第18話 とある戦艦の最後
「総員退去っ!総員退去っ!」
「どけ、まだ御真影が」
「誰か!ラッタルが上れねぇんだ!」
「ここで待て!すぐ帰ってくる!」
「お、おいていかないで…」
阿鼻叫喚、まさにその一言。
いつの間にかどこかの船の中だろうか?にいた私。
血と鉄のにおいそこらに転がる負傷者と死体。
どこからか聞こえてくる大量の海水が流入する音。
恐らく、戦艦、しかも沈みかけている。
感じるに複数の水面下の破孔。
戦艦同士の打ち合いではない、それこそ一方的な雷撃、爆撃で撃沈されかけているように見える。
…この被害状況は明らかに潜水艦の雷撃ではない。
超ド級戦艦すら数回沈没しかねない被弾量。
「…武蔵、それにレイテ沖」
大和型戦艦二番艦「武蔵」。
他の列強に対して国力が劣る帝国において「複数の超弩級戦艦と刺し違える」という狂ったコンセプトをもとに、46センチ砲と対18インチ砲防御を主砲口径に対して相対的に小型な船体に詰め込んだ戦艦。
栗田艦隊において被害担当艦になり集中攻撃を浴びた戦艦。
護衛の航空戦力のない大艦隊、航空機にとっての最大の獲物と言えるだろう。
ミズーリのように戦後においても活躍するわけでもなく
リシュリューのように反撃の狼煙となるわけでもなく。
ウォースパイトのように大活躍したわけでもなく。
ビスマルクのように大英帝国の象徴を沈めたわけでもない。
大和のように「最後の名誉」を与えられたわけでもない。
敵艦にその主砲を一発も放つこともない。
戦後においても大和と違いあまり注目を浴びるわけでもなく。
ただ「WW2において最大の炸薬量を受けた戦艦」として、記録に残る。
そんな船。
「お姉ちゃん!起きて!」
「…む」
我が妹、唯の騒がしい声で目が覚める。
「あれ、ここはどこ?」
「はぁー?何言っているの、電波系ヒロインとか最近需要ないよ?今はおじいちゃん家に向かう途中だよ?お姉ちゃん」
そうだった。
車窓から外を見るとまあ田園風景、なんかのんのんしてそうなThe田舎って感じの場所だ。
「…寝ていたか」
「もう!電車乗ったらすぐ爆睡とか!私、話し相手いなくて暇だったんだけど!」
「へいへい」
「へいは一回!」
「えぇ…」
…それにしてもなんかリアルな夢だったな。
しかし何たってあんな夢をみたのかねぇ。
…まあ夢なんぞ、大体よくわからない内容なもんだから、そんなものか。
「ほら、もう到着だよ、下りる準備しなきゃ!」
「へーい」
「久しぶりだなーここも」
「だねー」
というわけで到着しました私の故郷。
「疲れたし、さっさといこうか」
「お姉ちゃん…ずっと寝てたじゃん」
まあね。
因みに両親は多忙で今回は私と唯の二人だけで来ている。
…どうせじっちゃん家には親戚がいっぱいるし寂しくはならないだろう。
しかしなぁ。
「はぁー、今になって嫌になってきた」
「まーだ、うだうだ言っているの?お姉ちゃん」
「いやーだっていきなり性別と人種が変わったんだぜ?じっちゃんたちがどんな反応するのか、な」
「大丈夫!お姉ちゃん、美少女だから」
「そういう問題じゃねぇ…」
と、うだうだしながら歩いていたらついてしまった。じっちゃん家についた。
この辺の地主だからかまあ結構でかい日本家屋だ。
…よしここは度胸だ。
そうして冠木門から中に入ろうとすると。
「…おっと失礼」
中から人が出てきた。
スーツ姿の壮年の男性だ。
そのまま私たちの脇を通り過ぎようとする。
「…待て、あんたは誰だ」
私はその男性にそう声を掛ける。
「…名乗るほどのものでは」
「……なぜダンジョ協会の人間がここから出てきた」
「…ふむ、流石はSランク冒険者ですね、見破られるとは」
事もなさげにそう言い放つ男。
いや、お前ら協会の人間の雰囲気が分かりやすすぎるだけだけどね。
「…ここに来た目的は?」
「…いずれ分かりますよ、あなたには」
振り返ると男の姿はもうなかった。
「お、お姉ちゃん、さっきの人…それにダンジョン協会って…」
「…まあ、気にするな、それよりさっさと行こうぜ」
「…う、うん」
はぁ、まあでも確実に厄介ごとだよなぁ。
…その前にじっちゃんたちへの説明という厄介ごとが残っているからな。
一応事前に両親が事情を伝えているらしいけど、どうなることやら。
どうもアーレイバーク級ミサイル駆逐艦X番艦「ナギ」です。 ~探索者なんかより、現代兵器の方が強いと逆張りしていたら、現代兵器になってしまいましたのでダンジョン攻略します~ @TOKAGE123
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