狩り置き

かわくや

第1話

 ぎぃ……


 そんな虚しい音を立て、普段立ち入りが禁止されている屋上への扉はあっさりと開いた。

 それと同時に吹き入る一陣の風。

 屋上ということもあってか、冷たく勢いも強いそれから目を守りながら扉を開けた少年は、前進し……


「あっ……先輩」


 囁くようにして吐き出されたその言葉に足を止めた。

 そこで初めて腕を下す。

 その視線の先には一人の少女が居た。

 ふだん下げている野暮ったい前髪は冷たい風によって取り払われ、キラキラと輝く瞳と、朱が差した頬が姿を現した。


「あっ……ひぅ……」


 それをじっと見つめる少年と目が合い、さっと目を逸らされる。

 その様子を見て、少年はゆっくりと口を開いた。


「なぁ、こんなとこに呼びつけてまで何か用か?」


 そのあまりにも無遠慮な言葉にびくりと肩を震わせる少女。

 再び降りた前髪のカーテン越しに、少女は少年をちらりちらりと眺めると、直に覚悟を決めたように……


「せ、先輩!好きです!だから…………食べさせてください!!!」


 そう叫ぶようにして…………ん??


 今までしていた第三者ごっこを止め、咄嗟に飛んでいた自分の視点を自分の肉体に引き戻す。

 今なんてった?

 食べさせてください?……あぁ、なるほど。


「シモ的な意味で?」


「いえ、物理的な意味で」


……えーーー、何コイツ。

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狩り置き かわくや @kawakuya

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