少年
男は、過去に仕事で貧困地域に滞在していた。
周囲は砂漠地帯で、街を取り囲むように砂が迫っている様だった。
街はそれなりに美しかったが、少し街から離れた緑の少ない道路では、幼い子供の骸が点々としていた。
男は駐在にその事を話した。駐在はとても気怠そうに聞きながら、椅子から離れ職務に携わっていた。
男は神を信じてはいなかった。弔ってやることで魂が救われるなど、微塵も考えてはいなかった。
男は行動した。生きている者を救うために。
男は街と外れの境目で、痩せこけた少年を見つけた。
男も余裕があるとはいえなかったが、少年にできる限り、食料と水を渡した。
少年は男にとても感謝し、それを受け取った。
その地域では、警察の介在なしで食料や金品の受け渡しをすることは禁じられていたため、男はそそくさとその場を立ち去った。
しばらくして男は、少年のことが気になり様子を見に行った。
そこで、周りに血のついた石や枯れ木の棒を散乱させながら、少年は息絶えていた。脈を確認せずとも、それがわかる状態だった。
男は、きっと他の同じような境遇の子供達に襲われたのだと考えた。
であれば、男の行動は無駄ではない。
少年の代わりに、他の子供が救われたのだから。
だが、男に笑顔を見せたあの少年はもういない。
男は苦しみ、そして悩んだ。自らに過ちはあったのか、と。
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