第43話
突然俺、バルドことバルの元へやってきたカレイドという男。
あいつが語る話に俺は疑問を抱かずにはいられなくて、リシアの為になら何でもできるかという問いに対し、こう返事したんだ。
「その前に聞きたいんだけど、あんた、フィオルってやつの事、恋愛対象として好きなのか?」
妹のようだという言葉。
それがどうも引っ掛かった俺はカレイドってやつがリシアの恋敵であるかどうかも確かめたくて問いかけた。
嘘をついていたらある程度はわかる。
カレイドという男の嘘を完ぺきに見抜ける自信はなかったけど、まぁ、違和感ぐらいは覚えるだろうと思って問いかけた俺の問いに対し、カレイドは盛大な溜息を苦笑いを浮かべながら吐き捨てた。
「無いな。人それぞれ価値観は違うだろうが俺は恋愛対象になるかならないかはやることやれるかやれないかで判断する。ぶっちゃけた話、女の姿のリシアはありだがフィオルはなしだ。顔がいいからキスまではできないことはないだろうが、した後は必ず後悔する自信がある。」
はっきりと恋愛感情はないと言い捨てるカレイド。
その表情は全く嘘をついているように見えなかった。
そんなことを思いながらカレイドを見つめていると彼の口元は勢いよく上に吊り上がった。
「逆に聞くが、それを聞いてくるってことはお前はリシアの事がそういう意味で好きってことなのか?お前がもしリシアの為なら何でもできるとしたらそれがそういう感情から来ているから俺もそうなのかって疑ったように聞こえたんだが?」
とんでもない発言を言い放つカレイド。
そんなカレイドの口調はひどく楽しそうだった。
まるでいいおもちゃを見つけたような、そんな表情。
(随分いい性格をお持ちな事で。)
俺は挑発に乗ることもなくひたすら冷静に返答を返した。
「悪いけどご期待には添えないな。俺はリシアが女だと思ってた時からリシアを女のように感じたことはなかったしな。リシアは家族だ。……俺の、たった一人のな。」
俺は俺の思う通りに答えた。
その時俺は思ったよ。
カレイドという男は俺と似た者同士なのかもしれないってさ。
俺はそんな俺に似た人物の用事がひどく気になりだした。
「とりあえず提案を聞かせて欲しい。なんとなくアンタは俺の答えを求めてなさそうな気がするからな。俺がどういう奴か、もう調べはついてるんだろ?」
情報屋が調べられる、なんて笑える話だけど割とある話だ。
情報屋同士、仲間の情報を売る事、逆に言えばライバルの情報を売ることは少なくない。
それは割り切って仕事をしているから俺は自分の情報も調べられているんだろうと思った。
それはその通りで、カレイドという男は俺の返答を聞かずに話を進めた。
「俺たち、友達になろうぜ。」
「……は?」
いきなり切り出された言葉に目を点にしていると、どういうことかを詳しく彼は話し出した。
「俺がリシアの情報を求めている時、情報屋だったお前と馬が合って仲良くなった。そして親しくなったから俺がフィオルを一人にすることを懸念して二人でお前の家に遊びに行く。そこでリシアの面影のあるリオとフィオルが出会い、恋に落ちるという流れを作りたい。」
下心しかない友人になろうという提案。
いっそ逆に清々しいと思いながら話を聞いてみた。
何故そんな回りくどいことをするのか。
リオに接触したいなら俺を介さず接触すればいい。
そう聞いたところ、カレイドという男は面倒くさそうにため息を吐きながら苦笑いで答えた。
「いやぁ、監視に見つかってよ。監視の目―――――いや、正しくは公爵を欺くために必要なんだよ。フィオルの為にも、リシアの為にもな。」
なんとなく食えない奴。
そんな印象のカレイドという男は俺が提案に対し割と前向きなのにどこか気づいていたんだと思う。
楽しそうに笑いながら話をつづけた。
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