第24話

フィオル様に衝撃の事実を明かされてから一か月がたった。


そんなある日の事。


衝撃の日から数日後には公爵家に戻ってきていたカレイドにフィオル様はひどく呆れた声で話しかけられていた。


「……あのね、フィオル君。君には恥じらいというものがないのかね?」


なんでも帝国の3つの公爵家の当主は全員戦線に駆り出されているため、ラグラルク家とエルシオン公爵家は公爵不在の間力を合わせて執政を行うことを決めていたらしく、知らなかったけれどカレイドはフィオル様の手伝いに駐在していたらしい。


つまり、カレイドは遊びに来ているんじゃなくて仕事をしに来ているわけで、フィオル様と仕事をしなければいけないというのに――――――


「仕事中に恋人を膝の上に乗せて暇さえあれば口づけをするのはどうかと思うんだが?」


はっきり言って仕事に集中しているとは思えないような態度で執務机に向かっていた。


「フィ、フィオル様、あの、やっぱり私、部屋に戻って――――――」


大人しく部屋で薬の調合でもしようと思って発言をする俺。


しかし言葉を言い終わる前に俺の唇はフィオル様に塞がれた。


「いけない提案をする口は塞がないとね。駄目だよ、リシア。君は片時も離れず僕の傍に居ないと。」


穏やかにほほ笑みながらとんでもない束縛発言をしてくるフィオル様。


(あぁもう、好き……。)


男のくせに男らしい女性にときめくとか、どうなんだろうと思いながらも俺は男らしいフィオル様の胸に顔をうずめた。


基本責めるばかりでこんなに責められた経験がないからか、こういうのが新鮮でときめかずにはいられない。


それにフィオル様の性別を明かされて俺は実感した。


俺は本当にとことん女好きなんだって。


本能でフィオル様が女性だってわかっていたなんてやばすぎる。


だけど多分、俺はフィオル様が女性だから好きなんじゃなくて、フィオル様だから好きなんだとは自信を持って言えた。


きっと俺にこんな風に愛情表現をしてくる女性は世界中探してもフィオル様くらいだ。


(絶対一生、女の身体でいよう。)


フィオル様はあの一件以来、カレイドは大丈夫でもあまり男に良い態度は見せていなかった。


だからもしかすると俺が男だと解ると心変わりするどころか嫌われてしまう可能性すらある。


女同士ならなおのこと期限付きの恋愛だろう。


だけどそれでもかまわない。


一生とは言ったものの、せめてその期限を迎えてしまうまではフィオル様の望む姿でいたいと思った。


「はぁ……頼むからフィオル、一回リシアを離せ。最近お前の仕事遅れてんの。仕事をちゃんとしたら好きにしていいから。な?」


酷く呆れた表情でカレイドが言葉を吐き捨てる。


すると仕事が遅れていることに関してはフィオル様も思うところがあるのかあっさり解放してくれた。


「いい子だ。んじゃ俺はリシアを部屋まで送ってくるから、リシアと過ごしたきゃとっとと仕事片付けとけよ。」


カレイドは不服そうなフィオル様に言い聞かせるように言い放つと俺を連れて執務室を出た。


そして――――――


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~。」


酷く盛大な溜息をついた。


「お前も大変だな。全く、あぁいうところは公爵譲りかねぇ~。」


カレイドはあまりにも自由がない程にフィオル様に求められている俺をねぎらうかのように頭を軽く2回たたく。


とはいえ、薬を作りたいときは部屋まで一緒に来てくれるし別に困っていることはあまりない。


薬の効能を聞かれたりするときは流石に困ってるけど……。


(女になる薬作ってますとは言えないしなぁ……。)


とはいえ、基本的には不自由に思う事は実はなかった。


「……なぁ、リシア。お前の部屋についたら少し話したいことがある。いいか?」


「え?……うん。」


カレイドは突然真剣な声で問いかけてきた。


きっと大事な話なのだろうなと思いながら俺はカレイドと部屋に戻るのだった。

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