第36話
「行くよ、カレイド。移動するみたいだ。」
「はいはい、了解。」
少年が同じ髪色の顔に傷のある青年と共に歩き出すとフィオルとカレイドは後を付け始めた。
(なぁ~んか傷増えてるけどあいつ、確かバルド?だっけ?あいつが自由を代価にして助けてもらった奴だよな?)
髪色は違い、傷も増えているがカレイドは確信した。
フィオルは少年の隣にいる人物をまるで気にしていない様子だけれど、カレイドはひどく気になった。
(何であいつがここにいるんだ?確かあいつも情報屋だったし、もしかしてあいつがリシアが売られた情報を掴んで助けたとか……?)
少年にくぎ付けのフィオルとは打って変わり、カレイドは隣の青年に興味を持ち始めた。
酷く優秀な人材なんじゃなかろうか。
そう思うと少しつまらなく思っていた尾行も楽しくなってきた。
(あいつは掴んでるのかねぇ~。自分が死にかけたのが自分の親友を連れて行った公爵だってこと。)
カレイドは楽しそうにほほ笑む。
そしてその隣のフィオルはひどく幸せそうにずっと少年を見つめながら微笑んでいたい。
少年と青年は自分たちを見て微笑んでいる者たちがいる事に一向に気づくことはないのだった。
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「……ねぇ、カレイド。僕の意見を言っていいかな?」
「あ~……まぁ、聞きたくねぇけど聞いてやるよ。」
とある明るい声が飛び交う店の中。
店の片隅の席で頭を抱えながら深刻そうな声を出すフィオル。
そんなフィオルに面倒くささを感じながら意見を聞いてやるというカレイド。
そのカレイドのGOサインを聞くや否や、フィオルは非常に怖い表情で言葉を吐きだした。
「これは浮気という事でいいよね?僕という恋人がいながらこれは本当にどういうことなのか、今すぐ縛り上げて問い詰めたいんだけどいいと思うかい?」
「いや、今はやめとけよ。人も多いし悪目立ちして騒ぎになるだろうが。」
今すぐにでも行動に出そうなフィオルを呆れた声でカレイドが制する。
それでも苛立たし気なフィオルのせいか、一応店は素敵な女性が接客をする店だというのにカレイドは女性たちに火の粉が降りかからないよう接客を断っていた。
(今は男二人で飲んでるだけみたいだが……二人とも顔がいいし後で女に囲まれでもしたらコイツ……俺だけで止められるんだろうか。)
男二人だけで飲んでいる少年と青年。
二人が早く店を出ることを願いながらカレイドは飲まなきゃやってられないといわんばかりにお酒を飲み始めた。
そうして数時間後。
「「リオく~ん!」」
色男二人の席に綺麗な女性たちが集まりだした。
「あぁもう本当、どうしようか。どうしてあげようか。あんなに女性に囲まれて、はなの下を伸ばしてはしたない。連れ帰ったら僕以外見れないように閉じ込めないといけないね。」
元々気が気ではなかったフィオル。
しかしその我慢はそろそろ限界に達しようとしていた。
そんな中、ストッパーになり得るカレイドは――――――
「zzzzz……やめとけって……zzzz……きらわ……れる……」
夢の中でフィオルに返答をするほどに酔いつぶれていた。
酷く酔いつぶれ、もうフィオルを止めることのできないカレイド。
そして女の子に囲まれる中、自分だけの特権だった口に料理を運ぶ役割。
それらを黙って見つめ続けることはフィオルにはもう耐えられなかった。
「……僕はもう、十分耐えたよね。」
フィオルは静かに立ち上がると色男二人がたくさんの女性に囲まれている席へと移動した。
そしてその中で一番小柄な少年の座るソファの真後ろまでやってきた時だった。
女性に料理を食べさせてもらおうとしている少年に声をかけた。
「駄目じゃないか。誰彼構わず餌付けられるなんて悪い子だね。」
女性たちに囲まれる少年に言葉を向けるや否や、少年の顎を背後から持ち上げた。
そして料理を食べさせまいと少年の唇を自分の唇でふさぐのだった。
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