第40話

(や、や、やってしまった…………。)


3時間。


それが俺がフィオル様に避ける時間だなんていった割に俺はひどく長い時間フィオル様と過ごしてしまった。


(あんなの、あんなの、耐えられるわけないだろ!!!)


まさか男の身体に戻ってまで女性に好き勝手身体を愛撫されるとは思わなかった。


それだけじゃない。


フィオル様の長くきれいな指が俺の繊細な部分までいたずらに弄んできた。


(あ、頭が、おかしくなると思った……。)


流されやすい性格なのかもしれない……。


そうでないなら本当に――――――


(フィオル様が運命の相手だから何でも受け入れてしまうんだろうか。)


もはや惚れた弱みというか、何をされても嫌じゃない。


むしろもっと、上品に見えて野獣の様な愛で乱してほしいなんて思う俺は本当にとんだ変態なのかもしれない。


(って、こんなことを考えてる場合じゃない!!は、早く帰らないと!!)


今すぐ隣でシーツをかぶって寝ているフィオル様の姿が見える。


シーツから覗けるフィオル様の身体はしっかりと服という名の布に包まれている。


(と、途中から記憶ないけど、多分最後まではやってない……よな?)


とりあえず俺は急ぎ服を着ると生まれたての小鹿の様に足を震わせながら宿を出た。


(し、尻や腰が痛い……。)


俺は尻や腰を抑えながら必死に家路につく。


そして家に着くなり俺は床に倒れこんだ。


「おかえ――――って、うわぁぁぁぁぁあ!?」


俺が返ってきたのに気づいてか二階にある部屋から降りてきたバルドは家に着くなり倒れこんだ俺を見て悲鳴を上げた。


そしてバルドは急いで俺にかけより俺を抱き上げた。


「お、お前まさか熱中症とかじゃないよな!?ちょっと待ってろ、すぐに部屋まで運んでやるからな!!」


俺がまさか女性に迫られて足腰を痛めているなんて知らないバルドはひどく心配そうに俺を部屋まで運ぶと看病?してくれた。


(なんか申し訳ない気分……。)


腰やら尻は痛いけど熱はない。


だけど頭に乗せられた冷えたタオルと心配そうなバルドの顔で本当に病人にでもなったかのような気持ちになってしまう。


(正直に言った方がいいんだろうか……。)


俺はリシアであることを肯定しなかった。


だけど俺はフィオル様の愛に溺れ、体を許してしまった。


これは絶対によくない事はわかる。


(いっそバルドとこの街から……って、それはたぶん無理か。)


バルドの営む情報屋はここだからできる仕事ともいえる。


他の場所に映れば難しい職業だ。


ただでさえ迷惑をかけているのにこれ以上面倒に巻き込みたくない。


巻き込みたくないけど……


(どうするのがいいんだろう。)


巻き込みたくなくても巻き込んでしまう未来しか見えない。


そう思っているとバルドは俺の頬を突然人差し指でつついてきた。


「……なぁ、リシア。お前が前に話してたカレイドって男って、この間お前に突然キスしてきてたやつの隣にいた奴だよな?」


「え?そ、そうだけど……。」


お姉さんたちがたくさんいる飲み屋でカレイドは確かにフィオル様の傍に居た。


それに今日だって――――――


「そいつ、今日俺のところに来たんだよ。俺とお前の情報を求めてな。」


「…………は?」


今日、確かにカレイドはフィオル様と店に来た。


だけどフィオル様と俺が戯れている時はもちろん傍にはいなかった。


バルドに会いに行っていたならその時だろうけど、なんで……。


「リシア。どうやらお前はとんでもない一族に愛されているらしい。色々順を追って話さないとならないがとりあえず今日は休んでほしいから一つだけ言わせてくれ。俺は――――――カレイドってやつが提案してきたことに応じようと思うんだ。」


バルドは真剣な表情で意を決したように言葉を紡いだ。


一体どんな提案に応じようというのかはわからないけど、これは相談では報告なんだろうなと思いながら俺は静かにバルドの言葉を待つのだった。

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