一話 槍の勇者のやり直し(4)
そうして銀貨を受け取り、旅立つことになった俺が、お義父さんに話しかけようとしたら豚に遮られましたぞ。
「ブブブブブブブブブヒ」
「ブブブブブブブブブブブブブヒ」
何を言っているか全然わかりませんな。
こんな連中と冒険しろとは何の冗談ですかな?
とりあえずお義父さんに色々と助け船を出さねば……。
「ブブブブブブブブヒ」
「邪魔だ!
豚を退かしてお義父さんに近づこうとすと、豚がまたもや邪魔をしますな。
しつこい豚ですぞ。
「ブブブブブブブ!」
「あのー……槍の勇者様? 仲間にその態度はどうかと」
城の兵士に注意されましたぞ。
「知りませんな。速攻で解雇ですぞ」
「ブブブブブブブ!?」
「ブーブーうるさいですぞ!」
「落ちついてください槍の勇者様!」
「放すんですぞ! 俺にはお義父さんに伝えなきゃいけないことが──」
とか問答しているうちに、お義父さんは行ってしまいました。
その後、速攻でクズに呼び出され、仲間を大切にしろと説教されました。
俺はクズの話を聞き流しますぞ。
「ふん。鬼のいぬ間の
「ぬ……貴様、どこまで知っている!?」
「どけ、邪魔ですぞ!」
豚とクズを無視してお義父さんの探索を続行します。
結局、兵士の妨害や自称仲間の豚が俺にくっ付いてきて、上手くいきません。
いい加減にしないと殺しますぞ?
殺意を抑えて、優先すべきことを整理します。
召喚二日目、お義父さんはどこで何をしていたのでしょう?
思えばあの時、俺は自分のことばかり考えていたのですな。反省すべきことですぞ。
もう、見つからないなら、今日は諦めるべきですな。
チャンスは絶対に来ますぞ。
そうだ! 今のうちにフィロリアル様を買うのはどうですかな? フィーロたんですぞ!
金は十分にありますし、魔物商のところへ行くべきですな。
裏路地を走り抜けて豚や兵士を
さすがに勇者が裏路地を歩くとは思っていないようですな。大通りを捜しているのでしょう。
「いらっしゃいませです。ハイ」
紳士風の魔物商のところに顔を出しました。
裏の職業は奴隷商でしたかな。この人はお義父さんと仲が良いのですぞ。
「お客様は初めてですね。私どもの店に何をお望みで?」
「フィーロたん」
「は? え、え~と……フィロリアルでしょうか? ハ、ハイ」
「フィーロたん」
お義父さんが以前この店でフィーロたんを手に入れたという話を聞いていますぞ。
おお……よく考えてみれば俺がフィーロたんの飼い主にだってなれるはず。
「そのような物はないかと……です。ハイ」
「えーっと」
確か、フィーロたんって……思い出せ! 俺の脳細胞!
フィーロたんの品種はなんでしたかな? そうですぞ!
「フィロリアルのアリア種の卵を売ってくれですぞ」
「はいはい」
「銀貨一〇〇枚で」
確か銀貨一〇〇枚で……買ったんだっけ? おぼろげにしか思い出せませんな。
フィーロたんとお義父さんとの関係については知らない部分が多いですぞ。
「わかりました。ではお譲り致しましょう」
で、出てきたのは……三〇個くらいの卵の山。
ふおおおおぉぉぉぉぉ……フィーロたんはどれですぞ!?
「
フィーロたんは最初、基本の羽毛は白で羽先が桜色だったはず。
最初の出会いは思い出せますぞ。
城下町から出た先にあるリユート村という村でした。
その時にお義父さんがフィーロたんと一緒にいました。
運命の出会いですな。
「それは孵化してみないとわからないです。ハイ……」
魔物商が困った顔をしてますな。
そうですな。さすがに沢山のフィロリアル様を育てた俺でさえも、卵から孵るフィロリアル様の色までは見分けられませんでした。
俺は運命を引き寄せてみせますぞ。
「これだ!」
直感で卵を選びますぞ。これがフィーロたんだー!
「ありがとうございました。魔物紋の登録や孵化器はどう致しましょう?」
「登録は血を垂らすだけでいいはずですな。孵化器は別売りですかな?」
「はい」
「わかりましたぞ」
一三〇枚の銀貨を払って俺はフィーロたんだと思う卵と孵化器を買いました。
はずれだったら……いや、フィロリアル様を売ることなんてできません。
当たりを引くまで買い続けますぞ。どうせLvや武器解放なんてほとんど必要ないし、しばらくは金を稼いでフィーロたんを作りますぞ。
そんなこんなで俺はフィロリアル様の卵を購入して魔物商のテントを後にしました。
よく考えたら二日目のお義父さんは草原の方に行くはずですぞ。合流はそこですな!
そう思って大通りを歩いたのが運の尽き。
運悪く豚共に見つかってしまいました。
「ブブブブブブブ!」
「ブヒーブヒー!」
豚が騒いでうるさいですぞ。
酒場に引きずり込まれ、仲間を募集しろと酒場のマスターに説教されましたぞ。
「仲間ですかな? 話にならない連中ばかりですぞ」
酒場にいる連中はもとより、豚共など論外ですぞ。雑魚ですな。
「こんな連中とでは何も成し遂げることなどできませんぞ?」
フィロリアル様に生まれ変わってこいですぞ。
「お前……女をはべらせてそれかよ」
「はべらせる? この豚のことですかな?」
「ぶ、ぶた!?」
なぜか酒場の冒険者に絡まれました。
「おいてめえ! 女には気を使えよ!」
「何を言おうとも豚は豚。まだ男がいいですぞ」
「こ、こいつ。美形なのに男色家だ!?」
「勘違いしてもらっては困りますな! 俺が好きなのはフィロリアル様ですぞ!」
「「「こ、こいつ変態だー!」」」
「ブブー!」
「なんだって!? 槍の勇者!? こいつが?」
「その通り。世界のために戦う使命があるのですぞ」
「噓だ! こんな変態が!?」
「信じてもらう必要はないですぞ。俺はお義父さんとフィーロたん、そしてフィロリアル様のために世界を救うのですぞ」
大事なモノが何かを俺は理解しております。
たとえ世界中の人々に
「もちろん、他の連中も救いますぞ。その中にお前等も混じってますぞ」
「こいつ、何様のつもりだ!?」
「ふざけるなぁ!」
と、俺に向かって
「では実力の違いを見せてやりますぞ!」
槍で
「うわああ!」
槍が
話にならないくらいの雑魚ですな。
「な、なんだ! コイツ! 軽く槍を振るっただけなのに!」
「これが勇者の強さなのか?」
「いい加減諦めろですぞ」
身のほどを教えてやったら、なんか騒ぎになってしまいましたぞ。
「面倒ですから今日はこのくらいにしておいてやりますぞ。ではさらばですぞ!」
そんな感じで俺は酒場を後にしました。
それからお義父さんを捜していたら日が暮れてしまったのですぞ。
日が落ちる前に門で見張っていたのですが、結局出会えませんでした。
あの赤い豚が、奴だったら……お義父さんが危ないですぞ。
その後、宿屋を捜し回ったのですが、守秘義務があるとかで教えてくれませんでしたぞ。
勇者の権力が通じないのはなぜですかな? 酒場で暴れた
くそ……邪魔ものが多くて困りますぞ。
最後の賭けで、奴……赤豚と出会った酒場で待ちますぞ。
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