第4話 友として
にぎやかな客人のいなくなった広間でお酒を飲み始めた父は、どこか嬉しそうだった。
「父上、あの二人はどこで教えているのですか?」
ふと、疑問に思ったことを口に出す。館に習いに来るものは年のいったものが多く、顔も名前も知った者が大半だ。一度も見たことのない二人が先生と呼ぶのは、館ではない場所で教えてることになる。
「御所でお教えしているお二人だ」
「御所というと偉い方が住んでるところですよね」
「ああ、本来なら、学寮で学ぶのだが幼いうえに、立場がある方なので御所内の学殿で教えている」
「二人でですか」
「一人では我慢できぬことも二人なら我慢できることもある」
父は生徒には厳しいらしい、兄様のご学友達も口を揃えて怖いというから本当だろう。
「貴仁様と隼人様は、同じ年に生まれ、母君が姉妹ということもあって、一緒に教えている」
「でも館で教えないなら、もうお会いすることはないですね」
「それがな、これからは月に一度こちらでお教えすることになった、また顔をあわすこともあるだろう」
父とそんな話をした3日後、館に二人が現れた。お付きは最低限でと、貴仁様に三人、隼人様に二人(門の外には大勢待っているのだが)ついてきた。ただ館で教えている者たちと違うのは、勉強の後お茶の時間があることだった。なぜか私も入れた四人で他愛もない話をしてから帰るのが常だった。
同じ年の三人で話すのは思ったより楽しく、気づけば父が席を外していることも度々だった。時には歌を読み、舞を見せあい、帰りの時刻を忘れて話し込み、お付きの者に促されることもあった。
おおらかで大胆な貴仁様と真面目で優しい隼人様、性格の違う二人が似た面立ちでいるのは、お母様が姉妹ということもあるだろう。幼いながらに二人とも端正な顔立ちなのは、お母様譲りで見惚れてしまうほどだ。
立場や男女ということを忘れて、無邪気に振る舞い、友として楽しく過ごしていた三人だったが、月日が経つにつれ、そうすることすら許されなくなる…そんな日が近づいていた。
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