三話 レベリング(1)
そうして草原を抜け、近隣の村へ移動しました。
「俺、昨日さ、バルーンっていう弱い魔物と戦うのがやっとだったんだけど、どうしたらいい?」
「お
「うん。それはわかっているんだ。だけど仲間なんてどうしたら得られるんだろう?
む……そういえばお義父さんには、右腕となるラフタリアお姉さんがいたはずですぞ。
確か奴隷だったと思いますが……どうしたものでしょう。
「では……奴隷を購入して戦わせるのはどうですかな?」
「奴隷!?」
お義父さんの顔が
「こ、この世界には奴隷なんているんだ……まあファンタジーではお
「馬車馬のようにコキ使えばLvも上がっていきますぞ」
「いや……そんな
「おや? おかしいですな。確かお義父さんは大量に奴隷を使役していたはずでしたが」
「未来の俺ってどんな外道なわけ!?」
おお、お義父さんが俺の話を信じてくださいました。
だから俺も真実だけを伝えていきますぞ。
「笑顔で奴隷に、魔物達を倒すように教えていましたぞ」
そんな感じのことを豪語していたのを覚えていますぞ。
お義父さんが復興させたあの村は、豚臭かったけれど、とても住みやすい素晴らしい場所でしたな。
奴隷の方々も笑顔で仕事をしていました。
「酷い! そんなこと、できないよ!」
お義父さんは本来、こんなにも優しい方だったんですな。
奴隷を酷使することにひどい抵抗感を持っているような。
でも、世間の荒波に
これも全て俺や赤豚の所為だったのでしょう。
絶対に守りたいこの純粋な顔。
「というか、どうして未来の俺はそんな酷いことをしちゃってるの?」
「お義父さんにとってはつらい事実なのですが、今の
「え……? どういうこと?」
「俺達勇者はまんまと騙され、お義父さんがやったと信じてしまっていたのですぞ」
「そ、そうだったんだ……じゃあ異世界で誰にも信じてもらえず、孤軍奮闘することになるわけか」
「まことに申し訳ありません! この
「いや……元康くんも騙されていたんでしょう? なら、しょうがないよ。今は信じてくれているんだし、助けてくれたわけだしね」
とてもありがたいお言葉。
お義父さんの海よりも深い慈悲に俺は
「それで、どうして俺は奴隷を?」
「おそらく味方が誰もいないことと信用できる人がいないことから殺伐とした気持ちになって、奴隷を酷使しようという発想に至ったのではないですかな?」
「なるほど……確かに誰も味方がいなかったら、そうなってたかもね」
「ですが今回は違いますぞ! 俺がお義父さんを絶対に信じておりますぞ」
むしろ信仰していると言っても過言ではありません。
なんせ、フィーロたんのお義父さんであり、俺の恩人でもありますからな。
「ありがとう。でも奴隷はちょっとな……」
「ではしょうがありませんな。クロちゃん」
「ピイ?」
「これからクロちゃんを急いで育てますぞ。育ったクロちゃんが同じようにお義父さんを育てるのですぞ」
「ピイ!」
「あ、そうか。クロちゃんが育てば仲間として俺とパーティーが組めるって考えだね。元康くんは強いからパワーレベリングもできると」
パワーレベリングとはオンラインゲームのスラングですぞ。
上級者が全面的に協力して初心者のLvを引き上げる行為ですな。
ゲームを楽しむスパイスにはなりますが、やりすぎると面白みも半減する
ですが、お義父さんにするのは良いことなのです。
「そうですぞ! まずはクロちゃんのLvを30くらいまで上げて、その後クロちゃんがお義父さんの手伝いをするのです」
その間に俺はギルド等で仕事を探す……もしくは金になりそうな盗賊を狩って金を得ましょう。
フィーロたんを手に入れるための資金は多ければ多いほどいいわけですしな。
更に言えばフィロリアル様は世界の財産。一匹でも多く増やさねばなりません。
それが俺、元康の生涯の目標ですぞ。
ビバ! フィロリアルパラダイス!
「じゃあ俺は何をしていたらいいかな?」
「では……お義父さんは優雅にティータイムでも楽しんでいてください」
「なんでそうなるの!」
「ですが、俺がお義父さんに命令なんてできようはずがありませんぞ」
「うーん……わかった。自分なりに何かできないか探してみるよ」
「では行きますぞ! 今夜はこの村で集合ですぞ」
「うん、わかった」
「ピイ!」
というクロちゃんの高らかな鳴き声と共に出発したのですぞ。
お義父さんと別れ、俺はクロちゃんと共に急いで強い魔物の出る山脈へ走りましたぞ。
元々高Lvの補正があるし、帰りはポータルスキルを使えば一瞬。できる限りの速度でクロちゃんのLvを上げますぞ。
問題は食料ですが、これは倒した魔物を餌にすれば問題ありますまい。
なんせフィロリアル様はなんでも食す最強の天使ですからな。
俺は山脈を越え、強い魔物……ドラゴン系の生息する区域に侵入しましたぞ。
「ブリューナク! ハハハハッ! 弱い! 弱すぎるぞ!」
山脈に生息するドラゴンや、その血族の魔物を俺はスキルを使いまくってばったばったと
俺の記憶の中にいるお義父さんがドラゴンについて話し始めました。
お話を終えると記憶の中のお義父さんは消えていきました。
ドラゴンはフィロリアル様の天敵!
すなわち、この元康の天敵! 全てのドラゴンを駆逐する勢いで進撃しますぞ。
さすがに
ですが、そんなこと知ったことではありませんな。
波までの一ヶ月にお義父さんをどれだけ強くさせられるか、腕が鳴りますぞ!
そんな感じで日が暮れるまで戦っていると、クロちゃんのLvが32まで急上昇しました。
餌は十分確保できましたし、素材も沢山手に入りました。
後でお義父さんに分けて差し上げましょう。
ということで、俺はお義父さんと待ち合わせしていた村にポータルで帰還しました。
「おかえり、元康くん。クロちゃんはどれくらいになった?」
「ピヨ?」
「うわ。なんか大きくなったね」
フィロリアル様の
大きさは俺の
明日には普通のフィロリアル形態に育つでしょう。
大量の食料をクロちゃんのために用意してあるので、問題ありません。
「ピヨー……」
お可哀想に常時ぐーとお腹を鳴らしております。
すぐにでも食事の用意をせねばなりませんな。
「くう……可愛いですぞ、クロちゃん!」
「ピヨオオオ!」
すりすりするとクロちゃんは
やはりフィロリアル様は世界の至宝。
「そうだね、すごく成長が早いや。で? 何Lvまで成長したの?」
「32ですぞ」
「
「はい。その先はクラスアップをする必要がありますぞ」
「でも……龍刻の砂時計って国が管理しているんでしょ? 国の人達とあんな
「問題はありませんぞ。他国に行けば砂時計くらい使わせてくれるでしょう」
「ああ、メルロマルクだけじゃないんだ……なら、まずは隣国へ行くための強さが必要だね」
「ははは、明日もやることが沢山ありますな」
「うん。あ、そうだ元康くん。俺にも何かできないかと思って、川で魚を釣ってみたよ」
と、お義父さんは魚を見せてくださいました。
魚釣りは得意なのか、沢山釣れておりますぞ。
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