第18話
「ほらよ、お前が欲しかった情報。」
カレイドのとんでもない行動を許して数日。
あれからカレイドは公爵家に泊まっているというのになぜか情報を集めて俺の前に持ってきた。
とはいえ、その情報を疑う事なんてあるわけもなく、俺は報告書を読んだ。
報告書には非常に事細かく記載されていた。
退院して数日するとバルドは情報屋の仕事に復帰。
俺が公爵家へといったことに対し不信感を覚える者の、今は街で今まで通りに過ごしているらしい。
少し今までと違うところはようやく家を出たらしい。
なんだかんだ言ってもしかすると父親の悪行をどうのこうのというのもあっただろうけれど、家を出るまとまったお金もなかったのかもしれない。
何はともあれ、元気にやっているのが解って一安心だ。
「これはおまけだ。映像を記録しておく魔法石で近況を見せてやるよ。うちの騎士がとってきたもんだからつまらない映像が映ってるかもしれな―――――」
つまらない映像が映ってるかもしれない。
そういって流された映像はなんという事か。
バルドが女性と路地裏と思われる場所で情事をしている姿だった。
それを見た瞬間の事だった。
「なんじゃこりゃ――――――!!!!」
カレイドは顔を真っ赤にして映像を記録しておく魔法石をたたき割った。
(……コイツ、もしやチェリーか?)
いってしまえば俺もチェリーだけど、バルドがそういうシーンを収められていることに関してはなにも驚かない程度にはまぁ、理解はできる。
「おおおお、おま、おま!!よくこんな奴と友達で襲われなかったな!!!いや、もしかして元カレ!?」
酷く体と声を震わせながら言葉を投げかけてくるカレイド。
男女のそれを始めてみたのだろうか。
滑稽なほどに動揺している。
「まぁ、バルドは誠実だし紳士なんで。気がない相手に迫ったりしないんですよ。本当に、いい奴です。」
俺はバルドの事を懐かしみながら壊れてもううつらなくなった映像石のかけらを見つめた。
(本当、どんなシーンとられてるんだか。せっかく一人で暮らし始めたなら家まで我慢しろよな。)
まぁ、内心は正直呆れていたけど。
だけどらしい姿が見れて安心した。
らしく過ごせるほどに回復したという事だろう。
「調べてくれてありがとうございます。助かりました。」
俺はカレイドに感謝を述べる。
するとカレイドはにっこりと笑った。
「これくらいならいつでも言ってくれ。お安い御用だ。」
太陽の様に明るく笑うカレイド。
そんなカレイドに言葉にできない温かさを感じた俺は小さく笑みを浮かべた。
恐らくバルドには二度と会えないだろう。
だけどバルドにどこかそっくりな彼とはなんとなくだけどこれからも上手くやっていける気がしたのだった。
「あ、そうだ。なぁなぁ、お前薬草園を公爵に作ってもらったんだろ?もしよかったら案内してくれねぇか?」
「え……興味あるんですか?」
貴族が薬草に興味があるなんて正直驚きだ。
公爵は多分父さんの影響で薬草に興味があるんだろうけど、それは普通じゃない。
そう思いながら驚いているとカレイドは明るい笑みを浮かべた。
「親父が詳しくてな!いつの間にか好きになったんだ!」
明るく笑うカレイドの言葉に嘘がないことは瞬時に理解できた。
そんな俺の返答はただ一つだ。
「もちろん。ご案内させていただきます。」
薬草が好きな人が知り合いに増えた。
それだけでとても嬉しさを感じた。
だから俺は快く案内を任されたのだった。
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