第4話 ご存知なかったのですか?
「彼女は幼き頃からの王子妃教育でかなり進んだ勉強をしており、学園を1年で飛び級で卒業している。もう1年以上前の話だ。……お前は婚約者でありながらそんな事も知らなかったのか?」
「……は? ……学園を、卒業……? 1年で……飛び級、……でございますか? ……まさか……!!」
第一王子は信じられない、といった様子で呟く。
「……第一王子よ。其方は学園で一体何をしていたのか。幼き頃からの婚約者が居ない事にも気付かず、肝心の学業も疎かにしているようだ。そして、言うに事欠いて学園にはいない婚約者がそこで罪を犯したなどと虚言を吐き、浮気相手を公式のパーティーにエスコートするとは……!! ……更に、このような騒ぎを国の重鎮達が揃うパーティーで起こすなど……!」
陛下は眉間に深い皺を作りながらも第一王子を厳しく糾弾した。
……もしも、第一王子が陛下に個人的に直接この件を話し婚約破棄をしようとしていたのなら。陛下に相当に叱られはしただろうけれどもきっと世間には知られる事はなく、穏便な処分がなされていたのだと思う。
けれども、国内の大貴族たちが集まるこのパーティで。……第一王子は自らこの騒ぎを起こしてしまった。陛下はいくら我が子が可愛くとも罪に問わない訳にはいかないだろう。しかも、有力な侯爵家の娘である婚約者を蔑ろにするような事を大々的に皆の前でやらかしたのだから。
「父上……ッ! 私は……私は知らなかったですッ! そして、私は騙されたのです……。この女が……、この女が私の婚約者にいじめられたなどと、そう言うから! 私は騙されただけなのです!」
第一王子は必死になってそう陛下に訴えるけれど、陛下は首を振り第一王子を見もしなかった。
「王様ぁ! 嘘じゃありませんッ! きっと……、きっと他の誰かに頼んで私をいじめさせたのですわ! そうよ、もしくは王子の恋人の私の話を聞いて悔しくてわざわざ学園に来てイジメに来ていたのですわッ!」
王子の恋人を名乗る令嬢は、そう支離滅裂な事を一生懸命叫ぶけれども陛下の目配せで衛兵に猿轡をされて捕らえられた。
……そもそも、『私にいじめられてそれを王子が慰めて恋人になった』設定ではなかったのですか?
皆そう思ったのだろう。白けた目で衛兵に捕らえられながらも逃れようともがく令嬢を眺めた。
「父上……! コレで、お分かりになられたでありましょう? 私はこの虚言癖のある女に騙されていたのです……!」
第一王子は捕らえられ猿轡をされた恋人が余計な事は言えないと思ったのか、これ幸いと陛下に主張した。
「……百歩譲ってお前がこの者に騙されていたとして、それを確証もないまま信じ込み、婚約者にこのような対応をする事が問題なのだ。
…………お前は、王の器ではない」
一瞬苦しそうなお顔をされた陛下は、苦渋の決断をされたようだった。
「……そ、そんな……ッ! 父上ッ! 父上……ッ!! お聞きくださいッ!」
第一王子は真っ青な顔で陛下に近寄ろうとする。けれども、衛兵に止められて進めない。
「お待ちください! 陛下!」
あら。
今割り込んでこられたあのお方は、第一王子の母の実家の公爵家、つまりファビアン王子の伯父様ではありませんか。
ご自分の甥である第一王子に王位を継がせる為、あれやこれやと画策なさっていたのでしたわよね。
「此度のこと、確かに第一王子殿下は騒ぎを起こされはしましたが、それもあの女に騙されてのこと……! しかも殿下はまだお若い。若い時の過ちは誰にでもございます。ここは、穏便にすまされてはいかがでしょう」
公爵は全てをあの恋人の令嬢のせいにし、第一王子を無罪放免にしようとしているようだ。
第一王子は救いの主が現れたと目を輝かせて公爵を見た。
「……それに、第一王子殿下はこのように深く反省されているご様子。婚約者であるリースハウト侯爵令嬢も殿下が罰せられ、婚約破棄をされた『傷物令嬢』となる事を望んではおられないでしょう」
……おや? 私に振ってきましたか。
私の意見を言わせていただけるなら、こんな男と結婚なんて真っ平御免!
婚約破棄? 上等です!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます