第2話 視線

 ある夜、ふっと目が覚めました。なにがきっかけで起きたのかはわかりません。布団の中でしばらくじっとしていたのですが寝付けないので、トイレに行こうと和室を出ました。

 狭い家に似合いの急階段をぽてぽてと下り、あと一段、となったときです。


 視線を感じました。


 母が起きたのだろうか、と階段の上を振り仰いだのですが、誰もいません。しばらく待っていたのですが、母が起きてくる気配もありません。

 寝惚けていたのだろう、と最後の一段を下りた瞬間。


 視界の端に、白い影が引っかかりました。


 え? と慌てて振り返ったのですが、階段の上には誰もいません。

 けれど確かに白いものが見えました。

 トイレに行くことすら忘れて、階段の下に立ち尽くします。寝惚けていたのだろうか。けれどなにか、ふわふわとした繊維状のものがあった。一緒に暮らしているネコは白猫でしたが短毛で、ふわふわと表現するのは相応しくありません。

 考えているうちに、頭の中で妄想が膨らんでいきます。どんどんと像を結んでいきます。


 ──老婆の、髪だ。


 そう思いついてしまったのです。

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