第三章 領主様との出会い(2)

 次の日、再びやってきたモードンさんに話をすると、四日後の昼に俺の家の前まで迎えに来てくれることになった。

 それから俺たちは新しい服を買いに行くことにした。

 まあ料理を作りに行くわけだから質のいい調理服を買いに行くイメージだけど。

「お店はあらかじめ調べておいたのでついてきてください」

 サラに連れられて街の中心部へと繰り出した。

 中心部には商人ギルドに行く以外に特に用事がなかったから、お店に入るのはワクワクするな。

「着きました。ここです!」

 サラが立ち止まった店は石造りの二階建ての建物だった。

 軒先には「オルヴェン職業服店」と書いてある。

 店の中に入ってみると中には様々な服が置いてあった。ただ、街の外側にあった服屋とは違い、一つひとつの服の質がかなり良い。

 そして執事のモードンさんが着ていたような執事服から、ガテン系の人が着そうな分厚い服、そしてフードがついた魔法使いのローブなど異世界ならではのものも置いてある。

「すごいな」

 店のお客さんだったり、街を歩いている人が着ているのを見かけていたから自分も一度は着てみたいと思ってたんだよな。この世界なら浮かないからね。ウィンドウショッピングで半日は時間がつぶせそうだ。

「見とれないでください。こっちですよ」

 サラに引っ張られて店の奥に入っていくと調理服のコーナーがあった。

 そこでひときわ目についたのは、真っ白な調理服。ホテルの料理人が着ていそうなものだった。

「これを買おうかなと思ってます! 前来たとき、リュウさんに似合うなと思ったんです」

「いいんじゃないか?」

 いかにも高級な料理作ってますというような服装だし、セレド様のところにはこういう格好のほうがいいかもしれない。

 まあ、俺自身はそんなに料理をしているわけではないんだけどな。

 魔法で作ったハンバーグとその他野菜やケチャップをパンに挟んでいるだけだし。

 ほんとスキルさまさまだよ。

「どれどれ……七万クローネか」

 かなりの値段がするな。

「高いですけど、セレド様の前でみすぼらしい格好なんてできませんから」

 サラが頷く。

「うーん、確かに……よし買おう!」

 俺も入社するときは奮発して高いスーツを買った記憶があるし、ここは思い切ろう。

「すいません」

 近くにいた店員さんを呼ぶ。

「いかがいたしましょう?」

「この服を二着欲しいのですが、採寸していただけますか?」

「二着ですか!?」

 サラが驚いたような顔をする。

「違うの?」

 サラは別の服でも着るのか?

「わたしなんかのためにこんな高い服を買う必要なんてないですよ! もっと安い服を自分で準備しますから」

「いやいや、そんなわけにもいかないでしょ。それにサラにはこの三週間頑張ってもらったし」

 おかげでこの三週間はかなりの売り上げだ。

「でもこんな高価なもの……」

「そんなこと気にしなくていいから。その代わりセレド様の城に行くときは頼んだよ」

 俺にとってはサラだけが頼りだからな。

「リュウさん……ありがとうございます! 大切にします!」

 サラが笑顔で返事をする。喜んでもらえたようでなによりだ。

「そういうわけで二つください」

「かしこまりました、それではお二方の採寸をさせていただきます。それに合わせて服のサイズを調節いたしますので」

 もう一人店員さんを呼んでもらって俺とサラの採寸作業をしてもらった。

 そして店員さんに十四万クローネを手渡す。

「確かに代金をいただきました。急いで仕立てますので明日の夕方以降に店にいらっしゃってください」

 これで行く日までに服は間に合いそうだ。

「はい、ありがとうございます」

 そう言い残して俺たちは店を出た。


 服を買った日の夜、俺はサラからマナーや、この国について教えてもらった。

 まず、エルランド国はこの大陸の五大国の一つでエルランド王家が治める国だということ。

 そしてエルランド国の西側には海があり北、南、東は他の国と接している。

 ここフストリア領はフストリア伯爵が治めるエルランド国最南端の領地で、王都からはかなり離れているそうだ。

 ただ、南でアンカラン国と接していることから交通の要衝として栄えている。そのため、ソルーンはエルランド国第四の都市として人口およそ三万五千人を抱えているらしい。

「ちなみにサラのお父さんの領地はどこら辺に?」

「フストリア領の中では最東端の場所で、内陸のほうです」

「なるほど、行ってみたいな」

 せっかく異世界に来たんだからいろいろな場所を巡ってみたい。

「何もないところですよ?」

「それはそれでいいところだと思うよ」

 一面畑が広がるようなところも風情があっていいと思うんだよね。

「そうですか。もし機会があったら案内しますね!」

「ああ、頼むよ」


 次の日、久しぶりにステータスをチェックしてみることにした。最近忙しかったからな。


 名前 リュウ

 種族 人間

 年齢 29

 レベル23

 HP 2750/2750

 MP 9500/11400

 スキル 『屋台』

 創造魔法 水、小麦(小麦粉)、米、肉(豚、牛、鶏)、卵、野菜(トマト、玉ねぎ、レタス、ナス、キュウリ、ゴボウ、ニンジン、カボチャ、ジャガイモ、ダイズ、キャベツ、ニンニク)果物(リンゴ、ナシ、スイカ、メロン)、キノコ(しめじ、エリンギ、しいたけ)、牛乳、塩、しょう、砂糖、油、酒、酢

 創作魔法 パン(食パン、クロワッサン、バンズ、フランスパン)、うどん、白米、ケチャップ、マヨネーズ、しょう、バター、みりん

 調理魔法 ハンバーグ、フライドポテト

 収納魔法 創作収納 収容量23%

 屋台魔法 透明化、フォルムチェンジ(キッチン、テント、大砲)、屋台召喚、屋台増殖


 おおー! いろいろな食材が増えてるな! けど、調理魔法に関してはあまり増えてない。

 やっぱりコストのかかる魔法は習得する数が少ないってことかな。

 そしてフォルムチェンジのところだけど……うん放置しとこ、大砲なんて気軽に試すわけにもいかないし。

 屋台召喚の魔法は自在に屋台を出したり消したりする機能だった。

 これでアパートの外に置いておく必要もなくなったし、かなり使い勝手の良い魔法だ。

 MPも大幅に増えていて、いいことだらけだな。

 それにしても増えた調理魔法がフライドポテトって……スキルは俺にハンバーガーショップでも経営してほしいのか?

 いや、もうしてるけどさ。

 でもこれでセレド様に出すハンバーガーセットが作れるぞ!



   ~試し読みはここまでとなります。続きは書籍版でお楽しみください!~

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【書籍試し読み増量版】食料生成スキルを手に入れたので、異世界で商会を立ち上げようと思います 1/slkn MFブックス @mfbooks

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