、なぜお前はブラックビターを裏切るなんて…」

「俺は裏切ったんじゃない…ブラックビターは平和を脅かす事が目的だったんだ。俺は、「みんなで愉快に驚かす」事が好きなんだ。あいつらのやり方は、俺には合わなかった…」

「だから、僕の所に…」

 雪斗がそう言うと、やつはしは黙って頷いた。

「だから、やつはしちゃんを普通のタヌキに戻してほしいの。これ以上、やつはしちゃんを精神的に苦しめるワケにはいかないもの…」

 いくら仲の悪い相手のペットとはいえ、これ以上やつはしをブラックビターだった頃の苦しみを味わわせるわけにはいかない。


 しかし、今の雪斗はマジパティに変身できない。今の雪斗には、やつはしを助けたくても助けられないのだ。


「それなら、やつはしの浄化は私が行ってもいいか?私も雪斗と同じマジパティだ。ここで雪斗にこだわる必要はない。」

 雪斗の隣で、ネロが自ら名乗り出た。

「で、でも…どうして氷見雪斗にこだわる必要はない…って。」

「それは、やつはし本人が決める事だ。飼い主である君は、雪斗がマジパティである事を知っていたから、相談にきただけ…違うか?」

 柚麻は首を横に振った。

「どうする?やつはしちゃん…」

「ブラックビターのしがらみから解放してもらえるなら…お願いします!!!普通のタヌキに戻してください!」

「交渉成立だな…?」

 ネロが微笑むと、柚麻とやつはしは安堵の表情を浮かべる。


「ガラッ…」


 突然、雪斗の部屋のふすまが開くと、そこには一悟の父と2人の刑事、そして瑞希が立っていた。

「自分は、瀬戌警察署刑事課の千葉です。氷見雪斗君…一連のブラックビターに関する事件について、君ともう1人の人格に捜査協力をお願いしたい。」




 ………




 ココアとラテの「夫婦の契り」から一夜が明け、ココアは無事、ホワイトチョコを生成する事ができた。その様子に、一悟とみるくは安心し、2人はココアとラテを連れ、大賢者、玉菜と共に僧侶が運転するミニバンでカフェへ向かった。


 勇者モンブランのラングドシャは完成し、勇者シュトーレンとマリアと玉菜は、無事に元の姿に戻る事が出来た。

「はぁ…やっと家に帰れるぅ…」

「ありがとう、ココア…やっとあなたも、本気を出せたわね?」

 女勇者の言葉に人間の姿のココアが照れ臭そうにラテの手を握ると、大急ぎで住居スペースの階段を駆け上がる音が響き渡った。


「バンッ!!!!!」


 リビングのドアが開き、勇者クラフティが息を切らせながら入ってきた。彼の背後には明日香もいる。

「大変だ…雪斗と瑞希が…警察に…」

英雄ひでおおじさん…一悟のお父さんも一緒だったから、恐らく…ブラックビターの事かもしれないんだけど…」

 その言葉に、リビングにいる者達全員の背筋が凍り付いた。




 ………




「刑事はん…指名手配犯は、ブラックビターの幹部でしたわ。」

 千葉英雄刑事の前に現れた女性は、童顔刑事にジップロックに入れた結婚指輪を証拠品として手渡し、そう話した。息子が敵対している組織の1人に指名手配犯…どうにも信じられなかったが、千葉刑事はそこに行方不明の兄と娘がいる事を信じて、彼女の話を聞くことにした。そのためには、瑞希と雪斗が必要だった。


 ブラックビターのアジトとなっている廃デパートの近くにパトカーを止めると、パトカーから弓道着姿の雪斗が降りる。

「アレが、ブラックビターのアジトとなっています。」

「そうか…雪斗君、今川麦…いや、ベイクは凶器を持っているかもしれない。どうか無事で戻って来てくれ…」

「はい…」

 雪斗は頷き、パトカーから離れ、廃デパートの陸上駐車場を進む。


「なぁ…ユキ…」

 雪斗は不意にユキに声をかけた。

「どした?」

「約束してくれ…僕があの男に勝てたら、その時は、僕にお前の意中の相手を教えて欲しい。」

 その言葉に、ユキはフッと微笑み…

「いいよ…でも、ビックリしないでよね?」

 ユキの言葉に、雪斗はフッと微笑み、廃デパートに向かって叫んだ。


「出て来い、ベイク!僕が相手だっ!!!」


 その叫びを聞いたのか、廃デパートから黒い鎧の男が現れた。

「麗しき少年かと思えば…私は貴様のような男に用はない!!!」

「貴様が何度も忘れようとも、僕は決して忘れはしないっ!!!!!」

 その叫びと共に、雪斗が放った矢は、ベイクの兜に直撃し、兜が真っ二つに割れた。


「その、内面が下衆にまみれた面構えだけは…」


 割れた兜から現れたのは、黒髪の青年で、目元は雪斗とよく似ている。そして、雪斗はブレイブスプーンを構える。石化していたブレイブスプーンは元の姿に戻っており、それはまさしく、勇者シュトーレンの状態異常が回復したという証であった。


「マジパティ・スイート・トランスフォーム!!!!!」


 そう叫んだ雪斗は、ソルベの姿に変身しながらベイクの日本刀を次々と回避していく。それは周囲から、日本舞踊を踊っているように感じた。


「ブルーのマジパティ・ソルベ!!!今日が貴様の悪事の最後だ!ベイク…いや、今川麦!!!!!」


 水色のサイドテールのマジパティが己の媒体の名を叫んだ刹那、ベイクは不意に自分の手から引き離された長男の姿が浮かび上がった。

「雪…斗…?どうして…その姿に…お前は私と一緒に…」

 まるで錯乱したかのように、ベイクはマジパティに変身した長男に駆け寄り始めるが、ソルベにアホ毛が飛び出したと同時に、ソルベは軽やかに黒い甲冑の男から避けた。

「バーカ!自分を性的な捌け口にしていた親と「一緒にいたい」なんて、思うワケないじゃん!」

 人格がユキに代わると、今度はソルベアローをブーメランの要領で投げ飛ばし、ベイクの手から日本刀を弾き飛ばした。ソルベアローがソルベの手元に戻った刹那、ソルベは腰から水色の宝石を取り出そうとするが…


「ドゴッ…」


 突然ポニーテールの黒いミルフィーユが、ソルベの腹部に拳をぶつけた。拳を食らったソルベは、右腕を下にして倒れ、ソルベアローと共に水色の宝石を落としてしまう。

「邪魔をするな、シャドウ!!!」

 ベイクはそう言うが、シャドウと呼ばれたミルフィーユは聞く耳を持たず、よろめくソルベに再び突きを繰り出そうとするが…


「でやぁっ!!!!!」


 ソルベの目の前に現れたのは、千葉一悟が変身した本物のミルフィーユだった。

「お前の相手は、俺だ!!!シャドウ!」

 そう言いながら、一悟はシャドウに空手で応戦しはじめた。まるで吹っ切れたかのようなミルフィーユの立ち回りに、シャドウは圧倒される。

「雪斗、お前の因縁はお前自身で断ち切るんだ!!!」

 その言葉を聞いたソルベは再び立ち上がる。


 アホ毛は引っ込み、人格は氷見雪斗へとシフトすると、水色の宝石を腰に付けなおし、再びソルベアローを構えた。先ほどのシャドウの攻撃で矢を持つ右手が痛むが、そうはいっていられない。


「ユキ…僕にありったけの勇気を!!!!!」


 雪斗の言葉に呼応するかのように、ユキが雪斗の反対側でソルベアローを構え、雪斗を支える。ソルベアローに光の弦が張られると同時に、水色の光を帯びた矢が現れ、雪斗とユキは弓矢を引っ張り…


「「ソルベシュート!!!」」


 水色の光の矢が解き放たれ、ベイクの甲冑を貫き、鎧の男は光の粒子と共に本来の姿へと戻っていく…


「「アデュー!!!」」


 雪斗とユキがそう言うと、ベイクは媒体である今川麦の姿へと変わった。




 ベイクが媒体の姿に変わった同時にシャドウをひるませた一悟は、長薙刀を構え、シャドウに飛び掛かる。


「ミルフィーユパニッシュ!!!!!」


 ミルフィーユに一刀両断されたシャドウは、光の粒子となり、本来の姿へと戻っていく。その姿は失踪していた一悟の姉の一華で、服装はあの時の家族会議の時のままだった。



「今川麦、8月の勝浦佐斗司かつうらさとし弁護士の殺害及び、下関ブリーダー殺人、そして目白台めじろだい小学校侵入の容疑で逮捕する!!!」

 一悟の父がそう言うと、雪斗の父親である今川麦の両手に手錠がかけられた。別のパトカーに捜査協力としてガレットが待機していたようで、ガレットは厳しい表情で今川が連行されてく姿を見つめる。

「カルマン・ガレット・ブラーヴ・シュヴァリエ…同じ子を持つ男として、お前に聞きたい。私は、一体どこで間違ったというんだ?」

最初はなっからだ!そもそも、子供は親の操り人形じゃねぇ…それが理解できねぇ限り、お前は永遠に子供から見放されたままだ。」

「そうか…父達から、教えてもらった事を雪斗にやっていただけだったのに…」

 悲しい表情で呟く今川の姿に、大勇者は彼を哀れな人間だという事を感じ取った。


 一華は意識がなく、警察が手配した救急車によって病院へと運ばれた。


 そして、雪斗とユキは…

「えへへっ…やっと雪斗に触れられた♪」

 無邪気に微笑むユキに、ソルベの姿から戻った雪斗は少々脱力する。

「なぁ、ユキ…お前の好きなひ…」

 雪斗が問いかけた刹那、ユキの唇が雪斗の唇に重なった。


 そして、ユキが上目遣いで雪斗を見つめたと同時に、ユキは雪斗の目の前から、まるで降り積もる雪の如く、一瞬にして消えてしまった。

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