第29話 サリダ 対 男爵夫人


 レセプシオン伯爵家でデシルとサリダの婚約式が無事に終わり… やれやれと、デシルがホッ… としたのもつかの間。


 2ヶ月後には婚姻の儀式を、レセプシオン伯爵領の神殿でり行うことが決まった。


 サリダはもっと早くが良いと主張したが、デシルの母コンドゥシル男爵夫人が、婚姻の儀式の日に、絶対に花嫁となったデシルのお披露目ひろめパーティーをするべきだと主張し反対した。


 男爵夫人の意見が受け入れられ、2ヶ月の準備期間を勝ち取った。

(レセプシオン伯爵夫人は、サリダが子供の頃に病死しているため、デシルの母がパーティの準備を任される)


 だが、お披露目パーティの準備を始めてすぐに、男爵夫人は…

 

「2ヶ月では足りないわ! 将来のレセプシオン伯爵夫人のお披露目だから、豪華で完璧でなくてはいけないのに!」

 コンドゥシル男爵夫人は、2ヵ月は短すぎると文句をぶちぶちと言いつつ… 


「男爵夫人、私は1日でも早く… いや、本当は一瞬でも早くデシルを、妻にしたいのです!」


「まぁ、サリダきょうったら…!」


「デシルとフリオの婚約が破棄されてすぐに、若い独身の貴族たちから毎日のように、デシルへ恋文や贈り物、面会の申し込みが届いていたでしょう? 誰が見てもデシルはとても美しく、魅力的ですから!」


 恋のライバルたちに脅威きょういを感じ、サリダは自分も負けないよう… 毎朝、男爵邸に通いデシルと朝食をとりながら、求愛していたのだ。



「でもサリダ卿は、デシルの婚約者ですから… その心配は消えたと思いますけど?」

 男爵夫人は首をかしげた。


「いいえ! 私は婚約していても、誰かにデシルを横から、られるのではないかと、心配なんです!」 


「///////っ… まぁ! サリダ卿… たらっ! なんて情熱的なのかしら?!」


 1日でも早くデシルを妻にしたいという、サリダの熱意に、男爵夫人は頬を赤らめながら、『若いから仕方ないわね』 … と折れた。

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