第45話

「それじゃ、俺たちは一緒に飲みに行ってくるからお前らは仲良くお留守番しといてくれよ!」


バルドが提案を飲むとカレイドに還した翌日の事だ。


まだ朝早いというのにカレイドがフィオル様を連れて家にやってきた。


そしてバルドとカレイドは二人して昼から呑みに行くのだとか。


(俺とフィオル様を二人っきりにする理由、強引では?)


一応、設定としては体調が悪い俺の看病にフィオル様をおいていく、という事らしい。


なんでもフィオル様はお酒があまり好きじゃないらしいからこの設定はおかしくはなく、二人はフィオル様がこれなかったこと、そして病気の俺を心配しながらお酒を飲んで監視を欺くために昼から呑むのだとか。


二人とも酒におぼれて失言するタイプでもないからまぁ、そこは心配してないんだけど――――


「ただの作戦だと思ったら本当に寝込んでいるとは思わなかったよ。」


フィオル様は優しい声音でそう語るとベッドで眠る俺の頭を撫でる。


そう、何が問題って、本当に俺が軽く熱があるという事なのだ。


「あの、あまり俺に近づかないでください。熱がうつったら――――――」


「その時は二人で健康的な汗でもかいて熱を下げようか。」


「っ……」


熱が映ることが心配で語り掛けるとまさかの返し。


穏やかな余裕のある声のせいでいっそうこちらの熱は上がった気がする。


「ところで、もう話し方は戻してしまうのかい?私は今の話方も好きだったんだけどね。なんというか……従順なリシアも可愛かったけど、反抗的なリオは無理やりすべてを奪ってしまいたい可愛さがあったからね。」


「っ…………」


フィオル様は終始穏やかにほほ笑みながら俺の頭を撫でてくる。


俺の頭を撫でていてもしかしたら俺の頭が一層熱くなっているのをわかって口説いてきているんじゃないかと思うくらいひどく恥ずかしいことを言ってくる。


毛布を顔までかぶり隠れてしまいたいけど、でも――――――


(みていたい。俺を見て穏やかに笑うフィオル様を。)


もう退けなくていい。


そう思うともう気持ちが止められない。


(やっぱり好きだな……フィオル様。)


じっくり見てなかったけど、会っていない間にいっそう色気が増した気がする。


ドンドン大人の色気が増していく。


そんなフィオル様を見て少し悲しくなった。


(俺は永遠に男らしくなれない……のかも。)


薬の影響で成長が遅い。


もしくは成長が止まっている。


だとしたらこんな素敵な人の隣に並び立つにはそれこそ女の姿とかでもないと不釣り合いな気がする。


なんてことを思っているとフィオル様が突然俺の唇にキスをしてきた。


「ちょ……フィオ……様……俺……熱……―――――」


フィオル様は何度も何度もキスをしてくる。


ただでさえ熱い息。


その意気はさらに熱を帯びていく。


「知っているかい、リシ――――――いや、リオ。ソードマスターは風邪をひかないんだ。だから君の身体を犯す悪い子は私が追い出してあげよう。」


フィオル様はそういうと色っぽく舌なめずりをした後、また俺の唇にキスを落とした。


その後、フィオル様にじっと瞳を見つめられながら頬を撫でられる。


『いやかい?』と聞かれている気がして、俺は俺の気持ちを表すように目を閉じた。


それが『嫌じゃない』というサインだとフィオル様も理解したのか、フィオル様は静かに俺の上へと覆いかぶ去ってきた。


そして優しく何度も何度も角度を変えてキスをしてくれる。


次第に俺も自分が病人という事を忘れ、フィオル様の首元に腕を回した。


合えなかった分の時間を補う様に何度も何度も、それこそ唇が互いにひりつきだしても俺たちは唇を重ねた。


熱のせいで体が耐えきれなくなり、俺が意識を失うその瞬間まで―――――。

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