第19話 誰?

「ほう?貴様が凪、じゃと」

「あらあら」

「…」

玄関で待ち構えたのは、うん、じいちゃんとばあちゃん。

「…そうだよ、私がナギだよ」

「お、おじいちゃん」

緊張が走る、そりゃそうだ、孫が突然、性別以前に人種すら変わっていたらそうなるわな。

海外ならホワイトウォッシュだと炎上間違いなしだろうしね。

「…まあ美少女だしええか」

「あらあら」

「おい待てやじじい」

このじじい、とうとうぼけたか。もっと他に何かあるだろう!

「ナギ、ならなんなのじゃ?わしが文句を言えば状況は変わるのか?」

「…ないな」

流石に戻り方とかわからんし、あの戦いで「俺」は…もういないから。

「ならさっさっと受け入れたほうが合理的ではなかろうかのう?」

「…まあそうだね」

…そうだったじいちゃんは元海軍の士官、つまり普通にインテリで合理主義者だったな。

…因みに海軍士官、だ、海自ではない、まあつまりじいちゃんとは「曾祖父」なのである。余裕で100歳越え、ギネス狙えるんじゃねっていうくらいだ。

というか旧海軍士官の数少ない現代での生き残りなので一部界隈で有名になってそうなものだが、じいちゃんは目立つのが嫌いなので、あまりそうはなっていない。

…100歳越えにしては頭脳明晰すぎるというか…ほんとに人間か?

「あらあら」

因みにこのあらあらbotと化しているのは「曾祖母」である。え?祖父祖母はって?普通に元気に都会暮らししています。

…というかマジで長寿だな、うちの家系

え、私?私はイージス艦でオールドアイアンサイズなので…あれこれどうなんだ?

そもそもじいちゃん以前に私が人間かもう怪しいじゃん。

…うん、うだうだ考えていたらなんだか面倒臭くなってきた。

「…とりあえず、上がっていいか」

「突然投げやりになったのう」

「なんかもう、面倒くさくなったわ」

「あらあら」

「ふむ、やはりお前はお前だな、ナギ、本質は何も変わっておらん」

「さいですか」

「じゃ、じゃあ、おじゃましまーす!」

唯が困惑気味にそう叫ぶ、どうやらこの展開についてこられなかったようだ。






「…」

「…」

ここにきてまた問題発生である。

元々使っていた部屋に荷物を置き大部屋に来た私たち。

大部屋になんか知らない人がいる。

同い年くらいの日本人形みたいな美少女。

…うーん。

「私の勝ち、かな」

「…いや何いってんのお姉ちゃん」

唯のジト目が刺さる。

なにって、改めて自分の美少女っぷりに驚いているだけだが?

「…ははは、外見は変わっても、ナギ君らしいね」

そう少女が言う。

「…ところでどなた?」

「え、お姉ちゃん!花音ちゃんを忘れるとか、マジ⁉」

…いや誰だよ。

「まぁしょうがないよ、唯ちゃん、あれから何年もたっているし…」

そう、花音なる少女は言う。

…いやマジで知らんのだが?

というかこの時期には多くの親戚がいるはずだが?

「ナギ、わしが言うのもなんだが…ボケたか?」

そう後ろからきたじいちゃんに言われる。

…さてはて

「うーむ、ごめん、花音さん、どうやら私、すっかり忘れているっぽい」

「あらあら」

「…えー、お姉ちゃん、ありえないんだけど」

「…しょうがないよ、唯ちゃん、ふふふ、じゃあ改めてよろしく、ナギ君」

「うん、よろしく」



それから唯と花音さんは当時の話をして盛り上がっている。

私も登場するのだが、まるで記憶がないなぁ…

「あ、トイレ」

というわけで私の話になりそうだったら必殺トイレ!で何回か誤魔化す。

そんなこんな、していたら日が暮れてきた。

「…スー」

悲報、唯、まさかの寝落ち…ガキかよ。

「はぁ、全く、しょうがない」

取り敢えず部屋にぶち込んどくか、布団敷いてあるし。

「ナギ君、手伝うよ」

「大丈夫、花音さんは客なのだからゆっくりしていてよ」

そんなわけで、唯を担いで部屋にぶち込む。

…起動、と。

よし、ミッション完了

「大丈夫?」

花音さんだ。

「ああ問題ない、爆睡しているね」

「そう」

「ねぇナギ君、ちょっと散歩に行かない?」

「散歩?もう日が暮れているけど?」

田舎の夜道はマジで暗いからな。

「大丈夫、ホラ」

花音さんは無骨なライトを持ち上げて言う。

「…そこまでして?」

「いや、私だけナギ君に忘れられているの、正直悲しいし…散歩に出たら思い出すかなと」

「なるほど、まあ、いいよ、暇だし、行こうか」





そんなわけで和風美少女と洋風美少女の散歩だ。これは金取れるね。

道中も他愛もない話をする、主に妹の唯について。

とそんなことをしていたらいつの間にか裏山の神社まで来ていた。

「あはは、いつの間にかこんなところに…そろそろ帰ろう、ナギ君」

「そう?」

そう言って私は一人歩く。

「ナギ君?」

帰ろうと止まった花音さんが困惑の声をあげる。

「いいの?だって、花音さん…まだ目的を果たしてないでしょ?」

「目的?…ナギ君の記憶は」

花音さんの方を振り返る、間合いは8m。

「…ねぇ、私、さっきからずっと【オールドアイアンサイズ】を発動させているのだけど」

「おーるど?あいあん?」

「なぜかね、この「故郷」に来てから外部からの精神干渉…いや攻撃が止まらないのだよね」

「何を言って」

「イージス艦に電磁戦を仕掛けるなんて度胸あるね、余裕で逆探知できるよ?…で、その発信源が君なのだけど」

「えっと…何か誤解が」

こちらに来ようとする、花音さん。

VLSレディ、トマホークレディ、128㎜砲レディ。

「…動くな、7メートル圏内で6インチ榴弾が、5メートル圏内で巡航ミサイルが炸裂するぞ」

「…」

…全く、舐めた真似をしてくれる。こんな雑な攻撃がイージス艦に通用するとでも?

こんな稚拙な電波戦、何十年前の代物だよ。

ダンジョン協会からの電話…未知の危険が迫っているって話があったがさてさて

あ、唯はオーパーツで東京の家に送還済みだよ。あの時にね。

黙り込んだ花音さん、無表情、こわ。

「で、さっきも言ったけど…君、誰?」

私はそう花音なるものに問う。

君、だあれ?

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