第6話
「それでは何かありましたらお申し付けくださいませ、リシア様。」
とてつもなく大きい公爵家に連れてこられ、酷く大きな部屋に案内された。
部屋は俺の家より広く、なんだか変な感じだった。
(服は全部用意しているって言ってたけど……――――)
クローゼットを開けてみるととても可愛らしいドレスがぎっしりと詰まっていた。
(まさか、ここへ来るまでの1日にの間に全部買いそろえたのか?)
街から公爵家への移動は移動用魔方陣を使い、本来であれば1週間近くかかる距離を1日でやってきた。
警戒するべき公爵といる時間が短かったのは大変助かった。
それに――――――
(女に興味ないと言いつつあいつ、やったら俺の髪を触ってくるし!!)
接触がある以上男とばれる可能性もあったため、早く到着したことに関して本当にありがたかったと思っている。
(さて、とりあえず持ってきた薬剤調合用の草花を整理でも――――)
「お、お待ちください、フィオル様!!」
草花の整理でもしよう。
なんて思い持ってきたカバンの中をベッドに座りながらあさろうとした瞬間外が騒がしくなる。
一体なんだろう。
そうおもっていると勢いよく部屋の扉があいた。
(えっ!?な、何々!?)
余りにもいきなりの事で驚く俺。
そんな俺をまっすぐ見つめる美青年がどうやら勢いよく部屋の扉を開けたらしい。
(うわぁ……なんていうか……まさに王子様って感じ。)
余りの美しさに見惚れずにはいられない。
バルドは男らしい色男だけど、今部屋に入ってきた美青年はどちらかといえば中性的で、細身で繊細な美しさを持っている。
男にときめいたことなんてないけど、思わず見惚れてしまう。
「…………へぇ、あの人が女の子を連れて戻ったっていうからどんな子かと思ったけど……随分綺麗だね、君。」
突然部屋に入ってきた美青年はベッドの俺が腰を掛けているすぐ隣に膝を置き、俺に覆いかぶさるように体を寄せてきた。
俺の顎を優しく持ち上げ、俺を上から見下ろす。
そんな彼の顔はひどく美しくて、見惚れる事しかできない。
「……君、魅力的だね。僕は男性にしか興味がないんだけど、何故かひどく、味見したい気分だよ。」
「っ!!」
味見したい。
彼は俺の首筋に顔をうずめながらそうささやくと俺の首筋を突然舐めあげた。
反射的に体はびくっと跳ね、舐めあげられた場所が妙に熱くなる。
「ななな、なにをっ……。」
突然の事に驚いてしまう。
でも驚くだけだ。
彼が中性的だからだろうか。
声だってどこか女性的なのもあるのだろうか。
(俺、女の子が好きなはずなのに……なんで……なんで……――――――)
頭の中が熱っされていくように思考が奪われていく。
彼はもしかして何か俺に魔法でも使ったのではないのだろうか。
なんで……なんでこんなに――――――
(胸が……高鳴るんだろう……。)
不快なんて気持ちが欠片も生まれない。
何ならひどくときめいて心臓の音がうるさい。
こんな気持ち、初めてだ。
沢山の女性と付き合ってきたけれど、こんなふうに意識がもうろうとするほど
熱くなったことなどなかった。
「可愛いね、君。ねぇ、もう少し味見して良い?例えば……こことか。」
彼は”ここ”と言いながら細い親指で俺の唇を撫でた。
まるで媚薬にでも身体が侵されているのかと思うほどに彼の吐く息、声、指から伝わる熱にからの自由が奪われていく感覚を覚える。
(どうしたんだろう、俺……。)
何故突然欠片も興味を持たなかった男に興味を持っているのか。
疑問に思うけれど頭が回らない。
今ただ考えられるのは――――――
「……頷いてくれてありがとう。愛らしいレディ。」
目の前にいる美青年の口づけが欲しい。
……それだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます